第六回 ウマ娘短編合作 ウマ娘のお花見   作:BuddPioneer

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春、それは出会いと別れ、そして回想の季節である。


最終話 私が見たあの桜を、私は決して忘れない(作:BuddPioneer)

 ごきげんよう。メジロマックイーンですわ!春と言えば、桜。桜と言えば、花見ですわね。隅田公園の桜、上野公園の桜、目黒川の桜・・・上げれば名所はキリがないくらいたくさんの名所がありますわ。

ですけど、これらの名所にも劣らぬ美しさを誇る桜がこの東京には存在しますの。それが、府中市にある日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園の桜ですわ。この桜並木もまた美しいと評判ですのよ。正門から一直線に伸びる桜並木は圧巻の一言ですわ。

今ワタクシはこの桜並木の中を歩いていますわ。あいにく授業中ですから、他には誰もいませんわ。所謂貸切状態ですわね。

 

「思えば、年月が経つのはあっという間ですわ。みんなとこの桜並木をダッシュしたことがつい昨日のように思い出されますわ。」

 

 改めて自己紹介をいたしますわ。ワタクシの名はメジロマックイーン。名門メジロ家の生まれにして史上初の天皇賞親子3代制覇、天皇賞連覇など、様々な記録を打ち立てた時代の覇者ですわね。

 トゥインクル・シリーズを引退した後はその上にあるドリーム・トロフィーリーグに移籍。ここでも数え切れないくらいの偉業を建てた後、メジロ家総帥として後進の指導にあたり、ウマ娘の業界内におけるメジロ家の地位をより盤石なものにしていくなど、その功績はやはり引退しても計り知れないものがありましたわ。

 還暦を迎えましたので、今は総帥の座もひ孫に託し、自らは会長に退きましたのよ。ですけど、メジロ家内部でも総統の発言力はまだまだありますわ。

 ウマ娘は見目麗しく、歳の割に老けないと言われていますけど、ワタクシももう還暦を過ぎましたわ。自慢の薄い紫がかった髪や尻尾は今では完全に真っ白になってしまいましたわね。それでもプロポーションはよく還暦を過ぎたウマ娘とは思えないほど、とよく社交界では言われていますわね。ですけど、面と向かって言われるとちょっと恥ずかしいですわ。チーム・スピカに所属していた時が懐かしいですわ。

 そういえば、この桜並木にまつわる話を思い出しましたわ。今日は皆さんにこの桜並木にまつわる物語を話しますわ。そう、あれはワタクシがトレセン学園にまだ在学していた頃の話でしたわね・・・。

 

 そうして、メジロマックイーンは桜並木をよく見渡せるベンチの一つにもたれかかり、過去を懐かしむようにこの桜の物語を思い出していった。

 

~40年前~

 

「んんん~♪いい朝ですわね。やっぱり朝日は最高ですわ。」

 

 4月のある日、メジロマックイーンは寮の自室で目が覚めた。なお、同室のイクノディクタスはまだ寝ている。ゆっくりと布団から出たメジロマックイーンは顔を洗うために洗面台へと向かうためにドアを

 

「よーマックイーン。今ヒマ?」

 

 開けて秒で閉めた。ドアを開けたら目の前にゴールドシップがいるなど誰が考えただろうか。いや、誰も考えないだろう。

 

『何で自室の目の前にゴールドシップさんが?!ま、ままままさか、まだ眠気が取れていないかもしれないのかもしれませんわ。いいえ、これは夢ですわ。そうに違いありません。』

 

心の中で早口に捲し立てて自分を納得させたマックイーンは、悪い夢を見ているのだと思い、再びドアを開けた。

 

「なんだよマックイーン。急にドアを閉めるなんてよ~。これでも564年もの間無人島を制覇してきた仲だろ~。」

 

 前言撤回。夢ではなかった。

 

「なんですの、ゴールドシップさん?ワタクシは顔を洗いに行きたいのですけど。早くそこをどいて下さいませんこと?」

「何だよ冷たいな~。今日はとっておきの話を持ってきたのによ~。」

「大体貴女の持ってくる話は碌なものがありませんわ。まあ、でも話だけなら一応聞きますわ。」

「おっしマックイーン!話が早くて助かるぜ!流石はゴルゴルニウムを一緒に捜し合った仲だぜ!」

 

