主人公は霧雨魔理沙   作:魔王ヘカーテ

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第十九話 ほんとうの開演

魔理沙とよく似た顔をした魔女は、その跨る機械仕掛けの箒を唸らせた。彼女はその手に持つステッキに魔力を込め、バレットを放った。

 

「邪魔するなぁ!」

 

謎の巫女達を追うアリス、モーヴ、霊夢に放たれた弾幕は、眩しく光り轟音と共に降り注ぐめいいっぱいの星形弾であった。そのバレットは過剰な魔力で生成されており、未熟であった時の魔理沙が放つそれであった。魔理沙を古くから知るアリスが一瞬、魔理沙がとち狂って攻撃して来たのかと勘違いする程である。

 

「モーヴ!上海、蓬莱!」

 

「あいあいさー!」

 

放たれた弾幕は、またもや凶器をこれでもかと危なっかしく振り回すモーヴと人形達に弾かれた。しかし、この弾幕はただのフェイントであり、隙を生み出すために放たれたものである。それを逃すほど魔女はドジじゃなかった。

 

「捕まれ!」

 

「相変わらずいっつもこうね!」

 

霊夢達が足を止めた隙に魔女は巫女達を回収した。機械仕掛けの箒には左右につっかえがあるが、右には巫女がしがみつき、左には幼い魔法使いと彼女にしがみつく亀というなんとも珍妙な光景となったいた。

 

『ワープまであと5秒』

 

「玄爺重いよー!」

 

「もう、限界です…それくらい許して…」

 

霊夢は直感的に逃げられると悟った。何が目的かわからないまま何処かに消え去られてはたまったものじゃない。彼女の頭を焦りが支配し、スペルカードをその手に取った。

 

霊符 「夢想…

 

「やめろ、霊夢。」

 

光弾を放とうとする手を魔理沙が優しく抑えた。

 

「なぜですか!?逃げられてしまいます!」

 

「もうこうなったら行かせるしかない。」

 

魔女の周辺の空間が不安定となり、その進行方向には空間跳躍用魔法陣が出現していた。

 

「しっかり捕まって!」

 

『前方空間圧縮 空間歪曲係数50 ワープ準備完了』

 

「ワープに入れ!」

 

魔女がそう叫んだ瞬間、彼女達は青白く眩しい光に包まれながら魔法陣の中に飲み込まれ、その魔法陣は崩れ去った。

 

「あれだけ周辺の空間が不安定で夢想封印なんて撃ってみろ、今の霊夢の威力じゃ博麗大結界をメチャクチャにする程の空間崩壊を起こす。」

 

「うう…」

 

霊夢は少しうなだれた。まだ未熟な自分に少し自己嫌悪した。

 

「じゃぁ、『何もしないでぼうっとしてる』てのが正解なわけ?」

 

アリスが魔理沙にくってかかる。それに対し、魔理沙は気怠げに肩をすくめた。

 

「あのなぁ…私とお前らの位置関係だったら巻き込んでたろ。」

 

「アリス、魔理沙さんは正しいと思うよ。結構難しい状況だったし。」

 

モーヴはアリスをなだめた。その隙に魔理沙はアリスにめんどくさい事を言わせまいと話を逸らした。

 

「それはそうとアリス、体はもう大丈夫なのか?」

 

「ええ、腕は持って行かれたけど、人形の操作はしやすくなったわ。」

 

「アリス、永遠亭で輝夜と妹紅相手に『すまぶら』60戦中3勝もしたんだよ!」

 

「へぇーそんな代物どうやって作ったんだ?」

 

魔理沙はアリスの義手を隅から隅までペタペタと触り始めた。

 

「すげぇ!ミスリル製なのにツルツルだぞこれ!霊夢も触ってみろよ!」

 

「ホントだ。ツルツルしてる。」

 

「あ、そうだアリス、お前から借りた魔導書返すわ。」

 

「今!?」

 

魔理沙の突拍子のない行動には皆が慣れていた。皆、「またか」と言わんばかりに少し呆れた表情を見せている。魔理沙は収納魔法の四次元空間に手を突っ込んで漁り始めた。

 

……

…………

………………ねえ

 

ーねぇ、リン。ー

 

「なに?レームちゃん。」

 

霊夢は彼女自身の中にいる麟に問いかけた。

 

ー永遠亭が2体目、この場所が3体目の人形を別の次元にスタンバイさせてたんだよね?ー

 

『うん…多分今の奴らに全部壊されたね。あぁん、また一から練り直しだよぅ!』

 

ーそうだったらいいんだけど。ー

 

『どういうこと?』

 

ー博麗神社でリンの人形が壊された時も、あの小さな魔法使いに出会った時もリンの魔力の残滓を感じたの。おそらく人形に宿っていたのね。ー

 

『あー。そりゃ人並みの魔力入れないと動ないし、私の魔力が付いてるってことは人形に接触しているってことだもんね。』

 

ーこの場所、あの箒に乗った魔女からはそれを感じなかったの。ー

 

『確かに!まって、それじゃあ…』

 

ー恐らく、あの人が来る前に別次元の中で『消えた』。リンがホントにちゃんと人形をスタンバイさせてたらの話だけど。ー

 

………

 

「あれ?おっかしいなぁ。」

 

「やめてよ?無くしたとか。」

 

「あった!」

 

確かに本であったが、魔導書ではなかった。その表紙には大きく『キノコ料理大辞典』と書かれており、左下に小さく『紅魔館地下図書館AA -1』と思いっきり紅魔館のものである証明が目に飛び込んできた。

 

「違うじゃない!あとちゃんと返しなさい!」

 

「べっつにいいじゃねえかよ、この本返せ〜って言われてないんだし。霊夢これちょっと持っててくれ。」

 

「え?あ、はい。」

 

手を伸ばした瞬間、麟が制止した。

 

『レームちゃんそれ持っちゃダメ!』

 

「へ?」

 

その本を手にした瞬間、霊夢に虚しさが襲った。急に何かが満たされなくなった、抜け殻のような感覚。

魔理沙がニヤリと口を歪ませた。

 

「ビンゴ!」

 

その虚しさの原因すぐに霊夢の目に飛び込んできた。彼女の体から麟が引き剥がされていたのだ。いきなりのことだった。その場にいる誰もがこんな事態は予想できなかった。

 

ー流石、レームちゃんの師匠なだけある!まさかあの時の接触で私が「憑依」じゃなく魔法の脈の中にいると気付くなんて!ー

 

「魔法の裏返しってやつを本に纏わせておいた。霊夢の魔法の脈を逆流させちまえば簡単に引きずり出せる。」

 

奇しくも4人の異変解決者(そのうち1人は人形であるが)に囲まれる形となった麟は誰の目から見ても絶体絶命であった。しかし、彼女はそれでもなお無邪気に口を歪ませた。

 

「素晴らしいよまったく、全部、ぜぇんぶ台無しだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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