たとえ勇者に非ずとも   作:そば茶

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主人公の独白の形式で書いていると、ついつい「まぁ」を使いたくなってしまう病。



第六話 お願い

 

放課後は基本的に学校の図書館に入り浸ることが多い。

それは、宿題をするためだったり、調べものをするためだったりする。これは、前世からの習慣だ。家だとどうしても怠けてしまうので、人目のあるところで集中するのである。

 

前世と比べると一世紀ほど時代が進んでいる影響なのかデジタル機器の整備が進んでおり、この世界では小学校にも大学のように情報端末が整備されており、大きな図書館なんかのアーカイブにアクセスしたり、資料を印刷したりすることが出来る。

実際にその恩恵にあずかっている人間は少数であり、予算の使い方としてはかなり無駄が多いと思うのだが、その数少ない利用者の一人としてはありがたいものだ。

調べものだけなら家でも出来るのだが、デジタルより紙派な古い人間としては、書籍や印刷した資料を見る方がはかどるのだ。それに、この体は全体的に五感が優れるせいかパソコン作業の疲労度が高い。

大量に資料を印刷しちゃ持ち去る俺に、司書の先生が恐らく印刷代を思って微妙な顔をしているが、どうせ使う人間がいなくて余っているのだから許して欲しい。

 

さて、日ごろは実利と個人的興味を兼ねて個性関係の資料を当たるのが日課の俺だが、最近はもっぱら例の突発性ヴィランに関係した調査を行っていた。実地調査は先生にお願いできたので、俺は安全にできる机上調査である。報道各社のニュースやSNSのつぶやきを収集・分析し、整理する。同時に、過去の犯罪史の資料にもあたりつつ、この事件がありふれたものなのかどうかを検証していた。

 

していたのだが、それ以上に状況が変化していた。

 

二週間ほど前のことだ。

鳴羽田の繁華街で大規模な突発性ヴィラン発生事件が起きた。発生したヴィランは実に十体以上。老若男女を問わず、突如として個性を暴走させ、繁華街で暴れ回ったのである。

幸い、警戒していたヒーロー達が即座に対処にあたり、人的・物的被害はそれほど出なかったものの、一週間近く大手メディアの話題を搔っ攫うほどの大事件となった。我が家は休日にはあまり出かけないタイプなので、特に巻き込まれることもなく、テレビの速報で事件を知ったときは「巻き込まれなくてよかったねー」なんて話をしていたのだが・・・。

 

いよいよ、話が大きくなってきたと俺は思った。

いままでが様子見だったのか、散発的であった突発性ヴィランの発生が、突如として十数体にも及ぶ大規模なものへと変化した。これは俺の予想通り、ここにきて大きく陽動を仕掛けてきたか?なんて思いもしたのだが、特に周辺で変わった事件が起こった様子もない。以降もペースを落としつつも突発性ヴィランは発生し続けており、薬の流通はまだまだ続いている模様である。

 

そんなわけで、いよいよ楽観視は出来ないかと俺も調査により一層気合を入れたところで悲しいお知らせ。

 

まず一つ目。

先生が情報をくれなくなった。

あんなにカッコよく引き受けてくれたのに「いやー、警察から捜査協力頼まれちゃったから無理んなったわ」とかなんとか。

先日の事件の影響だろう。

警察が捜査本部を立ち上げて本格的な捜査に動いたとみえるが、そのせいで俺の情報源が絶たれてしまった。おまけに、捜査に携わる関係上先生が俺に指導する時間も減った。

 

そして二つ目。

俺が最もヤク売り手の候補として注目していたヤクザ組織の天忠會。鳴羽田の近隣にあったそいつらの事務所が壊滅した。二日前のことだ。

先生の話ではゴリゴリの武闘派だったらしいが、外出していた一部の構成員を除き、ものの見事に斬殺されたらしい。目撃者によると現場は血の海、地獄絵図だとか。恐ろしい話だ。

 

この事件に関係した内部抗争ではないかと思ったりもするのだが、事件後に警察が立ち入ったにも関わらず薬物の取引に関する報道は出ていない。十中八九多分空振りだろう。

仮にかかわっているとしても末端も末端。

むしろ、縄張りで出回る違法なヤクを取り締まろうとして、事件の首謀者に消されたのでは?と俺は推測している。

 

そんな訳で、先生という情報源が断たれたうえ有力視していたホシも外れとなり、俺は完全に事件の蚊帳の外に置かれてしまっている。

 

正直、結構焦っている。

 

未来に原作がある以上、俺が介入しなければ自然と解決するのだろうという目算はある。

だが、何度も言う通り、俺は少年漫画的勝利という奴をあまり信用していない。彼らは運とか奇跡とか閃きとか、そういうものに頼りすぎだ。お話として読む分には熱いが、それに日本の未来を賭けなければいけない身としては、もうちょっと余裕をもって立ち回ってくれと説教の一つも垂れたくなる。

