今日も愚か者はバケモノに餌をやる。
幻想郷を脅かす大きなバケモノに。
道化師はどちらだ?私たちかな?それとも、そのアホ面晒してバケモノに餌をやっているお前達か?
もう言い訳は出来ない。哀れなお前たちはもう後戻りさえも出来ない。
「外に出よう。」
何故なら、お前たちはついにバケモノの目を覚まさせた。哀れな事に愚者ではない。ジョーカーなんだよ。
お前たちはジョーカーに何の手札で対抗する?何で対抗できる?
「守る人は選ぶ。守るべき人は選別されなければいけないんだ。愚か者は地獄へ徒党を組んで行進して行けばいい。」
私たちの物語は、終わりの始まりを迎えようとしている。
「魔理沙さん、椛、早苗ちゃん、龍さん、ここの部屋の人達は守るべき存在。でも、私が裏切るべき存在。」
「楽しいショーは、私達だけの物。そうでしょ?レームちゃん。」
たとえ博麗の巫女として外れた道を歩む事になろうと、たとえそれが地べたを吠えて這いずりまわり、何もかもがペテンになるとしても、私達は楽しい楽しい舞台の幕を開かなければならない。そして、最初にスポットライトが当たるのは今もバレバレな監視をしているあの憎たらしい鴉の三人組だ。
「どう演出しようか。迷うなあ。何たって私達が直接手を下す記念すべき第一号だもん。」
この長い長い廊下が彼女らの生への最後の猶予。
「もう少し、ゆっくり歩こうか。私がまだ酷く弱ってるって、思う存分見下してくれなきゃ。あの嘲りの目を最高潮にさせてから深い深い谷底に突き落とすかのように、何もかもまやかしだと気付いてしまった目にさせるのが楽しみでしょうがない。」
しかし、そんな猶予も直ぐに終わってしまう。
「すごい、綺麗な満月ね。」
屋敷の重く、大きな玄関扉を開けた光景は言葉にし難いほど美しい物だった。
「月が、紅い。」
私は言葉を漏らしてしまった。こんな偶然があるものか、こんな好機があるものか。
「ねえ、レームちゃん!空が、月が真紅に染まってるよ!」
「貴女は見た事ないんだ。あれ、外の世界じゃストロベリームーンっていうんだよ。」
まるで、あの時みたいだ。私が、博麗神社を出発するはずだったあの時みたい。
「誰と話しているのかな?もう、いかれになってしまったか?」
あの三馬鹿トリオがまんまと食いついて来た。もう笑みが溢れてしまう。誰と話しているだなんて言ってるあたり彼女らはレームちゃんの中にいる私には全く気付いていないようだ。
「言うのがあまりにも遅すぎるわ。哀れね。いかれになる楽しさを知らないなんて。こんなに楽しくて楽しくて仕方がないのに。」
「おやおや、本当にイカれてしまったようだ。こんな奴に異変解決なぞ任せられないねっ!!」
三馬鹿トリオの主戦法は不意打ち、騙し討ち、トリックを用いた攻撃。1回目襲わせた時に同じ手を使っていた。会話の途中で小刀を投げてくることはね!不意を突く嘲りの刃なんて私の指二本で止められる。
「全く、もっと他にいいの無い?飽きちゃうわよ。それに会話は楽しまなきゃ損でしょ?」
「ねね!レームちゃん!私今指2本で止めてるよ!褒めて褒めて!」
彼女らの顔が真っ青になっていく様はいい気味だ。レームちゃんの腹から私の手が伸びているんだ、流石の三馬鹿トリオもレームちゃんの異常さに気付くだろう。私がいるという異常に。私はゆっくりと彼女の体から実体化し、『花』を通して奪い取った命を使い、存分に魔力を溜め込む。
「やぁ、初めまして。やっと実体化出来たよ。」
「何?なんだ貴様は?まさか、博麗の巫女が異変の黒幕なのか?」
「違う違う。私がレームちゃんをたぶらかしたの。そして、私こそ君達が今殲滅しようとしている『花』を操る黒幕ってとこかな?」
レームちゃんを色とりどりの花で飾りつけ、纏わせる。晴れ舞台にふさわしいドレスだ。そして、私の言葉を真実とする証明。異変の黒幕というのは畏怖の念を持ってもらわないと。
「つまりは、君達の敵だよ!君達が血眼になって、哀れに這いずり回って探している異変の黒幕はここにいる!」
これからもっと楽しくなる。私が討ち倒してくれるのは一体誰だ?霧雨魔理沙か?それとも博麗霊夢か?案外、私の隣にいるレームちゃんだったりして。
「私は沙月麟!47年前、この空のように月さえも紅く染まり、それでも飽きる事なく幻想郷を紅に染めたあの日に存在するはずだった人間さ!」
霊夢の居場所は突き止めた。でも、何も境界が存在していない場所にいる。私がいくら境界を操ろうと虚数は虚数。
「霊夢。」
幻想郷は彼女を必要としている。
何故なら、彼女こそ、博麗霊夢こそ主人公だからだ。
「すべては嘘。しかし、真実。霊夢の全ては虚数の塊ね。」
八雲紫。今日も霊夢を探し続ける。