たとえ勇者に非ずとも 作:そば茶
ヒロアカ六期始まりましたね(一週遅れ)。
動き回るミルコさんが見れて筆者は感激です。
今回は主人公の動きよりも、ヴィジランテ作中の警察の捜査温くない?という疑問に対する筆者なりの解釈を書くため自己満足回になります。
連絡の切っ掛けは、向こうからやってきた。
事件の後、美月の勧めで午後の学校をさぼった俺は、一人自室でネットしながら現場からコッソリ回収してきた蜂を
指がアレなので俺は不器用なのだが、【サイコキネシス】を使えばミリ単位以下の精密作業さえ容易だ。切れ目から力を通し外骨格に張り付いた筋繊維を一つ一つ剥がすことで、組織を一切傷つけることなく、まるで着ぐるみを脱がすようにして内臓を引きずり出すことさえ可能だ。
【いやしのはどう】を始めとした生物干渉能力の実験にはよく庭で捕まえた昆虫を利用していたので、被検体の検証のために磨かれたこの解体技術は、なかなかのものだと自負している。
ネットで適当に拾ってきた蜂関係の論文を流し読みしながら、引きずり出した内臓を綺麗に整えていく。
調べた限り、個性による生成物は既存の生物の構造をなぞっては居ても、やはり同一のものとはみなせそうにない。
拾ってきたこの”注射蜂”は、蜂部分の見た目こそスズメバチに酷似しているが、本来多くの内臓を収めているはずの尾部がスッカラカンの注射器に変わってしまっている影響で、心臓や気管といった臓器が丸ごと胴体に押し込まれる形になり、かなり小型化している。常識的に考えれば、生物というのは進化によって必要十分なサイズと機能の臓器を体内に備えているはずで、カツカツなはずのそれを更に小さくしてしまえば飛行という極めて高強度の運動を行うだけのエネルギー生産が間に合うはずはないのだが、実際元気に殺気まき散らしながら飛んでいたので、個性というのはぶっ飛んでいる。小型化した分、高性能化しているんだろう。
気になるのは、腸がないことか。
口と胃らしきものはあるのだが、その先が無い。生成時に与えたエネルギー分だけ動く使い捨て前提の兵士なのか、生成者から個性独自の方法で補給を受けるタイプなのか・・・。
世の中には腸内細菌のおかげで糞をせずに生きる虫が居るというし、あるいはそういう生態なのかもしれない。手持ちの顕微鏡じゃ細菌レベルはちょっと観察しづらいので確かめようがないが。
本当は刺激に対する反応性なども調べて、蜂使いがどうやって注射蜂をコントロールしているかも調べておきたかったのだが、全部殺してしまったのでそこまでは分からない。俺が戦う分には一万匹いようが敵じゃないが、仮に蜂使いに情報を伝達するような機能があると面倒だからな。
事件の最中は終始「死ね!」とか「殺せ!」って感じだったし、強力な思念や電波の類も感じなかったので、多分大丈夫だとは思うが・・・まぁ、念のためだ。
結果的に、あまり得るものは無かったが、気分転換にはなったな。
連絡に気づいたのは、俺が楽しい生物実験に一区切りをつけた頃だった。
半日ぶりくらいに開いたスマホには委員長やクラスメイトからのメッセージが大量に届いていた。委員長からはあの後どうだった的な感じの内容、クラスメイト達は先生あたりから事情を聴いたのか、「大丈夫だったか?」とか「ヴィランはどんな相手だった?」とか心配半分好奇心半分くらいの内容だった。
それらを流し読みしつつ遡っていくと、昼過ぎくらいに意外な人物からメッセージが来ていた。
登録名は黒巌。
ナックルダスターからの連絡である。
開いてみれば、今朝の事件のことで話があるので都合を付けろ、的なことがツラツラと書いてある。
はて、一体どこで事件のことを知ったんだろうか?
