第六回 ウマ娘短編合作 ウマ娘のお花見 作:BuddPioneer
桜の季節といえば、一般的にはお花見かもしれないが、トレセン学園のウマ娘達は、あまりお花見という習慣はない。
トゥインクルシリーズを走っているウマ娘達にとって、桜が咲く時期はシーズン真っ最中。
練習にレースにと非常に忙しい時期だ。
さらに、トレセン学園は、春にファン大感謝祭も行われる。
トゥインクルシリーズを走っていないウマ娘達は、ファン大感謝祭の準備に追われているのだ。
だから、花見なんて楽しんでいる余裕があるウマ娘なんてそう多くはない。
そう多くはないはずであった。
「スぺちゃん?」
「食べ過ぎちゃって……」
花より団子をキメたスペシャルウィークは見事にまんまると太っていた。
きっかけは、スぺの実家から送られてきた食材だった。
いつもだと人参ばかりだったが、今回は大量の乳製品が送られてきたのだ。
牛乳にバターやクリームといった加工品まで、酪農業をやっているスぺの実家から送られてきた渾身の製品たちは、確かに非常においしかった。
だが、そのカロリーがやばかった。大体お菓子に加工されたから、本当にカロリーがうなぎのぼりである。
しかもどれも足が早い。
パクパクしたマックイーンはまるまるックイーンにジョブチェンジしたしスピカメンバーは大なり小なり被害を受けていた。
無事だったのは走りまくっていたスズカと、案外節制ができるテイオーぐらいであった。
スぺも真ん丸になっていた。
スペが良く食べることは必ずしも欠点ではない。
体を作るためには食べるのが必須だ。
彼女自身、怪我をしないのは、そういったよく食べることも根拠の一つだろう。
だが、スペは想定体重を超えると急に遅くなるタイプのウマ娘である。
レースまでに絞り切らなければ、次のレースは絶望的である。
スペシャルウィークのダイエットに、スズカは付き合うことにした。
「ウソでしょ……」
「えへへ……」
三日後、スぺの体重は増えていた。
三日間、桜の下を二人で走っていた。
花見の時期である。
桜が綺麗な場所で走った方が、気分がいいだろうとスズカが判断して決めたコースだった。
花見の時期となれば、トレセン学園周辺でも桜のスポットは多い。
東京競馬場の隣にある大國魂神社なり、近くの多摩川沿いなり、ちょっと走った先にある多磨霊園なり、東京競馬場自体も桜がきれいだ。
他にも小さいところまで合わせれば大小さまざまな花見スポットがある。
その景色は確かにとても気持ちいいものだった。
だが、それだけで済まなかった。
そこかしこで花見をする人がいたのだ。
スズカ一人だけなら、特に気にすることはない、無関係の人たちだっただろう。
声をかけられても、会釈程度で流していたはずだ。
だが、人懐っこい性格のスぺは違った。
すぐにファンという人たちにつかまったスぺは、その人たちにいろいろもらってしまった。
スズカにも止められなかった。
もらうものといえば、食べ物ばかりであった。
唐揚げといった揚げ物。
おにぎりのような炭水化物。
団子などの甘いモノ。
スナック菓子などの軽食もあった。
もらったものを笑顔で受け取り、その場で食べていくスぺ。
そんなことをしていれば、当然体重はうなぎのぼり。
「走って消費するから大丈夫です!!」
と豪語していたが、明らかに食べ過ぎである。
どれだけ走っても消費しきれるレベルではなかった。
ついでにスズカも太った。
さすがにそこかしこでもらったものを断れずに食べたのがまずかった。
鏡で自身の姿を見ると全体的に肉がついている気がする。
スズカは隣のスぺを見る。
純朴であまり女性らしさを出さないスぺだが、体格はかなり女性らしく出るところは出ている。
トレーニングをしているせいか、意外とスタイルは崩れていない。
ただ、トモから尻にかけてがむっちりと女性らしくなっていたし、胸もかなり大きくなっていた。
端的に言ってナイスバディだ。
一方スズカはどこも出っ張らずになんとなく肉がついていた。
スズカは悲しくなった。
そうしてスズカはスぺを見捨てた。
このまま続けていてもスぺは痩せない。
もうトレーナーさんに任せることにした。
後、スタイルの差も少し根に持っていた。
スズカは走るのが大好きであるがそれだけで生きているわけではない。
多少おしゃれにも気を使っているのだ。
食べて、女性らしく丸くなるスぺと、なんとなくぼんやり太る自分の差が悲しかったのだ。
痩せて、前のスマートな体型に戻るため、スズカは走り続けた。
個人練習を1週間もすれば、スズカは再度元の体型に戻った。
スズカはもともと体型維持に苦戦している方ではないのだ。
トレーナーさんからももう少し食べた方がいいといわれるぐらいであり、普段の生活をしているだけで元の体型に戻った。
そうして1週間ぶりにチームルームに行くと、そこは惨状だった。
スぺはスぺまるウィークに進化し、さらに太っていた。
メジロマックイーンも、メジロまるックイーンになっており、真ん丸だった。
ダイワスカーレットとウオッカも、そこまでひどくはないが明らかに太っている。
ゴールドシップは逆にがりがりに痩せていた。何があったのだろうか。
そしてトウカイテイオーはいなかった。きっとこの惨状から逃げて、生徒会室あたりにいるのだろう。
要領がいいことである。
ゴールドシップと目が合った。
救いを求める顔をスズカに向けていた。
基本傍若無人で豪快な彼女にいったい何があったのか。スズカにはわからなかった。
わからなかったが
「ゴールドシップ、頑張ってね」
スズカは笑顔でチームルームの扉を閉めたのであった。
ゴールドシップの絶望の表情だけが印象的であった。
桜の花びらが散るころには、チームは今まで通りに戻っていた。
まるまるになっていた二人が、いつの間にか元通りになるのは不思議である。
ただ、スぺのスタイルが良くなっているのに気づいたスズカは、少しだけ悔しい気持ちになるのであった。
なお、ゴールドシップはなぜか丸々と太っていたが、スズカは気にしないことにした。
作者:みやび
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代表作品:黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り
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