主人公は霧雨魔理沙   作:魔王ヘカーテ

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第三話 二日酔いと黒幕

 それは七色か、それよりもずっとずっと多いかもしれない不規則に放たれる幾千、幾万の星がこの青空を、大地を埋め尽くしていた。

 

魔符『スターダストレヴァリエ』

 

 今となっては幻想郷一の異変解決者が放つ弾幕。弾幕はパワーなどとほざいている者がこれほどまでに美しい弾幕を生み出せるのか、スペルカードの使用者を見れば見るほど摩訶不思議である。人間と妖怪どちらの間でもこれをお目にかかれたものは幸福になる、などとくだらない話が出回るほど皆が一度は見てみたい弾幕の一つであり、それを見た者は当分の間は話のネタがそのことだけでもつようになる。

 

 しかし、そんな弾幕も二日酔いの魔女が放つのでは格好が付きやしない。

 

「な、なんか、妖精たち、殺意持って撃ってきてない?目もすっげぇ怖いし…。私何かしたかなあ。」

 

 チルノや光の三妖精を筆頭に妖精とはどこにでもいて悪戯にニコニコして弾幕を撃ってくる(別の意味で)馬鹿な奴らである。そんな風に普段から何も考えず、お気楽に弾幕を撃ってくる奴らがこうも集団で執拗に明確な意思を持って行動すること自体、異常であった。

 

「そうかもしれませんね。魔理沙さん、彼女たちから何か盗んだんですか?」

 

 スペルカードを放っても尚、弾幕は豪雨のように迫りくる。いつもなら余裕綽々と回避できる弾幕も今日ばかりは魔理沙の体のあちこちを掠めていった。

 

「いやあ、良い記事が書けそうですよ。これだけ良い絵が撮れれば。」

 

 自分が狙われない事を良いことに、文は次に発行する新聞用の写真を撮ろうとここぞとばかりにシャッターを切っている。あまりにもカメラのフラッシュが縦横無尽に視界に入ってくるものだから魔理沙の頭痛はひどくなっていく一方であった。

 

「お、おい…。おめえ、後で覚えていろよ。」

 

 魔理沙の箒の操作もおぼつかなくなってきており、不正確で鮮やかな弾幕を避けることでさえ困難となっている。

 

―ああ、頭いてェ。―

 

 これが魔理沙の思考回路の大半を占めていた。文から異変のことを聞かされ我が世の春が来たと飛び出してきたはいいものの自分が昨夜大量の酒を吞んだものだからひどい二日酔いでしばらくは弾幕ごっこも出来ないであろう状態であった。

 

「ちっくしょう、こうなったらマスタースパークで一気にケリをつけてやる…。おい!文!真正面にはいるなよ!」

 

「マスタースパークですか。はいはい、わかりましたよ。」

 

 取り出したミニ八卦炉を構えてみても魔理沙には魔方陣を組み立てる余裕などありはしない。

 

「ああ!もうめんどくせえ!マスタースパーク!!」

 

 ミニ八卦炉から轟音と共に放たれた虹色の光は眼前の妖精をピチュンと言わせながら消し飛ばした。妖精の群れの中にぽっかりと穴が開き、そこからは妖怪の山らしきものが見える。

 

「っしゃあ!いくぜぇ!」

 

 魔理沙は最後の力を振り絞り、箒を加速させなんとか妖精の群れを脱した。妖怪の山はもう目と鼻の先である。

 

「いやあ、大変でしたねぇ。」

 

 文の余裕な顔が魔理沙を苛立たせる。なぜ自分だけがこんな目に合うのか、世の不条理というものを少しばかり感じていた。しかし、そんな苛立ちなどすぐに消え失せることとなる。

 

「おいおい、山ってあんなに白っぽかったか?」

 

 いつもは青々とした妖怪の山に白っぽい斑点がいくつもあるようにみえるのである。

 

「なんだあ?河童共の新しい光学迷彩の実験かぁ?」

 

「魔理沙さん、下、見てみて下さい。」

 

 なんでぇ、頭あんま動かしたくねえよ。痛ェし。

 

 そう魔理沙が言いかけた時、文の顔が青ざめている事が分かった。彼女が青ざめる時は霊夢にコテンパンにされると悟ったときぐらいなものだ。そうとなると興味がわいてくる。魔理沙が頭痛が酷くなるというリスクを負ってまで見たものとは、

 

 地面にある白っぽい斑点、正確に言うと白っぽい斑点のように見せる何かであった。

 

「なんだあ?よくわかんねえな。ちょっとスピード緩めるぞー。」

 

箒を徐々に減速させ更には地面へ近づいてみる。斑点の正体は意外なものであった。

 

花である。スズランだの、ジャスミンだの様々な花が咲いていた。

 

「おいおい、こいつぁどうなっているんだ?なんでこんなに花が…なっ!!」

 

よく目を凝らせばどの花の集合地の上にも白骨化しかけの小動物の死骸がこれでもかというほど散らばっていた。

 

「これが精気を吸う花ってやつか。なあ、文。」

 

「そうです。まさか、一夜でここまで広がっているとは。」

 

「あの様子じゃ、妖怪の山全体はもうご愁傷様ってわけか。でも、白骨化するまで精気を吸ってるとして何がどうなってこうなったんだ?」

 

文は、またカメラを構えた。そのレンズは花を映している。

 

「それを私たちが探るんじゃないですか。」

 

「それは、困るわね。」

 

その声と同時に斜め上から強力なバレットが一つ魔理沙の顔を掠めた。すんでのところで顔面直撃コースをいっていたであろう。

 

「誰だ!!こちとら二日酔いで頭が痛ェんだよコンチクショウ!!顔面直撃で頭痛が酷くなったらどうしてくれんだ!」

 

バレットが撃たれた方角を振り向けば、そこには風見幽香の姿があった。

 

「全く、ざまあないね。ふざけているのか?」

 

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