リン「このパーツをそっちにくっつけてみれば…。」
霊夢「いいねえ!完璧!」
リン「完成!天狗の十字架はりつけー!」
……
リン「生き残ってしまった君は、沙月麟が黒幕だとみんなに言えば良い。簡単なお仕事さ!」
「霊夢!大丈夫なの?こんなに服を真っ赤にして!」
丑三つ時、博麗神社に戻ると魅魔様が駆け寄ってくれた。(足は無いけど)
「大丈夫ですよ。これは全部妖怪の返り血です。」
いつもは子供っぽい姿になって妖精と遊んでいる彼女が、今日は珍しくあの偽物のようにすらりとした大人びた姿になっている。
「まさか黒幕だったり?」
リンは「レームちゃんにサプライズを用意するんだ!」と狭間の世界に戻ったっきりで連絡が取れなくなってしまった。リンが戻ってくるまでまた退屈な時間を過ごさなければならない。
「いえ、野良の妖怪です。黒幕については何も…。」
魅魔様は私を抱きしめてくれた。
「血がついちゃいますよ。」
「いいじゃない。貴女が頑張っている証拠よ。」
これが俗に言う『愛』というものなのだろう。しかし私は、とうの昔にそれを素直に受け取れなくなってしまった。
「さて、着替えなくちゃね。あとお風呂沸いているから入ってきなさい。鬼達が先に入っちゃって少し冷めてるけどピースちゃんに頑張ってもらいましょ。」
「ありがとうございます。」
理由は分かっている。愛を受け入れたら、今までの自分を否定してしまうから。
「またすぐ行かなくちゃいけなくて…。」
もしかしたら、あの辛さ、痛みは無駄なものだったのではないか、外の世界にいた時と変わらず感じている孤独、閉塞感、絶望にも等しいものを感じずに済んだのではないか。
「少しは寝ていきなさいな。体が保たないわよ?」
それらこそが私の自尊心なのだ。のうのうと無償の愛を受け入れて育った連中とは違う。
「向こうで休ませてもらえるので。」
私は違う。愛を受け入れたら奴らと同じになってしまう。他人を平気で踏み躙り、徒党を組んで右を向いて同じ人生だ。愛を喰らえど食らえどそれはとどまる事を知らずに愛欲しさに不幸者を演じ始めるただの道化師だ。
でも私より何倍も幸福で、何倍も救いも希望もあって…
パチン
両頬を優しく叩き、つまみ、こねくり回される。
「こーら、無理しないの。ボーッとしちゃってるじゃない。先代みたいにもっとぐうたらしてないと。」
「でもみんなは常に先を目指せと言います。先代はもっと優秀だったって。休んでる暇なんて無いって。でも、もっと強くなろうとすると笑われて…」
その烏合の衆にうんざりしたから今、リンと好き放題やっているのだ。いつも都合の良い事ばかり言って、肥大したまやかしの正義を振りかざし、私から膨大な負債を借り入れているんだ、払ってもらうべきツケをここで愛で返されちゃたまったもんじゃない。
「じゃあぐうたらしてないと。ぐうたらしてたから優秀だったのよ。努力なんてしなくっていいの。」
魅魔様は好きだ。ちゃんと物事の全体を見て意見してくれる。頭ごなしに自分の思想を押し付けてくる奴らとは違う。
「でも、それだけみ〜んな救いを求めてるのよ。」
「分かってます。私がもっと強くなくちゃ…。」
「違う違う。」
「え?」
「みんな道標が欲しいのよ。でも、それは溢れすぎている。だから、明確にそれを持っている人に口出して、見下して、胸を張って自分自身に言い聞かせたいの。『生きる目的を見いだせずにいれなくても大丈夫』ってね。」
もう少し早く、外の世界にいた頃に魅魔様に出会っていたら、私はリンを否定していたかもしれない。