主人公は霧雨魔理沙   作:魔王ヘカーテ

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観測された過去はとても悲惨なものである。弱き者が群れを成して弱き者を討たんと指をさす。命を断とうとし、醜い魂に成り果てた哀れな少女はその心にバケモノを飼う。彼女に向けられた救済の一切合切はバケモノの泣きじゃくる声によって遮られてしまう。



第十二話 金切り声のシアター

戦いの布告はとうに過ぎ、視界一面反則かと思えるほどの濃密な弾幕が埋め尽くしていた。

 

「泣いて詫びようとコンティニューなんて出来ないわよ?」

 

そう言葉を溢して、霊夢はスペルカードを構えた。我こそが女王だと言わんばかりの真紅の満月は、まるで何もかもを嘲笑っているかのように美しく淡い輝きを放っている。

 

 ー『霊符』夢想封印  零ー

 

霊夢の代表的なスペルカード。五つの光弾が一筋の高火力のビームと共に放たれる。それらは檳榔、相済が大量に放つバレットなど一瞬で蹴散らしてしまう。魔理沙が先代の使用していたスペルカードを今代の霊夢に教え、霊夢が魔理沙の魔法を取り入れアレンジしたものだ。この弾幕は、西洋魔術と東洋魔術のハイブリッドとなっており、魔法の脈の流れがより不規則になりやすいため弾の軌道予測がより困難となっている。

 

「なんだこの軌道の弾幕は!?」

 

しかし、その光弾は2人にかすりもしない。真正面の弾幕を打ち消しているだけであった。檳榔は空中に止まりやすいバレットを撃つ事が得意であり、それが視界を遮るほどの濃密な弾幕を作り出す。

 

「やはりこの視界では狙いは定まらないだろう!」

 

「濡羽をあんなにされたら黙ってなんかいられん!じっくりと嬲り殺してくれるわ!」

 

濃密な弾幕というのは弾幕ごっこにおいて回避率を上げるための常套手段である。スピードをウリにしている彼女らは、相手にわざとスペルカードを使わせ視界が開けたと共にバレットの隙間から奇襲する戦法を得意とする。

 

「まずは指先!」

 

霊夢と麟のシナリオは全て予定通り演じられている。哀れな鴉天狗は馬鹿踊りをしているに過ぎないのだ。霊夢は麟に華を持たせる為に夢想封印を放った。仕留めるためじゃあない。

 

「かかった!」

 

濃密な弾幕の中に作られた一本の道。この中に入ってしまえばどんな速さも意味を成さない。

 

「これでいい?リン!」

 

「おっけえ!いくよぉ!」

 

ー『花符』徒花ニハ後悔ヲー

 

麟はその手に持つニ胡に魔力を込め奏でる。魔力を持った音を反響させ、その空間に漂うエネルギーを増幅させ、貫通力を持たせた花形の弾幕を広範囲に作り出す。空間に魔力を放ち、何も無い空間に瞬時にバレットを出現させるので非常にいやらしい弾幕といえるであろう。

 

「散れ、徒花よ!」

 

花の形を崩したバレットは四方八方の空間を切り裂いてゆく。

 

「なっ!」

 

「あ、相済!」

 

瞬時に現れた多数の弾幕を避け切ることはどんな弾幕狂いでも困難である。十六夜咲夜の『時止め』による弾幕が代表例だ。幻想郷最速とされる射命丸文でさえこの弾幕の餌食となり、毎度の如くレミリアの盗撮に失敗しているのである。幻想郷最速が避けきれないような弾幕をそれ以下の人妖が避けられるはずもなく、相済の顔面と心臓をバレットが貫いた。瞬時に亡骸となった彼女は空から地へ真っ逆さまに落ちていく。その結末を見届けた霊夢は口元を緩ませた。実にいい気味である。

 

「やったぁ!レームちゃん、初めて当てたよ!レームちゃん相手じゃ当たらなかったけど!」

 

麟はこれが初めての弾幕ごっこの実戦であった。練習では当てられなかったスペルカードの弾幕が敵を貫くさまは圧巻であり、彼女に大いなる歓喜をもたらした。

 

「アハハ!興奮し過ぎよ、リン。」

 

特別階級の戦闘員とあろうものがこの短時間でもう2人も殺されている。妖怪の中でも抜きん出た強さを誇る天狗でだ。檳榔は酷く困惑する。もう打てる手が無い。連携のみが持ち味だった彼女にはもう剣が残っていない。ついさっきまで持っていた自分達の強さに対する絶対なる自信が、まるでボロボロと音を立てて崩れていくような感覚を味わっている。

 

「こんな、こんな馬鹿な事があるものなのか!こんな馬鹿な事が!」

 

全てはまやかしだという事に気付いた時にはもう遅かった。

 

「でも君は何かしてくれるんでしょ?隠し球を持ってたり、奥の手があったり。さぁ!それを見せてよ!物語はクライマックスに程遠いはずなんだ!」

 

しかし、ここで一つ大きな誤算があった。檳榔はただただ怯え、震えていたのだ。恐怖に顔を引き攣り、歯をガチガチ鳴らし、目からは大粒の涙を際限なく落としている。黒幕を討ち倒さんとする勇敢な役を演じてもらうはずが、ただの腰抜けになってしまったのである。

 

「なんで怯えているの?君は私達をあんなに見下して、嘲笑っていたのに?」

 

これには霊夢と麟の二人は心底失望し、肩をすくめた。やはり他者を見下さないと生きていけない者は、どれほどの力があろうと弱く哀れなものだという事実は人間も妖怪も同じである。

 

目の前には立ち向かったら確実な死がある。そんな時、誰しもが取る行動はただ一つ。

 

「ぐっ!!」

 

逃亡である。

 

ーまだ!天魔様の屋敷へ戻ればみんながいる!ー

 

しかし、いくら飛んでも目の前の屋敷には近づけない。3秒も飛べば辿り着ける距離なのに。同じ空間に囚われているような感覚が檳榔を襲う。

 

「はい、残念!私たちが逃げる事を想定していないとでも思った?泣く子の叫び声すら無に帰す『神隠しの結界』がここら一帯に張ってあるんだよ。試しに叫んでみたら?」

 

 『神隠しの結界』とは霊夢が八雲紫に教わった防護結界であり、結界の外から対象を一切認識出来なくする結界である。博麗の『結界』とは、いわばズルだ。結界は普段は防御として用いる側面が強いが編み方を変えれば攻撃結界、封印結界etc…更には多重に重ね、少し離れた空間同士を無理矢理繋ぎ移動するという荒技までなんでも出来てしまう。正に文字通りなんでもアリだ。

 

麟は怯える檳榔の肩にポンと手を置いた。

 

「まぁまぁ、私達は君を生かすつもりだよ。でも条件付きだけど。どう?君にとってはいい話だ。」

 

絶望的な状態に置かれた檳榔にとってそれはそれは甘美な誘いであった。

 

「でも残念だね。君たちの最高潮の見せ場はとうの昔に過ぎていたんだ。」

 

 

 

 

 

 

 




この劇の主人公は誰だ? 次回予告

レミィ「いつまで経ってもこっちが再開しないから遊びに来たわ!」
モーヴ「わーい!吸血鬼さんだー!」
三咲 「伏線張りやってみたいとか言って進めてなかったみたいですけど、もう少しで再開するそうですよ。」
フラン「私の出番いつ?」
妹紅 「あれ?もう私の出番無いの?」
アリス「知らん間に私の家になんか増えとる…。」
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