主人公は霧雨魔理沙   作:魔王ヘカーテ

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第十七話 思い出せやしない過去

旧き世界の博麗の巫女が何故現れたのかは誰もわからない。しかしただ一つ、霊夢は確信していた。あの巫女を逃せばこの幻想郷が大変な事になると。今この不安要素を取り除いておかなければならないと。

 

それはそれは幻想郷中を飛び回らんとする勢いの盛大な追いかけっこだった。博麗神社から南西に飛び回り、いよいよ永遠亭が見えてくる所だ。

 

「しつこいっ!もっと飛ばして玄爺!」

 

「老体にはこれが限界ですゥ!」

 

旧き世界の巫女は相も変わらず空飛ぶ亀をぞんざいに扱っていた。

 

「逃がさない!捕まえて話を聞かないと!」

 

『そーだ!そーだ!』

 

逃げる靈夢、追う霊夢それを間近で見て茶化す麟。そして久しぶりの長時間運動で滝汗を流す玄爺。

 

「こいつでも喰らえ!」

 

靈夢は後方にばら撒くように退魔の札を放った。その札は霊夢めがけて一直線に飛んでゆき、避けても避けても彼女を何処までも追いかけてきた。

 

『気をつけて!レームちゃん!』

 

「ご丁寧にホーミング機能付きのモノぶつけてくれるわね!」

 

しかし、ホーミング弾への対処について霊夢は茨木華仙の修行で嫌と言うほどやらされたのだ。

 

ーあの札、魔封の呪いがかかってる。だったら!ー

 

「リン!『花』を!」

 

『あいあいさー!』

 

退魔の札を避け、それらに自分を追わせる形にしたら、麟の『花』でそれを全て防ぐ。『ホーミング弾は後ろにつかせて結界で防ぐ。』歴代の博麗の巫女が教わったとされる基礎中の基礎だ。

 

「防がれた!?魔封符を!?」

 

本来、魔封を纏わせれば結界を解除し、それを貫通させることができる。それは結界が『術』であるからだ。しかし、ただの物資であれば話は別。麟は精霊魔法と似た原理で『花』を創り出すため魔法といえど『物質である』という事実が先行するのだ。

 

『さーさー、この札の魔術書き換えてアイツにお見舞いしてやろうか!』

 

霊夢は麟が今とびっきり悪い顔をしていると確信した。

 

「良いわね!ただし、『花』で包んでお見舞いするの。」

 

『はーい!』

 

ーこれだけ追いかけ回して攻撃がこれだけなら札と針は最低限しか持ってきていない可能性が高い。麟がいて良かった。花で包めば札を再回収される確率も低くなる!ー

 

白い花に包まれたお手製のホーミング弾が出来上がった。術の書き換えがなされた札はかつての主人へ飛びつきたいとうずうずしている。

 

『ちなみに当たったら電気ビリビリになるようにしておきました!』

 

「いっけぇ!」

 

「させるかぁ!」

 

放たれた白いホーミング弾は何処からともなく降ってきた大量の赤いバレットによって破壊され、更に霊夢の行く手を阻んだのだ。

 

「新手か!」

 

『レームちゃん、上!』

 

霊夢が見上げると金髪のボブで、白い服に青い吊りスカートを纏っており、分厚い本を持っている少女の姿があった。

 

「アリス!何やってんのアンタ!」

 

「『アリス』だって?」

 

「私たちの靈夢をずいぶんとやってくれたようね!お返しするわ!」

 

ーそこまでやってないんだけどなぁ…。ー

 

「靈夢!あなたは行って!ここは私が引き受ける!」

 

「何バカなこといってるの!」

 

「このためにものすごい魔法いっぱい覚えてきたんだから!」

 

アリスはおもむろに本を開き何かを唱え始めた。

 

『本見ながらじゃ意味ないんじゃ…』

 

アリスの前に魔力が収束し、球体を形作っている。呪文詠唱は隙こそ大きいもののその魔法を安定させ、威力を底上げさせる。魔法陣を広域に展開させ魔法の規模自体を大きくさせることも容易だ。

 

「まずい!魔法陣を展開された!」

 

「喰らいなさい!」

 

収束した魔力が一気に弾け、霊夢に無数のバレットが降り注ぐ。旧き世界の弾幕は殺しの弾幕である。不規則に放たれるそれは軌道が極めて読みにくく、より回避を難儀なものへとさせていた。

 

ー結界展開が間に合わない!ー

 

戦符「リトルレギオン」

 

「はいはい!前ちょっと失礼!」

 

無数の上海人形と金色の髪を振るわせた何者かが霊夢を襲わんとするバレットの前に立ちはだかった。それぞれレイピア、ランス、剃刀などいかにも物騒極まりない物をこれでもかと振り回し、バレットの雨を打ち払った。

 

「やぁやぁ、博麗の巫女。息災であったかな?」

 

青いドレスに白いケープを羽織っているその姿はアリス・マーガトロイド。ではなく、彼女が完成させた完全自律人形のモーヴ・マーガトロイドだ。『花』が人里に襲撃した際に破壊された木製のその身体は修理されていた。関節を動かすとキリキリ鳴るのが気になるが…。

 

「モーブさん!危機一髪でした、ありがとうございます!」

 

「ふっふーん!このくらい朝飯前よ!」

 

「『アイツら』まだ追ってきてたー!」

 

モーヴの登場にアリスはあっちょんぶりけと両頬を手のひらで抑えて驚いていた。

 

「アリス!まさか『アイツら』ってことは…!」

 

靈夢の勘がこれからとても悪いことが起こると叫んでおり、その表情は少し青ざめていた。

 

「あら、勘がいいじゃない。もう1人いるってこと。」

 

上海人形が一斉に後ろに引いた。その人形たちが行く先には、アリス・マーガトロイド。彼女は器用に指を動かし、魔法糸で何体もの人形を操っている。更にその片腕はミスリルで出来た人形の腕となっていた。

 

「永遠亭の『すいっち』で皆んなで『すまぶら』するのも飽きてきたのよ。それで、追ってきちゃった。」

 

靈夢の悪い予感はどんぴしゃり。

 

「さぁ、次元の壁を突き破ってきて何をおっ始めようてのかしら?」

 

「さぁさぁ答えないとアリスのおっかなぁーい人形たちが何するかねぇ?」

 

指を少し動かすとアリスの周りの人形たちが各々の武器を構える。いつ見ても物騒極まりない光景だと霊夢は思った。

 

「ほらあ!やっぱりちょうどよく三つの次元のほつれがあったからって安易に計画変更して飛び込むんじゃないって言ったじゃん!」

 

「うるっさいわね!大体なんでアンタは2人に見つかって引き連れて来ちゃってるのよ!」

 

「靈夢も見つかって追いかけ回されてたくせに!」

 

なんと追い詰められた状況で旧き世界の住民がとった行動は内輪揉めである。

 

「え?何…内輪揉め?ケンカ?」

 

これには三人も呆気に取られてしまった。しかし、そんな緩んだ空気もノイズ混じりの声でかき消された。

 

[こちらマリサ、こちらマリサ。予定通り作戦ポイントに到着。とっとと済ませてこっちに来てください。オーバー?]

 

靈夢がおもむろにポケットからガラス玉の様な物を取り出した。それは通信機能を持つマジックアイテムであり、ノイズ混じりの声はそのガラス玉から発せられていたものである。

 

そして、その声を聞いた靈夢は不敵な笑みを浮かべた。

 

「アリス、いい作戦があるわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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