主人公は霧雨魔理沙   作:魔王ヘカーテ

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第十六話 みんなのために

自ら地に堕とした夢を拾ってみるのもいいものだ。不幸だったり、不運だったりな人生を繰り返していたらそこに居場所を見つけてしまうものである。夢を拾えば、少しだけ這い上がった先が恋しくなる。

 

『やあ、ただいま。』

 

博麗神社に向かう道中で、麟は相も変わらず無邪気な顔をして霊夢の中に戻ってきた。元々独りが好きな霊夢であるが、唯一友人と認識している彼女が居ると安心するものだ。

 

「悪役様のお帰りね。で、魔理沙さんと戦う時の自分の設定考えてあるの?」

 

『いやーやっぱり、自分だけ世界に忘れ去られたんだ!復讐してやるー!的な感じで行こうかなーって。』

 

曖昧ながらも彼女自身の夢の筋書きは芯を持っているようで霊夢は少し安堵した。

 

『ていうか何で空飛んで帰ってるの?結界つなげてもう博麗神社だと思ってたんだけど。』

 

「結構長い距離移動すると空間の歪みが大きくなって巡り巡って博麗結界をほつれさせるからあんまりやりたくないの。さっきはリンの晴れ舞台に寝坊しそうだったから使っただけ。」

 

魅魔様の膝枕とはどんな東洋、西洋の精神魔法よりも強力である。

 

「それから私にサプライズって何?」

 

この質問を投げかけた瞬間、麟の表情を見なくとも彼女が興奮しているのがわかった。

 

『その質問待ってましたー!なんとなんとレームちゃんの評価を上げちゃう&前哨戦!!』

 

声は一層甲高くなり、外には一切響かないものの、人の魔力と同化しているのだから魔力伝いにその耳に悪そうな声が響くのは当然であった。鼓膜がどうにかなる訳ないのだが、本当に耳が悪くなってしまうのではないかと霊夢は内心焦った。

 

『あともう少しで三体の人形が幻想郷に侵攻します!私の肩慣らしも兼ねて前哨戦!』

 

「それと私の評価が上がることがどう関係してるのよ?」

 

『ほらぁ、ヒーローは遅れてやってくるのが定番でしょ?私は人形に乗り移って戦う。んで少し遅れて登場!ちょっと苦戦して勝利したらもうみんなはヒーローに感謝するってのが鉄板でしょ?それを目立つとこでやればいいんだよ。』

 

「そんなこと言って本当は自分が早く弾幕ごっこやりたいだけでしょ?」

 

『あちゃ~ばれたか。』

 

とは言え、麟は少しの下心はあれども自分の為に他人を振り回すような人物ではないということは霊夢も分かっていた。自分の幸福を受け入れようとしないばかりに友人の厚意を無下にしてしまうような事を言ってしまったと彼女は自己嫌悪した。

 

『あともう一つあるんだ。』

 

「何?」

 

『ふふん!それはお楽しみだよ。私が霧雨魔理沙と刃を交える時、絶対私のそばにいてね。』

 

もったいぶらずに教えてよ。と言いたかったがそうこうしているうちに博麗神社が見えてきた。

 

『来た来た!』

 

途端に博麗神社の屋根の上あたりの空間に亀裂が入った。麟の様子からも例の人形とやらが現れるのだと理解した。

 

「でも麟?博麗神社に出しても意味ないんじゃないかな。誰も来ないし。」

 

まるで薄いガラスが砕けたかのように空間は歪な穴を開けた。

 

『先ずは身内を救うことからでしょ!それにもっと目立つ場所にも用意したからヘーキヘーキ!』

 

歪な空間の向こうからは、麟と瓜二つな人物が這い出てきた。否、五月麟のコピーというべき人形である。

 

「えー?そういう感じ?ホラ、もうちょっとなんか、こう、なかったの?魅魔様の人形作った時みたいに別の人にするとかさぁ…。」

 

更にちゃっかり本物よりも少し等身が上がって全体的にセクシーな仕上がりとなっていた。

 

『だってぇ!しょうがないじゃん!最終決戦に向けて入念に調整したいじゃん!自分自身の体でやれば偽物の分身でしたー。ってオチにも出来るじゃん!レームちゃんも頑張ってます感出るでしょ!』

 

しかし、霊夢はその奥にもう一つ気配を感じた。なんとなくだが、すごく博麗の巫女に近しい気配。いつしか霧雨魔理沙が教えてくれた日ノ本の国の東洋魔術とやらの脈を感じた。

 

「なぁんだ。さすがに冗談よね。もう一つ用意してるじゃない。」

 

『え?』

 

歪んだ空間の奥から退魔の符が人形に飛びついてきた。それに書かれてある文様は博麗のものである。退魔とは名ばかりでどんな対象でも危害を加えるとんでもない護符だ。もちろん人形は粉々に崩れ去った。

 

「良いね!粋な演出じゃん!」

 

『私…、こんなの知らないよ。』

 

「え?」

 

『私が用意したのは、あの人形だけだよ?こんなの知らない!本当だよ!』

 

「じゃぁ、何だっていうの…」

 

出てきたのは巫女服に身を包み、下は赤い袴を着ている少女であった。紫色の髪は束ねてあるものの腰まで伸びており、頭に着けているリボンは魔理沙が帽子に着けている先代巫女の赤いリボンと瓜二つであった。そして何より、空飛ぶ亀に乗っている。

 

「…!いきなり接触とは…ついてないわね。」

 

「ご主人様、どうなさいますか?」

 

「何も変わりないわ。出来るだけ戦闘行為は避ける。行くわよ、玄爺!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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