 メジロマックイーンの意にも介さず、ゴールドシップは一人で話を進めていく。大体こういう時は話を聞いてあげないと意地でも動かないということは身にしみて実感しているため、取り敢えず話だけは聞いておくことにした。

 

「マックイーン、お花見どう?」

「お花見、ですか?」

「そう、お花見。折角桜が綺麗に咲いているからよ、トレーニングするのも大事だけど、花より団子っつーだろ?やっぱりこういう時は息抜きも兼ねてお花見行こーぜ!」

「は、はあ。ですけど、前にスピカのみんなでお花見したでしょう?」

 

 そして、ゴールドシップが切り出してきたのはまさかのお花見であった。正直マックイーンは安堵半分、困惑半分だった。というのも、既に1週間ほど前にチーム・スピカのみんなでお花見をしたからである。そこで何故再びお花見をしようというのか、これが分からずにいた。お花見はホイホイするものではない。滅多にこそやらないから意味があるのである、と考えるのはマックイーンの持論だ。

 

「んにゃ、スピカのみんなとお花見をしたのは勿論分かっているぜ。だけどよ、アタシはマックイーン、お前さんと一緒に花見をしたいんだ。ダメなのか?あ、勿論桜餅は作っていくぜ。」

 

 ゴールドシップは、さながらプロポーズのように捲し立ててきた。ゴールドシップからすれば、何か実態の見えない因果に惹かれるようにマックイーンと絡んでいた。そう、なんだかんだ言ってゴールドシップはマックイーンのことが好きだったのである。

 一方のメジロマックイーンもまた、悩んでいた。理由は、甘味である。実は前回のお花見の際に、ゴールドシップが桜餅を作ってきたのだ。この桜餅が思った以上に美味しく、メジロマックイーンはまた食べたいと考えていた。ゴールドシップは言動や行動こそアレだが、実のところ、根っこは超が付くほどの常識派。そして、桜餅があるということが最後のキーとなった。

 

「・・・分かりましたわ。あとで詳しく日程を詰めましょう。」

「うっしマックイーン!やっぱり話が早いぜ!」

「勿論、美味しいスイーツ、待っていますわよ。」

「あったり前だぜ!パティシエゴルシちゃんの腕が鳴るぜ!!!」

 

 こうして、珍しい2人だけのお花見が実現したのであった。

 

 

~2週間後~

 

 トレセン学園の桜並木。その中にあるベンチの一つに、1人のウマ娘の姿があった。名をゴールドシップという。彼女は既に約束の30分ほど前にそこに来て、メジロマックイーンのことをずっと待っていた。なんだかんだ言って律儀である。

 

『なんだよマックイーン。遅いじゃねーか。』

 

 マックイーンが遅いのではありません。貴女が早すぎるだけです。

 

「んあ?誰かの声が聞こえたんだが。気のせいか?」

 

 ええ気のせいです。

 ちょうど満開になった桜が、いい感じにアーチのように咲き誇り、そこだけ別世界のような様用を呈していた。そこにいるのはゴールドシップ唯一人。その傍らには重箱があった。

 そして、約束の5分前。

 

「おはようございますですわ、ゴールドシップ。」

「おうマックイーン。」

 

 今回の主役でもあるメジロマックイーンが現れた。

 

「んじゃ、始めるか。」

 

 そう言いながら、ゴールドシップは傍らに置いてあった重箱を開けた。

 

「わあ!」

 

 そこに入っていたのは桜餅だった。大きな重箱のスペースを贅沢に使い、9個置かれていた。それが3段。計27個の桜餅がそこにあった。

 

「どうよ。和菓子職人ゴルシちゃん渾身の一作だぞ。」

「一つ、頂いてもよろしくて?というか、変なの入れていませんわよね?」

「いいぜ。だってそのために作ってきたんだからよ。というか、何も入れていないぞ?アタシのこと一体何だと思っているんだよ?」

「ただのハジけたウマ娘ですわ。では、一つ頂きますわね。」

「さらっとヒドい事言ってねえか?!」

 