俺一人の影響など微々たるものだろうし、変わらず奇跡を引き寄せて勝ってくれればいいが、その微々たる影響でも成立しなくなるのが奇跡というものだ。

出来るなら介入して、いい感じに物事が動くよう誘導したい。

 

したいのだが、生憎と俺はこのイベントをどこへ持っていけばいいのかを知らない。

時系列的にこの事件を原作に組み込もうと思えば、誰かしらの過去編ないしは劇場版のプロローグ的ポジションになるのだと思う。

しかし、過去編だとすると候補が多すぎて誰のものだかわからないし、劇場版はそもそも一つも見ていない。

 

まぁ、単なる俺の考えすぎで、なんの変哲もない事件、という可能性もそれなりにあったのだが、先日の大規模発生のせいで原作イベントである疑惑が俄かに深まっていることだ。

というのも、先の突発性ヴィランの大規模発生時に事態収拾に乗り出したヒーローの顔ぶれがあまりに露骨だったからだ。

 

この辺りを縄張りにしているエンデヴァーやインゲニウムは当然として、ベストジーニスト、イレイザーヘッド、プレゼントマイク、ミッドナイト、13号、スナイプ、デステゴロ、そしてオールマイト。正直名前を忘れかけていたヒーローもいるが、原作でも見たことのあるヒーロー達がこれでもかと集結した。

正直、この事件は見た目のインパクトや話題性こそデカいが、元が暴走した市民でしかないので名のあるヒーローが集まるような事態ではなかった。

それなのに、普段の管轄を越えてこの集まりよう。もう読者へのファンサ目的の集まりだと疑うほかない。

まぁ、エアジェットとか、それこそ先生とか全く見覚えのないヒーローも参加していたが、それにしたって露骨だ。

 

となると、この大規模事件を契機として徐々に事件は凶悪化、誰かが捜査するというカタチで過去編が山場に・・・。メタ視点では、そんなシナリオが描けそうな状況である。

 

で、あるのだが。

そこから先が全く分からない。

 

貴重な情報源である先生が口を閉ざしてしまった今、ここから先に思考するピースが俺には無い。こうして調べものをしちゃいるが、事件解決の糸口がニュースから転がり出てくるなど、少年漫画的にナッシングだ。事件はいつだって現場で起きているのである。

 

となると、もう俺自ら動くほかないのではあるが、現状俺の知っているアテは残り一つ。

 

ホッパーズ

 

違法な薬を取り扱っているというチンピラ兄弟。

ホッパーズで調べれば普通にホームページがあったので、店に行くこと自体は難しくない。

廃墟の多い地区にあるようで、子供が訪れるのはちょっと怪しいが、表向きはリサイクルショップということだったし、美月へのプレゼントを探している、などとカバーストーリーを用意していれば多少怪しまれてもごまかしは効く。入り込んでちょっと波導で探るぐらいはできるだろう。

 

とはいえ、あんな話をした後なので先生がとっくに調べに入っているはずで、その後も薬の流通は続いている。

捜査途中かもしれないが、その場合は俺が立ち入ることで先生が動かざるを得なくなり、余計な変化を与えかねない。

そんなわけで、俺も軽々しく近づくことはできないでいる。

 

『(行くか、それとも大人しく待つか・・・ん~~)』

 

何も考えず動いてしまいたい気もするが、動くことで余計な影響を与えたくもない。

進むも地獄、待つも地獄。どちらにせよ俺の心理的負担は似たようなものだ。

そんな風にうんうんと悩んでいるときだった。

 

「あ、やっぱここに居た。大神君!」

『ん?・・・委員長』

 

俺のクラスの委員長、名前は確か赤外(せきがい)・・・なんちゃらさんが俺を呼んでいた。

図書館なのに大声を・・・と言いたいが今は別に俺以外に客はいないので構うまい。

彼女は、俺を見つけるとこちらに速足でやってきた。

 

「良かった、まだ居て」

『珍しいなこんな時間に。委員長、塾はいいのか?』

「え?ううん今日は無いの」

『そうなのか?ならいいけど・・・俺に何か用?」

「うん。今帰ろうとしていたところだったんだけど、玄関で大神君を探してるって人に会ったの。それで、まだ居るかと思って」

『俺を?・・・どんな人?』

「えっとね、ピンクの髪で眼鏡を掛けた人よ。制服を着ていたし、中学生じゃないかな」

 

中学生が俺を?

中学生とかかわりなどないはずだが、卒業生とかだろうか?