連絡の来た時間を見る限り、俺が帰宅したあたりだ。つまり、取り調べが終わってから一時間かそこら。いくらなんでも情報の拡散早すぎないだろうか?
情報屋でも飼っているのか・・・随分、耳の早い人物である。
まぁなんにせよ、向こうが話す気になっているならこちらとしても都合がいい。
断る理由もないので、承諾の返事と空き時間を書いて返信する。俺の返事を待っていたのか、返事は直ぐにきた。
日にちは明日。コーイチ君宅で、とのことだった。
どうせなら、ファミレスとかで茶の一杯でも奢って俺の苦労を労って貰いたいところだが・・・そういう気遣いは期待できそうにないな。
明日もまた、疲れる一日になりそうだ。
とりあえず、今日は早めに寝ることにしよう。
昼に仮眠したので今はスッキリしているが、寝不足の弊害というのは自分ではなかなか気づかないものだからな。こういうことが起こらないように、短時間で全快できる【ねむる】とか覚えられると睡眠時間が浮いてハッピーなんだが。
【サイコキネシス】と同じエスパーワザだし、頑張ればなんと覚えられそうな気はするのだが。参考になる個性の多い【サイコキネシス】と違って、【ねむる】はそういうの無いから取っ掛かりがなぁ・・・。
他人を眠らせる個性は有り触れてるが、”素早く寝る”や”寝ることで回復力を上昇させる”といった個性には今のところ遭遇した覚えがない。
今度睡眠科学の本でも買ってみようか?
そんなことをぼんやりと考えつつ、散らかした蜂の残骸をまとめる。
ゴミ箱に捨てて置くのは憚られるので、【サイコキネシス】をかけて窓から庭の植え込みに放り込み、カラスどもに処理を任せる。
これで、朝にはきれいさっぱり片付いていることだろう。
『さぁて、風呂だ風呂』
今日は散々嫌な汗をかかされたからな。
綺麗にして、気分よく寝よう。
◇ ◆ ◇ ◆
夜になると、鳴羽田の街は昼の喧騒が嘘のように静かになる。
それこもこれも最近の治安悪化が原因だ。立て続けの事件で市民は外出を控えるようになったために、日が落ちると街から人の往来はパッタリと消える。
そんな中でも、街では多くの飲食店が明かりをともしているが、やはりどこも閑古鳥が鳴いている。
「・・・」
良くない兆候だ、署へ戻る道すがら車窓から見える街の様子を眺める塚内の内心に言い知れぬ不安が沸き起こる。
夜間の人出が減って来たことで、夜間の事件が減っているというのは肌で感じている。
だが、人出が減るということは人の目が届かない場所が増えると言うことだ。今まで陰で行われていたことが、公然と行われるようになるということだ。
建物から漏れる光の外側で、動く悪意を見る者が居ないということだ。
塚内にはこの静けさが、嵐の前の静けさに思えた。
だが、警察官としては漠然とした不安にただおびえるだけでは終われない。塚内はその正義感から、速やかに今鳴羽田の街を襲っている以上事態を何とかしようと奔走していた。
否、奔走しているのは塚内だけではない。鳴羽田署の刑事達は皆そう思っているに違いない。夜にも関わらず、窓から煌々と明かりを零す警察署を見て、塚内はそう確信する。
誰もが、頑張っているのだと。
「おう、塚内。帰ったか」
「お疲れ様です、田沼さん」
居室を訪れれば、塚内の先輩にあたる田沼刑事がまだ仕事をしていた。
「これお土産です。・・・残業ですか?」
「ちょっとな。おお、饅頭か」
塚内が夜遅くに外に出ていたのは、出張の帰りだったからだ。
現在、鳴羽田署が抱えている案件の内もっとも大きな事件が、トリガー流通に端を発する突発性敵によるものだ。半年前から噂レベルではその存在が語られていたが、実際に流通が強く意識されたのは先日の突発性敵大量出現事件からだ。以来、鳴羽田署では署全体を上げ、また管轄区のみならず近隣で活動するヒーロー達にまで協力を仰ぎ、事件の捜査を進めて来た。