 ゴールドシップの言葉を他所に、マックイーンは桜餅を一個頬張る。その美味しさは、まさしく彼女が『渾身の一作だぞ。』と言った通りであった。控えめな甘さの餡に、塩漬けの桜の葉。そして、程よい色に色づけされた道明寺粉が全て巧妙に合わさったまさしく珠玉の逸品である。

 

「美味しい・・・ですわ!」

「だろ?」

 

 その美味しさにメジロマックイーンは顔を綻ばせる。誰だって美味しいものを食べれば自然と顔が笑顔になる。気がつけば2つ目、3つ目と手を伸ばしていた。その姿をゴールドシップは微笑ましく見つめていた。その姿はまるで、親を見る子や孫のような目線であった。

 

「マックイーン。」

「?なんですの???」

「マックイーンってさ、何でも美味しそうに食べるよな。」

「な、ななな何を仰いますの?!」

 

 急にゴールドシップから言葉をかけられたメジロマックイーンは思いっきり赤面した。それもそうである。誰だって急にそのような言葉を言われれば照れるに決まっている。

 

「だってよ、マックイーン。そんなに美味しく食べてりゃ、誰だってそう思うさ。」

「そ、そうですの?」

「そうだぞ。」

 

 ゴールドシップが珍しく真面目にメジロマックイーンに話しかける。誰だって美味しいものを食べれば自然と笑顔になるのはある意味自然の摂理なのかもしれない。そう説明したかったのである。

 

「それによ、マックイーン。」

「?」

「見てみろよ、これを。」

「こ、これは・・・!」

 

 マックイーンが見上げると、そこには、美しい満開の桜並木があった。

 

「桜ってさ、「精神美」「優美な女性」「純潔」という花言葉があるらしいぜ。そう、マックイーンのように美しく優雅なウマ娘こそ、この桜が一番相応しいんじゃないかって、ゴルシちゃんは毎回そう思うのよ。」

「ゴールドシップ・・・。」

「それにさ、身近な桜ほど、見慣れているが故に、その美しさの本質に気づかないものよ。どうだい?この桜の美しさ。」

 

 桜についてアツく語るゴールドシップに、メジロマックイーンは一人桜餅を食べるのも忘れて聞き入っていた。

 

「ゴールドシップ。本当に貴女という人は・・・。確かに、この桜の美しさ、全く気づけていませんでしたわね。言われれば、ここの桜が一番美しいですわ。だって、我らが母校の桜なんですもの。」

 

 メジロマックイーンも、その桜に対する考えを改めつつあった。今までは、単なる学校の桜、という認識にしか過ぎなかった。だが、改めてこの桜を見ると、桜の美しさ、そして、その並木道がとても素晴らしいという物に気づいたのである。

 

「ふふっ、今日は改めて桜の素晴らしさを再認識した気がしますわ。礼を言いますわ、ゴールドシップ。」

「何のことだか。ゴルシちゃんは単に持論を述べたまでだぞ?」

「それでも本当に素晴らしい持論でしたわよ。」

「余計なお節介だい。」

「あらあら、照れていますの?」

「照れていないやい!!!」

 

 そう言いながら、ゴールドシップはそっぽを向いてしまった。その頬は、僅かに紅潮していた。もしかしたら、内心嬉しかったのかもしれない。

 こうして、2人の不思議な花見は終わったのだった。勿論、桜餅の食べ過ぎで体重が言えないことになったのは語るまでもない。

 

~現代に戻る~

 こんな感じの話ですわ。いかがでした?ワタクシにとっては今でもここの桜はやっぱり一番なのですわ。

 

「ばあば~」

 

 あら、孫たちが呼んでいますわ。それでは、今回はここでお暇させていただきますわ。また、何処かで会えたらいいですわね。

 

 そうして、『芝の名優』メジロマックイーンは愛しの孫たちのもとへと軽やかな足取りで向かっていった。この光景を見ていたのは昔から変わらぬ桜並木だけであった。




 最後までお読みいただいてありがとうございます。春と言ったらメジロマックイーンとゴールドシップ、というのが真っ先に頭に思い浮かび、筆を取りました。

作者:BuddPioneer
https://syosetu.org/user/348705/

代表作:マイネルハイウェイの温泉掘削計画
https://syosetu.org/novel/274762/
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