それにしたって俺に会いにくるような人は記憶にないが・・・。

 

『名前とか言ってた?』

「あ、ごめんなさい、聞いてないわ。でも玄関で待ってるって」

『そっか』

 

感知領域を玄関の方へ広げる。下校のタイミングは過ぎているので、学校自体人の気配はまばらだ。俺を待っているとなれば、見つけるのはたやすい。

玄関脇に所在なさげに佇む女子が一人。

メガネしてるし多分この娘だろう。

 

『その人って、こうボリュームのある感じの髪型?』

 

念のため、身振りで容姿を確認する。

 

「うん、そんな感じだったよ。知り合い?」

『いや、今見た』

「この距離でも見えるの?」

『うん。直線距離なら大したことないしね』

「へぇ、凄いなぁ・・・」

 

直線距離なら100mもない。波導は障害物の影響を受けないし、この程度なら造作もない。

そういえば委員長も視覚系の感知タイプだったか?まぁ、どうでもいいが。

 

今はこの俺を探しに来たという女だが、マジで誰だ?パッと目につくような異形もないし、顔の感じも見覚えがない。

多分三つ四つ年上だと思うが、そもそもそんな年代の人間とは殆どかかわりがない。

だがまぁ、呼んでいるというなら無視して帰るわけにはいかんだろう。

 

『分かった、帰るときに会っておくよ。伝えてくれてありがとう』

「ううん。案内しなくても大丈夫?」

『うん、顔もわかったからから。本の片付けもあるし、もう大丈夫だよ』

 

そう口にしつつ、机の上に広げた資料を片付け始める。

 

「そっか。じゃあ、また明日ね」

『うん、また』

 

じゃーねー、と言いながら委員長は去っていく。

それを見送り、俺は机の上を片付けた後に玄関へ向かった。

 

 

 

「あ、ホントにいた。良かった、帰って無くて」

 

玄関から出ると、件の少女が俺に話しかけてきた。声の方を振り向けば、先ほど確認したのと変わりない──当然だが──見た目。

波導越しとの違いは、ピンクの髪色が確認できることぐいか。

改めて見ても、そのド派手な髪色を覗けば地味で印象に残らない感じの娘だ。

 

『僕を探していらっしゃったようですが、どちら様でしょうか?』

 

とりあえず悪人ではないようなので、丁寧な対応を心がけた。

のだが、

 

「あ、あれ?アタシに見覚えない?」

『はい』

 

知らんもんは知らん。

誰だお前。

 

そんな猜疑の視線を向けると、なにか想定と違ったのか慌てだす少女。

 

「ほ、ほら、この前会ったじゃない、アナタ猪男に襲われてた子でしょ!?」

『猪・・・?』

 

猪と言えば、以前ヤクザの事務所を覗きに出向いたとき、俺に突進してきたあのヤク中だが。

と、そこまで考えて思い至った。

 

『あぁ、痴女の』

「誰が痴女か!」

 

失礼、つい本音が。

そうだ、確かにあの時”苦労マン”を介護していたあの改造スク水の女子も、ピンクの髪をしていた。

正直あの時はテンパっていたし、どちらかと言えば”苦労マン”の方に意識を配っていたので顔を覚えていなかった。まぁ、覚えていたところで、このスッピンに近いと思わしき顔と、あの時のばっちりメイクして着飾った格好が結びつくとも思えないが。

あれか、顔を作るとはっちゃけてしまうタイプの人なんだろうか?

 

「やっぱあの芸風間違いだったのかなぁ」とかぼやいてらっしゃるが、そんなもんは知らん。

だが、先生から”苦労マン”の話を聞いた後、片手間に調べてはいたので、その相方であるこの娘のことは一応知っている。

 

『失礼。ポップステップさん、で合ってましたか?』

 

たしかこんな感じの名前だったはずだ。

 

「あ、うん。あれ?アタシ名乗ったっけ?」

『いえ、以前ネットでお見掛けしまして』

 

フーリーアイドル、ポップステップ。

確かそんな風に名乗りながら、街中でゲリラ的にライブを行う、ローカルアイドル?であるらしい。

試しに動画も見てみたが別に歌が上手い訳でもなく、個性を生かしたパフォーマンスこそ派手だが、露出に頼った色物アイドルというのが個人的な印象である。

ただ、SNSを見る限りそのファン数は意外にも多く、100名くらいは普通にいた。

まぁ、ファン層は推して知るべしって感じだが、とりあえず人気ではあるらしい。

 

「そっか、なら話は早いわね。ちょっと君にお願いがあるんだけど、少し時間を貰えない?」

『お願いですか?』

 

その言葉に、俺は首を傾げた。

 

 

 

 

 

『つまり、僕の治癒能力で”苦労マン”・・・ではなくコーイチさん?の治療をして欲しいと?』

 

玄関前で話すのも・・・ということで近場の公園に移動した俺はポップが奢りといって差し出してきたお茶をいただきつつ、話を要約する。

 

「そういうことになるわね」

『なるほど』

 

その前に普段の活動やら、怪我を負った経緯やら色々と説明なんだか言い訳なんだかわからないような話があったせいで無駄に話が長引いた気がするが、要するにそういうことらしい。

 

苦労マンことコーイチ君がヴィジランテの活動で怪我を負ってしまった、命に係わる傷ではないが、普通なら病院に行くような傷だ。しかしヴィジランテ活動で負った傷を治すために病院に行くのは躊躇われる。本人は大したことないと言っているが心配なので、かわりに俺に白羽の矢が立った、と。

 

以前治療した時に俺は医者に行けと言ったつもりだったのだが、伝わっていなかったのだろうか?