だが、大規模な捜査体制を敷いておきながら、肝心な成果の方は殆ど上がっていないというのが正直なところだった。トリガーの流通量を考えれば、相当な資金力と人員を抱える組織が居るはずなのに、今のところ捕まえることができたのは薬物の使用者ばかりで、組織の末端ですらない。逮捕された使用者の証言から複数の売人が居ることは判明している。警察はその証言から売人達を突き止め、逮捕すべく動いている。
が、今のところ捉えることが出来た売人は0。不思議なことに、懸命な捜査の末売人の身元を特定しても、いざ逮捕に向かう頃には皆煙のように姿を消しているのだった。当然、以後の消息は知れない。
既に何度取り逃がしたか分からない。
それでも、なんとかして手掛かりを得るべく警察では消えた売人の近親者に対する聞き込みを行っていた。塚内が出張に行った目的も、県外に居る近親者に直接会うためだった。
田沼は仕事の手を止めると、茶にしようと言った。
塚内もそれに応じ、二人は居室の隅に設けられた会議スペースに移動した。軽い雑談の後、田沼が斬り出す。
「聞き込みの方はどうだった?」
「すいません。有力な手掛かりは何も。近親者の方も最近は連絡を取っていないという方が多く、薬物売買に繋がるような心当たりも無い様子でした」
「・・・そうか」
塚内の報告に、田沼は苦々しい表情を浮かべた。
報告をする塚内自身、表には出さずとも内心では同じような顔をしていた。
聞き込みを行った近親者の中に、有力な情報を持っているものは皆無だった。それどころか売人達がそういった行為に手を染めていたこと自体が信じられないと言った様子だった。
売人達──現状では容疑だが──には前科や、過去に怪しい集団と関わりがあった者は調べた限りでは一人も居なかった。皆上京してサラリーマンや学生をしているどこにでもいるような一般市民だったのだ。
「んん・・・金に困ってたって訳でもないんだろう?どこにでもいるようなリーマンが突然薬物売買に・・・無いとは言わんが、この数は流石になぁ?」
「はい、私もそこは解せないと思っています」
「共通点とかも無しか?」
「これといったものは何も」
「はぁ~、まいったね」
売人達にはこれといって共通点がない。圧倒的に男性が多いが、全てが男性という訳でもなく、年も20代前半から50代までと幅広い。一人暮らしの者も居れば家族と同居しているものも居る。全員鳴羽田区かその近隣に住んではいるのが共通点と言えば共通点だったが、職業はバラバラで何か共通するコミュニティに所属しているといった形跡もない。
表に関係性が見えないのであればネット上で繋がっている可能性が高いが、これほどの大人数を集めているにも関わらず、薬物売買を行う勧誘サイト等の情報は今のところ噂レベルでも出てきていなかった。
調べるにも、どこから当たるのが正解なのかまるで見当がつかない。
捜査はまた振りだしに戻ってしまった。
「まぁ、とりあえず出張ご苦労さん。今日のとこは帰って休んでくれ」
「いいんですか?残務あるようでしたら私も・・・」
「ん?ああ、今やってんのはトリガーとは別件だから気にすんな」
「別件、ですか?」
田沼の発言に塚内は首を傾げる。
田沼は塚内と同様。トリガー流通事件の担当であり、現場と取り仕切る立場にある。他に事件が起こったとしても、普通は別の人間が担当するものだ。
そう疑問を口にすれば、田沼は気だるげな様子で口を開いた。
「今朝、西の住宅街で事件が起こったんだがな。今はほら・・・・トリガーと天忠會の件でどこも忙しいだろう?」
「そうですね」
田沼の言葉に相槌をうつ。
トリガー流通事件が今の鳴羽田署の最重要案件であるとするならば、その次に挙げられるのが隣接する段東区で発生した天忠會事務所での斬殺事件だった。
死者十名以上の大事件だ。犯人が未逮捕となれば、それだけで捜査本部が立つには十分すぎる凶悪事件だ。加えて今回は被害者が問題であった。
ヤクザ。それも本部付きの武闘派幹部達のみならず組長までもが被害者に含まれている。組長と武闘派、組織の屋台骨を引き抜かれた天忠會は、今まさに存亡の危機にある。
