主人公は霧雨魔理沙   作:魔王ヘカーテ

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第十八話 悪だくみ

ー私、どうしたらいいんだろう?ー

 

靈夢が吐いた弱音が、頭の中をぐるりぐるりと駆け回る。魔梨沙にしか見せない彼女のどうしようもない心の叫び。

 

時が進まなくなった幻想郷の住民は、眼前に迫った滅びの未来に対し、ある者は自らの命を断ち、ある者は自暴自棄になり、ある者は博麗の巫女に縋った。

 

皆んな優しかった。皆んな、見えなかった将来に対して目を輝かせながら語り合っていた。皆んな正直者だった。

 

幻想郷が滅ぶ未来が、人々を悪いヤツに変えていった。

 

そんな時に『時の進んだもう一つの幻想郷』を見つけたらどうなる?突然ありったけの希望が目の前を照らしたのだ。

 

「そりゃ焦って当然か。」

 

ー次元の壁に解れがある。そこからだったら、装置無しじゃ一方通行だけど『向こう』に行ける!ー

 

「そんなこと言ったって焦りすぎじゃなぁい?」

 

今回の急な計画の変更も彼女がいち早く幻想郷の住民を助けたいと心から思っているからであると魔梨沙は理解していた。

 

『ワープアウト地点まであと30秒』

 

次元間航行装置が機械的な音声を発した。これがないと幻想郷に帰れない。いや、むしろ靈夢と『向こう』で一緒に暮らすというのもいいかもしれない。歴代の巫女の墓の前で一人ぼっちで泣きべそをかいている彼女をもう見たくはないのだ。

 

「あんな自分勝手な奴らなんて助ける義理ないのに。」

 

私が解放してあげるんだ。

 

全てが捻じ曲がった次元の狭間に光が差し込む。光は魔梨沙を包み込み、狭間を抜け出そうとする衝撃が伝わる。彼女は自分が乗っている箒を力強く握り直した。

 

『ワープアウト』

 

光を抜けた先には懐かしい光景が広がっていた。空が青い。そこかしこに妖精の気配がある。暖かい風が吹いている。

 

「…異変のせいでちょいと白っぽい景色になっているがよしとしよう。」

 

いつしか、二度と見れなくなったあの幻想郷が魔梨沙の目を釘付けにした。

 

「おっと、迷彩を作動させて。」

 

『光学迷彩を作動させます』

 

しかし、今回の目的は観光ではない。偵察なのだ。とはいっても、偵察の役目は靈夢とアリスである。魔梨沙の役目は二人を回収し、元の幻想郷へ帰ることである。(帰りたくはないが。)

 

「こちらマリサ、こちらマリサ。予定通り作戦ポイントに到着。とっとと済ませてこっちに来てください。オーバー?」

 

彼女は装置に内蔵されてある通信機から靈夢とアリスに自分の到着を伝えようと試みた。

 

しかし、いくら待っても返答が来ないと来たものだ。それに、向こうから連絡が来てもいい頃合いである。

 

「あれ?壊れた?いきなりドンパチしてたりとかだったらヤダなぁ。」

 

「実は光学迷彩はあんまり意味がなかったりして…。」

 

魔梨沙は驚いた。後ろから聞こえて来た声は靈夢のでもアリスのものでもなかった。

 

「だっ!誰!」

 

振り向くと、白と赤の二つのリボンが結んである黒い帽子にマントを羽織り、その髪は金髪でウェーブがかかっている。その姿はいかにも古風という感じの格好をした魔法使いがいつの間にか魔梨沙の後ろにいたのだ。

 

「おいおい、そう邪険にするなって。同じ『魔法使い』だろう?」

 

ーまずい!いきなり接触した!迷彩装置は機能していないの?ー

 

魔梨沙はすぐに古風な魔法使いから距離を取る。しかし、得体の知れぬ嫌悪感が全身を這っていた。それは少しばかりの恐怖となり、魔梨沙はステッキを構える。すると古風な魔法使いはくすりと笑った。

 

「なぁんでバレた!?って顔してそうだな。」

 

「してそうだな?」

 

「姿が見えなくても魔力の跡がそこかしこに付いているものでね、しかもその癖、っていうのかな?すごく懐かしいから気になってしょうがなかったんだ。」

 

魔梨沙の魔力の癖。それは高出力を意識するあまり余分に魔力を放出してしまうことである。その癖を魅魔様にもよく怒られていた。

 

「相変わらず燃費の悪い魔力の使い方してんだなぁ。そんなに星が好きかい、マリサ?」

 

「!!」

 

古風な魔法使いの声は聞き馴染みのある声であった。使う魔法も脈も西洋魔術の光熱科目であると一瞬で分かった。魔梨沙もそうであるように、古風な魔法使いの全身には熱に晒された魔力の跡が満遍なくついていたからだ。

 

「お前は何者だ。何故私を知っている?」

 

「ただの星が好きな魔法使いさ。お前さんと一緒だよ。この服も努力という名の魔力の跡がびっしりだろ?」

 

ますます嫌悪感が湧いてくる。まるで自分を見せつけられているかのようだから。いくら足掻いても何をしても自分が劣っているという事実は変わらないくせに。

 

ーどうする?ここで戦えば靈夢達を回収出来ない。逃げて回収に向かうか?でもここで待たなければこの幻想郷の全体図を入手できない。いや、入手出来なきゃ霊夢が帰りたがらないだろう。それが一番まずい。ー

 

「私と一緒?そんな古臭いカッコウなんて趣味じゃないわ。それとも、コッチの魔法使いは皆んなそんな趣味してるのかしら?」

 

「だぁーかぁーらー。そんなに警戒すんなって。箒とステッキ持つ手震えてるぜ?」

 

魔梨沙は自分自身が額から妙な脂汗を垂らしていることに気がついていなかった。彼女に言われた通り、その手は無意識の恐怖で震えていた。

 

「なんだよ、『幽香』から話聞いてないのか?」

 

「な!幽夢だって?今、幽香と言った?」

 

この会話を遮るように、古風な魔法使いに向けて博麗のお札と妙にうねるレーザーが飛んできた。

 

「おっと、お迎えだな?」

 

古風な魔法使いはニヤリと笑みを浮かべた。攻撃が飛んできた方を見るまでもなく、いつも聞いてる声がけたたましく聞こえて来た。

 

「魔梨沙ぁ!急いでワープするよ!玄爺もう限界!」

 

「ごめーん!オミヤゲも一緒に来ちゃった!」

 

靈夢とアリスが魔梨沙の方へ一直線に向かって来ていた。しかし、その後ろには巫女らしき人物と金髪の人物2人が見えた。

 

「緊急ワープ準備!スクランブルモード!」

 

『ワープシステムオールグリーン。ワープまであと30秒。』

 

機械仕掛けの箒が唸りを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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