主人公は霧雨魔理沙   作:魔王ヘカーテ

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第十四話 宣戦布告

「とうとう現れやがったな。黒幕。いいや、沙月麟。で間違いねえな?」

 

「フフフ。嬉しいねぇ、もう名前を覚えてくれるなんて。」

 

ありったけの殺意をぶつける魔理沙に対し、麟は恐れを抱くことなく無邪気な笑顔で言葉を返した。

 

「この『花』による惨劇は全部てめえがやった。って認識でいいのか?なあ?」

 

「違うって言ってしまったら、私がやってきた全てが見事なまでに台無しになってしまう。何もかもが、どんがらがっしゃんだ。ここに咲き誇る花を見なよ。とても美しいでしょう?」

 

麟の心は高ぶっていた。見上げれば大勢の観客がこちらを見ており、役者は全てこの場にいるのだ。彼女がとうの昔から思い描いていたものが現実のものとなる。

 

「目的は?何が望み?その恐ろしい花畑が貴女に何の利益をもたらすというの!」

 

勇気を振り絞ったかのような震える声で彼女にそう問うたのは霊夢であった。

 

「その質問は、博麗の巫女としての義務かい?」

 

「ええ。私は幻想郷を護り続けなけれならないのだから。」

 

「フフッ!」

 

麟は霊夢の言葉を鼻で笑い、一蹴した。

 

「否、清々しい程その答えは否だ。嘘つきめ。私は存在と非存在の狭間から見ていた。君はそんな事微塵も考えたことすらない!その質問は恐怖からだ!異変の恐怖じゃない、『護らなければならない者達』からの恐怖だ!そんな生き方は楽しいかい?後悔しか残らないと分かっていて何故それをする?その糞のような偽善も大概にして私と一緒にこの物語を楽しくしようじゃないか!」

 

「そんな事はさせません!貴女は…」

 

麟の素敵な勧誘に早苗が割って入る。しかし、麟には早苗など眼中に無かった。

 

「黙れ。君には興味は無い。東風谷早苗。」

 

「さぁ博麗の巫女、怠惰、醜悪、虚実、脆弱、そして傲慢。これらに挟まれ、押しつぶされるようなつまらない毎日は素敵だよ。とてもとても素敵だ。だが、私の狂気に身を委ねる毎日のほうがもっともぉーっと素敵だよ!息をするかのように命を弄び、欲望を満たす毎日。こんなに素敵なものはない!楽しいよ。すごくすごく楽しいよ。」

 

「私の狂気だぁ?ふざけるのも大概にしておけよ?弾幕だってやんなくても良いんだぜ?こちとら。」

 

『弾幕をやらない』この魔理沙の言葉は、言い換えると今すぐお前を殺すぞという意味であり、周りにより一層の緊張感を与えた。

 

「おお怖い。さすがは中身60歳のおばあちゃん。堪忍袋がヨレヨレだ。」

 

「減らず口も大概にしておけ。あと私は59だ。」

 

魔理沙は八卦炉を構えた。

 

「フフッ。いいねぇ!素晴らしい!役者は揃った!長く長く待ち望んだ終わりの始まりだ。瞬く間に終わりゆく夢、最期の物語!霧雨魔理沙、私の全てを以て君を討ち倒す!終わりの始まりは今この瞬間に始まった、始まってしまった!」

 

「ハンッ。素敵な宣戦布告だぁ!良いじゃねえか!受けて立つ!こいつぁ挨拶がわりだ!」

 

アビリティカード『ミニ八卦炉』(最初期モデル)

魔理沙は身を捩らせケープを翻し、いつぞや(何十年も前)の闇市場で売られていた超ビンテージ物のカードでレーザーを放った。河城にとりや山城たかねが見たら卒倒するであろう。

 

魔理沙が不意を突くように放つレーザーは麟の左目からデコまで見事に貫通していた。

 

「なっ!?」

 

頭を貫かれたのにも関わらず彼女はケタケタ笑っていたのだ。

 

「アハハ!私の体はかき集めた魔力そのもの。これが尽きない限り私の命は無限にあるようなものさ。」

 

「その魔力を『花』で集めてたってわけか!精気を吸うってこたぁ、生体エネルギー変換!元ある能力に魔術混合させたのか!また厄介な事をしてくれたな!」

 

「大正解!皆この為に死んだ!ここにある哀れな骸だってそうだ!この為に死んだ!笑え!なんてぇザマだよ、散々万物を見下しておいて最後は命乞いして好き好んでこのザマに成り果てた!」

 

彼女は霊夢の方に向き直し、手を差し伸べ、微笑んだ。

 

「これが最後の勧誘だ、博麗の巫女。いや、現、博麗霊夢!君は見下され、散々傷付き、喰われるだけ喰いつぶされ、今やその心は残骸だ。打ち砕かれた希望が残骸となって散らばっているだけだ!私と一緒になれば、君を残骸にした全てに復讐する事は、ちゃちなものなんてモンじゃない。我々は天国すらも見下せる!」

 

「生憎だけど、お断りするわ。確かに希望も持てたものじゃないけど、絶望もしていないから。魔理沙さんだっているしね。」

 

即答だった。これには魔理沙も口元を緩めた。当たり前だ。いつもは臆病で穏やかな霊夢がそんな事する訳がない!

 

ーたとえ私の目が白くなろうが潰されようが霊夢にそんな事はさせんさ!ー

 

「あいわかった!それでこそ私の信仰する博麗霊夢だ!そしてバケモノは解き放たれる。さぁ、私を止めてみろ。博麗霊夢!そして、霧雨魔理沙!我が主人公よ!」

 

また美しい花弁が吹雪き、麟を包み込み、散ってゆく。それと同時に地面の花畑が消え失せた。

 

「逃げやがったか。まあいい、すぐに尻尾は掴める。」

 

「さぁて、異変解決者のお仕事ですね!魔理沙さん!」

 

「行くぜ霊夢。沙月麟を討ち倒す。アイツの馬鹿げた物語を終わらせる!」

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