その混乱の隙をつくように周辺地域のヤクザや今まで天忠會によって抑えられていた縄張りの半グレ組織等が活性化の動きを見せており、鳴羽田署のみならず都内の警察全てがこの件に注目していた。
むしろ、警察組織としては目立つとはいえ一地域の事件に過ぎないトリガー流通よりも、全国的な抗争を招きかねない天忠會まわりの動向を気にしていた。
当然、鳴羽田署としても無視できるはずもなく、トリガー流通事件にも匹敵するだけの人員をヤクザの同行監視に差し向けていた。
「そのせいで陣頭指揮とれる奴が居ねぇてんで、初動捜査だけ担当したんだよ。んで、頃合い見て引き継ぐつもりだったんだが・・・ちょっと妙な事件でな」
「妙、ですか」
「・・・ちと長くなるが、見るか?」
「はい」
正義感の強い塚内は、事件とあれば見過ごせない。たとえ自身の担当案件ではなくとも、どのような事件が起きているのかは把握しておくべき、というのが塚内の信条だった。ふとしたきっかけで、情報に巡り合うこともあるからだ。
食いついて見せれば、田沼はわずかに逡巡した後、塚内を自らのデスクに招き、雑多に並べられた資料を見せながら、事件の概要を伝える。
昏睡した男女、個性によるものと思わしき蜂の群れ。そしてそれらに対処した少年。
全てを話し終えると、田沼は現場写真を取り出し、塚内に見せた。
「で、これがその昏睡してた男女の写真なんだが。かなり痩せてるだろう?」
「はい」
写真に写る男女は、確かに酷くやせ細っていた。服を着ているため見えるのは顔や胸元、手といった部分のみだ。しかし、落ちくぼんだ目元や突き出た頬骨、胸元の浮き出た骨が布の下がどうなっているかを容易に想像させた。
孤独死した遺体に似ている、塚内はそう思った。
「これが変な話でな。医者の話じゃ、普通の人間がこうなるには少なく見積もっても一週間は飯を抜かなきゃこうはならんのだと」
「変?これだけ痩せているのですから、それは当然では?」
食事をとれないまま昏睡していた。だから痩せた。
因果関係としてはごく単純で、疑う余地は全く無いように見える。
塚内に対して、田沼は違うと首を振った。
「いいか、塚内。人間ってのは食わないだけならそこそこ生きていられるがな、問題はこれだ」
言いながら、田沼は別の写真を引っ張り出す。
そこにはエアコンが映っていた。
「これがどうしたんです?」
ここにある以上、事件現場となった自宅に設置されていたものだとは分かるが、なんの変哲もないエアコンに見える。田沼の注目している部分が分からず、塚内は首を傾げる。
「よく見ろ、止まってるだろう?」
「そのようですが・・・あ」
「分かったか?」
「水分補給、ですね」
「そういうことだ」
単純な話だった。
この事件は、蜂を操るヴィランによって夫婦が襲われた、と一見して見える。だが、それでは可笑しいのだ。夫婦の痩せ具合は一週間以上断食しなくてはなり得ない酷い衰弱状態。これが蜂に襲われてからずっと昏睡していたために起きたものだとすれば、夫婦は既に死んでいなければならない。
何故なら、人が水分補給をせずに生きて居られる期間はせいぜい3日、長くとも5日程度。まして、空調も効いていない真夏の室内に放置されていたのだと一週間もの長期に渡って生存するなど、ほぼ不可能と言えた。
「室内が暑かったのも証言が取れてる」と田沼は言葉を続けた。目撃者の中に、《赤外線》の個性を有する少女が居たのだった。
田沼が引っ掛かった部分に納得した塚内は、同時に田沼が”妙”と捉えた疑問も理解した。
「被害者達は、犯人によって延命させられていた可能性があるんですね」
他に考えようがなかった。
昏睡状態となり、灼熱の室内に放置された二人の男女。本来であれば3日と待たず死んでいるはずの二人が一週間、本来の倍以上の期間生きていたとするならば、何者かが彼らに食わせていたと考えねば辻褄が合わない。
それが犯人自身の手によるものか、手足である蜂を利用した方法かまでは不明だが。
しかし、犯人が二人を活かしていたとするならば、それは一体どのような理由からだろうか?
