「っぱはぁ!!水がうまい!!」
河童の里、砂利の上にあぐらをかき5リッターボトル入りの水を飲み干し、凄まじい光が出てそうな爽やかな笑顔をする魔理沙であった。その隣には神妙な顔をした河城にとりが魔理沙と同じ様にあぐらをかいて座っていた。
「盟友。酔いはさめたかい?」
「おうよ。ばっちりだぜ!」
「そうか…。すまないな。あんなこと言って追い返す真似なんざしてしまって。」
「しゃあない。おたくらはメカニック。あんな戦闘小隊寄越されちゃそうもなるさ。」
「でも、こうして文が呼び戻してくれた。こっちでも色々情報収集しているんだ。収穫だってある。あと必要なのは…」
「その情報から黒幕を割り出しぶっ飛ばす奴。つまりはこの私。霧雨魔理沙サマだ!ダハハハハ!」
ー先程まであんな酷い状態だったのに、水を飲めばもうこれか。魔女とはみんなこんなものなのか?ー
先程までの酷い頭痛で気付かなかったが、いつの間にか文が消えていた。
「おい、文はどこ行きやがった?一回ぶっ飛ばさないと気がすまないんだが。」
「あゝ、彼女なら『号外新聞つくってきまーす♪』とか言って飛んでいったぞ。」
ーぶっ飛ばすって、何があったんだ?ー
「まあいい。君と情報共有がしたい。中に入ってくれ。」
「おうよ!なんだなんだ?」
言われるがままに、にとりについていく。その先は彼女の部屋である。この部屋はいつも通り最先端を行く機械文明の宝庫といった有様で、四方八方エアディスプレイが煌々と光を放ち、暗い部屋の明かりとしてまで機能していた。
「早速だがこれを見てくれ。」
「こいつは!あの花じゃねえか!」
にとりが立体分析装置のディスプレイを指差す。その中には魔理沙が見た『精気を吸う花』がガラス詰めにされ浮かんでいた。
「我々はこれを変異種と仮だがそう呼称している。大丈夫だ。擬似結界を張ってある。まぁ、そんな顔をするってこたぁ、あの死骸の山を見ちまっているってことか。」
「ああ、骨が群れを成して転がっていたさ。おお怖い。」
「それなら話が早い。結論から言ってしまおう。現時点で分かっていることは3つ。1つ目、吸い取られた生体エネルギーは何者かによって亜空間というべき空間へと送られている。2つめ、超自然的な力が加わって花を変異させている。3つ目、思ったよりも感染スピードが速い。」
「ほーぉ。よーく分かった。(嘘ぴょーん)一つずつ説明してくれ。」
「では優先して対策を練らなければいけないものから説明しよう。」
二人は最新型の大型PCの前に移動した。彼女が慣れた手つきで電子キーボードに指を躍らせ「ドラァ!」と勢いよくエンターキーを押す姿は魔理沙にとっては見慣れた光景である。それに対し、幻想郷のマップが画面に静かに表示されるさまは少し虚しさを感じてしまう。
「最重要課題は花の感染スピード、まず変異種の発生源は妖怪の山のど真ん中あたりだ。」
マップの北西部分、妖怪の山と呼ばれる地域に表示された赤い点がその位置を示していた。ところが、にとりがキーボードを操作していくうちに点は増え、しまいには幻想郷全体をぐるりと囲むようにして赤い輪っかが出来ていた。
「ほーらこのとおり、私たちみんな花に囲まれちまった。」
「おいおい、私の知らないところでこんな事が…。んでよ、これどんくらいのスピードでその、えーと、」
「感染スピード?」
「そうそう、感染スピード。最初に変異種が発見されてどのくらいでこんな地図に花冠作っちゃったわけよ。」
「約一週間だ。」
「んへえ……。一週間!!ンン!!??」
魔理沙が情けない声で驚く事は人間の時以来であった。
「てこたあ、かなりまずくねぇか!?ポツンとした赤い点が一週間で幻想郷囲んでんだぞ!」
「だから魔理沙呼んだんだよう!燃やしても5時間経てば元通りに花がさいてんだよう!もうにとりちゃんお手上げ!どうしよう幻想郷!」
にとりの幻想郷を憂う一言を遮るかの様にジージーと音が鳴った。その音の発生源はにとりの腕時計からである。
「なんか鳴ってるぞ。」
「あゝ、変異種の調査隊の奴らからの着信だね。」
「何だ、調査だなんてそんな事やってたのかよ。」
「バッキャロー。調査しないと何も分からないだろう?っともしもしー?どうしたー?」
ーいつも思うが、霊夢の“勘”ってやつはすげえんだな。こんな事しなくたってアイツはすぐ黒幕に辿り着く。ー
魔理沙が霊夢との思い出にふける瞬間だった。
『にとり!人里に変異種が!』
その大音量で響く焦燥に駆られた声の奥からは、数多の人間の叫び声が狂った芸術のように渦巻き、響いていた。