主人公は霧雨魔理沙   作:魔王ヘカーテ

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第十話 カーテンコール

治療室と言われ、煌びやかな装飾が施された引き戸を引けばあらびっくり。飯綱丸が布団で寝かされているではないか。

 

「おいおい、先客がいるじゃんか。なんだぁ?どっかですっ転んだのか?」

 

しかし、魔理沙はこの軽口をすぐに後悔する。飯綱丸の布団は血で滲んでいる事に気がついたからだ。

 

「いけない、包帯変えないと!」

 

椛が飯綱丸に駆け寄る。おいおい、霊夢が先だろと言いたいところだが彼女も相当な重傷であった。今日に限って薬草の類いをスカートに入れていない。

 

「早苗さん、永遠亭に薬をもらって来て!強力な傷薬と止血剤をうんと。代金はツケてもらって!(踏み倒す可能性大!)」

 

「は、はい!」

 

ドタドタと床を鳴らしながら早苗は部屋を後にする。

 

「こいつぁ仕方ねえや。」

 

魔理沙はこれでも魔法使いの端くれだ。医学的な事は魅魔様に叩き込まれた。

 

「霊夢の応急手当ては私がやるよ。」

 

それに魔理沙はここに来てから霊夢に違和感を覚えていた。何故か霊夢の中にもう一つ毛色の違う東洋魔術の脈が流れているような感覚がするのだ。

 

ー何だ?この脈は?霊夢の物じゃない。呪術や封印魔法でもない。あの三人の仕業か?ー

 

「なぁ、あの鴉供は何者なんだ?そしてなんで飯綱丸がそんなザマになっている?」

 

この質問を投げかけた途端、椛の雰囲気が変わる。怒っているような、悲しんでいるような。椛は悔しそうに唇を噛む。

 

「正直、あの三人をぶちのめして欲しかったです。飯綱丸様は霊夢ちゃんを助けようとして、あの三人に、返り討ちに…。」

 

椛の言葉にだんだんと怒気が混ざるのを感じた。そして何よりも三対一とはいえ大天狗である彼女が簡単にやられたという事実に驚いた。

 

「そんなに強えのか!何故霊夢を襲いやがったんだ?こいつは恨まれるような事をする娘じゃない。」

 

「山妖怪の古臭い考え、一種のプライドって奴ですかね。今も、今でさえもここ以外の全てを軽蔑している妖怪がいるんです。もう、遅れているのに。その流行はとうに過ぎたというのに。彼女らは、檳榔、濡羽、相済はその種の妖怪なのです。」

 

飯綱丸に巻かれた包帯が椛の涙で滲んでいた。

 

「その下らないプライドに、天性の才能が合わさったらどうなるか。私みたいな、私達みたいな弱い妖怪は、低い天狗は、軽蔑され、蹂躙されていくだけで。」

 

椛は飯綱丸の包帯を取り替え、彼女に再び布団を被せる。

 

「あの時、魔理沙さんを止めたのは霊夢ちゃんが第一っていうのもあったけど、あいつらに一矢報いるのは私の様な弱い者であって欲しいんです。あいつらが特級を貰った時から私達は一層軽蔑されるようになってしまったから。」

 

丁度、魔理沙も霊夢の手当てを済ませた。胸と腰に浅い刺し傷と全身に打撲痕。魔理沙は今日ほど回復魔法が苦手である事を悔いたことは無かった。

 

「魔理沙さん、二人を任せても大丈夫ですか?」

 

「別にいいが、なんか用事か?」

 

「監視業務です。今、妖怪の山の天狗達がここに一斉に集まってます。更に異変に対する御前会議も行われるはずなので二、三日は警備が手薄になってしまいます。私達がしっかり哨戒任務をこなさないと我々のテリトリーが侵されてしまうので。」

 

ー天下の天狗様も大変だなぁ、オイ。ー

 

「あいわかった。こっちはまかせんしゃい。手ェ抜くんじゃねえぞ?」

 

「ありがとうございます!そしてごめんなさい。色々愚痴ってしまって。」

 

椛が足早に部屋を去ると魔理沙は飯綱丸の布団を少しだけ剥がす。ここで魔理沙の仮説が一つ外れてしまう。

 

「特に異質な脈は見当たらねェな。」

 

霊夢に流れる異質な東洋魔術の脈。これの正体があの三人によってもたらされた物だとすれば飯綱丸にも同様の物が発現していると踏んだが彼女にはそれが無かった。更に、それには天狗特有の脈の流れではなく大陸由来の東洋魔術の脈の流れに近い物だ。

 

かと言って霊夢に危害を加えてもいない。時限式か?それとも術者が近くに?でもそれなら脈のままじゃなく術を組むはずだ。まるで霊夢に何かが隠れている様な…。

 

隠れる!まさか!霊夢の中に何かがいる?!

 

魔理沙が霊夢の脈を開こうと手を掛けた瞬間、彼女の体から思念体が影の様に這い出てくる。

 

「まだ君は舞台に上がるべきじゃない。ハナからヒーローを出す物語が何処にいる?君は満を辞して舞台に上がらなきゃ。」

 

「んだ、と。てめ、ぇ!…。」

 

突如として魔理沙を襲った睡魔は彼女を朝まで眠らせる事となる。正確には神経魔法で眠らされたワケだが、彼女がそんな事を知る由も無い。

 

夜も更けて、屋敷の皆が寝静まった頃、霊夢はむくりと起き上がった。

 

「外に出よう。」

 

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