襲いはしたが、殺すまでは躊躇したのか?それにしてはやり方が中途半端だ。痩せ具合から見れば、あと一日持ったか怪しい。殺す気が無いのであれば、ここまで痩せる前に何らかの手をうつはずだろう。
状況から見れば、殺しはしなかったが積極的に生かしておくつもりも無かったと判断する他ない。では、どのような犯行目的であれば、この状況を成立させうるだろうか?
強盗や監禁。塚内はかつての経験からいくつか候補を挙げてみるが、どれも状況にそぐわないように思える。
「な、妙な事件だろ?」
「はい」
田沼の言葉に塚内は同意する他なかった。
一体全体、どういう犯行目的があればこのような状態になるのか皆目見当がつかない。実に奇妙な事件だった。
「被害者の夫婦の意識は戻りそうにないんですか?」
「いや、医者の話じゃバイタルは安定してるそうだから、そのうち回復するはずだ。まぁ、二三日中って訳には行かんだろうがな」
「そうですか・・・」
この事件の犯人を見ている可能性が高いのは、外ならぬ被害者夫婦自身だ。二人から証言を取れるならそれだけで事件解決まで一気に近づく。
だが、栄養失調で弱り切った体が昏睡状態から復帰するとなれば、相応に時間がかかるだろうというのは容易に想像がつく話だった。二人に投与されていた薬物がどのような副作用を持つかも未だわかってはいない。
今のところは、鑑識と周囲の聞き込みを頼りとする他ない。
つまり、早期解決の見込みは低い。それは警察にとって非常に頭の痛い事態だった。
「早期解決できないとなると、再犯が怖いところですね」
「それだよなぁ・・・ったく、怨恨なら話は楽なんだがなぁ」
「田沼さん」
「いやいや、冗談冗談」
田沼が口にした明け透けすぎる言葉に塚内は苦言を呈する。
だが、それが頭の痛いところであるのは事実だった。
犯行目的が仮に怨恨であり、夫婦のみを対象としていたのであれば、被害が拡大する余地がなく、警察としては淡々と捜査を進めるだけでいい。
だが、犯行目的が全く別にあり、夫婦が単に犯人の目的に沿った条件に合致していた、というだけであるならば第二第三の犯行が繰り返されることとなる。
警察として、そのような事態は断固として防がねばならなかった。
だが、今の鳴羽田署には大規模な捜査を行えるだけの人員が居ない。
トリガー関連の事件はその発生数の多さ故に、天忠會を中心としたヤクザ及び半グレ組織の活発化は規模の大きさ故に警察は二つの事件に人手を割かざるを得ない。
誰の目から見ても、二つの事件と昏睡事件の優先度は前者の方が高かった。
人に優劣をつけるような判断は塚内としても忸怩たる思いだが、組織人としての冷徹な思考はそれが正しい判断だと囁いていた。
「厄介な時に事件を起してくれたもんだよ」
愚痴を零し疲労感を漂わせる田沼を尻目に、塚内は被害者の写真を見た。
酷くやせ細った体。ともすれば明日には死んでいたかもしれない二人の姿を。
これと同じことが起こるとして、果たして次は死亡する前に発見することが可能だろうか?今回のように、偶然誰かが見つけるなどという幸運は、期待できるものでもなければ、警察官が期待していいものでもない。
組織として動けないなら、個人でも出来る範囲で。
塚内は、内心で覚悟を決めた。
「わかりました。私の方でも、少し調べてみることにします」
