「まさか魔理沙ともあろう者が約束の日を間違えるなんてね。」
「ちょっと焦っていた時の顔おもしろかったよ?」
「そんなに言うことないだろ?」
そう言って顔を赤面させている魔理沙はお茶菓子のクッキーをまた一つ口の中に運んだ。かなり焦ってかっ飛ばしてきたのにまさか約束の日が明日だなんて骨折り損もいいところだろう。おまけにアリスとモーヴから馬鹿にされるという始末。
「じゃあ、今!今やっちまおうぜ?」
「ダメよ。河童にモーヴの新しい交換パーツを頼んでんのよ。それが届くのが明日。」
「今日一日羞恥心に苦しんで過ごすんだね。」
魔理沙はこの二人に馬鹿にされることなど別によかった。別に何にもなるわけではないのだ。
しかし、
「いやあこれはいい記事が書けそうですねえ。『霧雨魔理沙には意外な一面が?』とか。うーん、インパクトに欠けるな…。」
何故かここにいる射命丸文。彼女の存在が羞恥心にどっぷり漬かっている魔理沙の顔を落胆に染め上げていた。
「そんな記事出されてみろ。幻想郷一の異変解決者の異名が泣くぜ…。」
「おや?最近誰も貴女を怖がって寄ってこない。人里で買い物するにも一苦労だと貴女自身嘆いていたではありませんか。」
「それと何の関係があるんだよ。」
「皆、少しくらいは貴女に親近感がわくのでは?」
「ああ、そうなるように書いてくれ。」
魔理沙が半ば呆れた声を出すと、文が新聞を床に置いてあったバッグから取り出した。
「大丈夫ですよ。私は、はたてとは違います。事実をそのままにエンターテイメント性に富んだ書き方をするだけです。」
そう新聞をテーブルの上に広げドヤ顔をする文。こういう奴が一番タチが悪いから困る。しかし、新聞屋とはいつも興味関心を引く記事を書いてくれるというもの。
「なぁ、これって」
魔理沙が新聞の見出し記事を目の色を変えて指さした。
『道端に咲いている花にご注意⁉花が人妖の精気を吸い上げる!』
目立ちたがり屋な子供のようにゴシック体で大きく書かれてあったそれは、これはとてつもなくヤバいやつだぞ。そうに違いない!早く調査しなくてもいいのかよ?と言わんばかりに魔理沙の直感を刺激していた。
「これですか、実はあなたにも話しておこうと思ったのですが…」
文は察したように語り始める。文の話を聞いていくうちに段々と魔理沙の口元が悪だくみをしている少年のようににやついてきた。
「丁度1週間前、山童達が集団で栄養失調状態と極めて似た状態で発見されたんです。なんでも、新しいカード販売の会議をしていたとか。」
「で、その原因となったものがその精気を吸う花ってやつか。そいつはどこにある?」
魔理沙はまるで新しい発見をした幼い子供のように目を輝かせていた。
「おお、興味がおありで。しかし、貴女は勘違いをされている。」
「?、どういう意味だ。」
「そうですねぇ、『どこ』っていうより普通の花がその精気を吸う花になっていっているという感じですね。ですから、日に日に精気を吸う花が妖怪の山全体に広がりつつあるという感じです。それで頭の固いお偉いさん方を妖怪の山の妖怪総出で説得しまして。守屋神社には既に調査依頼をしていますが、今日の夜か明日の早朝に博麗の巫女に話を持ち込む手はずとなっているでしょう。」
「異変の可能性が出てきた。というわけか。」
先代から変わりどちらかと言うと聖寄りな感じで人妖ウェルカムな博麗霊夢だが、それでも博麗の巫女という存在自体を目の敵にする妖怪たちも一定数いる。妖怪の山の仲間意識が強い妖怪たちなんかが特にそうだ。
―そんな妖怪たちがアイツのとこに頼むだなんてよっぽどの事じゃねえか。こいつは面白そうだ。―
すると文は思い出したように言った。
「ああ、そうそう。魔理沙さん貴女もこれに首を突っ込んだ方が良さそうです。私もその花に触れてみたのですが、やはり妖力を吸われました。その後、倦怠感が凄かったのですがね。これの意味することが何なのか、貴女は知っているはずです。」
文は記者でありながら単純な魔力、妖力でいえば幻想郷でもトップであり、弾幕、体術共に実力がある。そんな彼女が倦怠感を感じるほど力を吸われたとなると並みの奴では力をすべて吸われる可能性がある。
それはすなわち"死"を意味する。
そんな花が幻想郷に広がったら死体のハーヴェストマーチであろう。
それに気づいた瞬間、魔理沙の好奇心は歓喜の雄叫びをあげた。今日はなんて日だ!こんなに面白そうなことは久しぶりだ。また、異変が起きてくれるかもしれない!もはや異変というものは今の彼女にとっては暑い夏の日、喉に流し込むキンキンに冷えたラムネみたいなものである。
「というわけで早く貴女も行った方が良いですよ!」
文は勢いよく魔理沙を指差したつもりが、肝心の魔理沙はもう既にいなかった。
「すんごい勢いで飛び出していったねー。魔理沙。」
モーヴの漏らした感嘆の声で、文は魔理沙がもうアリスの家からいなくなっているということに気づく。
「では、私もこれで…。」
そそくさと帰り支度をする烏天狗をアリスが呼び止める。
「あ、クッキー持って行って頂戴。私たちそんなに食べないし。」
アリスが指差した先の山のように残っていた紅茶味のクッキーは天狗たちのその日の夕食となった。
オリキャラざっくり紹介
モーヴ・マーガトロイド
・アリスが完成させた完全自律人形
・アリスそっくりな見た目
・たまに里の子供たちと遊んでいる
以上