「あ?良いのかよ?」
「明日からはまた町で聞き込みですし、やることは変わりません。何か追加の情報あれば、私の方にも連絡お願いできませんか?」
「そりゃ俺は構わねぇがよ、お前ここのとこ徹夜続きだろう?そんなに仕事抱え込んでいいのかよ?」
「徹夜続きは田沼さんもじゃないですか」
徹夜続きは、皆そうだった。皆が、少しづつ無理をして必死に町の平和を守っているのだ。
忙しさなど、塚内にとって事件を見過ごす理由にはならない。
渋っていた田沼も、言い募る塚内の目を見て観念したように口を開いた。
「はぁ、分かったよ。ったく、後輩が熱心で助かるよ」
「ありがとうございます」
「ただし!今日は帰って休め・・・仕事は明日からだ」
「どのみち鑑識から現場調査の結果が出るのは明日だしな」と言って田沼はニヒルな笑みを浮かべた。
それを見て、塚内も少しだけ微笑んだ。
「分かったらさっさと帰った帰った」
「わかりました。・・・では、お先に失礼します」
礼の気持ちを込めて、塚内は深々と頭を下げた。
最後まで生真面目な後輩の姿を見て、田沼は呆れた表情を浮かべると、立ち去っていく背に向けてヒラヒラと気怠げに手を振った。
普通に考えれば、似顔絵とかで蜂須賀九印を特定してさっさと捕まえているはずですが、そうなっていない以上なんらかの方法で捜査を攪乱していると考える他ありません。作中の蜂須賀の行動から考えられるのは①蜂を寄生させた傀儡に売人をさせ囮にしている(使用後は実験体へGo)。②スタンダール(後のステイン)を利用した天忠會斬殺事件により裏社会に動乱を起こし警察の捜査網に負荷をかけている。あたりかなぁと思いました。
まぁ、今話は原作時系列的には二巻と三巻の間なため、原作4巻で爪牙君が制服を頼りに蜂須賀の通っている学校特定できちゃってる理由のフォローはなってないんですけどね。
塚内君キミほんとに有能か?
ただ、こういう原作のアラを埋める作業も二次創作の醍醐味かなぁと筆者は思います。
塚内直正
個性:不明
原作でもお馴染み、オールマイトの友達の警察。階級は警部。ヴィジランテでは清濁併せのむ田沼さんとはうって変わって、生真面目堅物刑事担当。ヴィジランテというグレーな存在の是非を巡ってコーイチ君陣営と衝突したりしなかったりする。
他人に使う能力は当然生物実験している男
どういう作用になるのか分からないので、当然生物実験はしているタイプ。効果を確かめるために解剖だってする。観察用の顕微鏡は誕生日に買ってもらった。魚類や爬虫類、両生類などの確保しやすい動物は当然として、哺乳類や鳥類でも実験している(違法)。その経験で培った技術で、敵の能力を分析することも怠らない。なお、「個性って凄いなぁ」くらいしか分からなかった模様。生きてるのを持ち帰るのは怖いから仕方ないね。でも蜂とか敵じゃないし、ま、ええやろって感じ。
通話機能使わないし、修行の邪魔になるので基本的にスマホは見ないタイプ。物理キーのないスマホで返信するのはメンドクサイので、友達からのメールは既読スルーも辞さない。
赤外さん
「返信ないけど大丈夫かな?」と心配している。
クラスメイト達
「返信ないけど大丈夫か?」と心配している。
ナックルダスター
「返信が遅い!」とキレている。