俺を闇医者扱いとは、そういう個性だと思っているんだろうが、小学生に任せるかね普通。

 

『それで僕を。・・・名乗った覚えはなかったと思いますが、よく見つけられましたね』

「そのランドセル学校指定でしょ?後は青い毛の犬っぽい子知りませんかーって聞いて回ってたのよ。そしたらさっきの白い髪の子が、それなら大神君ですねって」

 

ランドセルか。それはあまり考えていなかったな。

見た目の方も、青い奴や犬っぽい奴なら日本全国いくらでもいるが、この辺りの人間で学校まで絞れてるとなれば、探すのにそう手間はかかるまい。

 

しかし委員長よ、俺の名も知らぬ人間に俺のことを紹介したのか。なんと迂闊な。

相手が犯罪者だったらどうするんだ全く。

 

いや、ヴィジランテだし犯罪者か。

 

「それで、どうかな?」

『・・・そうですね』

 

正直、闇医者扱いというのは困る。

俺は医療行為に関する免許を持っていないからだ。

この前は青痣という大したことのない怪我だったし、個性使用許可を持つヒーローの監督下にあった──と思っていたので良かった。

個性による怪我の治療がどの法によって規制されるべきかは未だに法解釈による議論が分かれる部分で、ぶっちゃけ俺もそこまで理解できていないのだが、一切の法的問題を解決しようと思えば、医師免許と個性使用許可の両方が必要になる。

ただ、「個性の使用なんだから、個性使用許可のある人間の指導の元でならOKでしょ」という社会の圧力に負けた感のある判決も出ていたりはするので、ぶっちゃけ後で変な不調が出て患者側に訴えたりされなければ無問題、というのが世間一般の認識である。

 

で、俺がそのコーイチ君を治療するのはどうか。

技術的な問題に関しては無い。ただの裂創とのことなので、余裕で治療可能だ。

 

だが、制度的には大問題だ。

俺だって、目の前にナイフの刺さった人間が転がっていれば、色々無視して助けようとするだろうし、世間もそれを咎めるほど心は狭くないだろう。

だが、既に窮地を脱していて快方に向かっている人間のところに態々出向いてまで治療するとなると、ちょっと言い訳のしようがない。

 

断るのが安牌ではある。

そもそも、彼らのお願いには道理がない。

彼女もそこまで無理して頼み込んでいる様子ではないし、聞く限り寝てれば普通に治る怪我なので、恨まれるということもないだろう。

 

だた、彼女達には近づくだけの価値がある。

 

”苦労マン”のことは調べた。だからこのポップステップのことも多少は知っている。

そして俺は、彼らがいま進行している突発性ヴィラン事件の多くに関与していることも知っている。

 

SNSを探せば、彼らに関する情報は割と簡単に見つかる。

俺と会った時のように”苦労マン”が突発性ヴィランに追いかけられている姿や、ポップステップが避難指示をして回る様子、そしてもう一人の”拳骨ジジイ”と呼ばれる大男がヴィランをボコボコに殴りつける映像など。彼らのヴィジランテとしての活動は各所で目撃されているからだ。

ヴィジランテなのだから、義憤の心から突発性ヴィランに相対するのは当然といえば当然で、その様子が市民によって拡散されるのもまた当然である。

 

そんな彼らは、俺にとって先ほど散々悩んでいた今回の事件解決への糸口になり得る。

ヒーローではないがそこそこ事情に精通していそうで、公的な縛りが無いゆえに身軽に動ける。好きに動かせる手駒とはいかないが、以前観た”苦労マン”の人格的に()()()()()()を無視するタイプではない。

治療という恩があれば猶の事。

 

ヴィジランテという緩衝材をはさむ形での介入。

これであれば、シナリオへの影響を抑えつつ事態の変化を観察することができるのではなかろうか?

いざとなれば、”苦労マン”を動かして事態の収拾にも動ける。

 

『(──アリだな)』

 

要所に介入しうる筋は残しつつ、俺の存在を薄めることができるというのが最高だ。加えて、俺と彼らの関係は俺の自主的な協力によってのみ成立する以上、切ろうと思えばいつでも切れる。

なんだ、素晴らしいではないか。

 

懸念すべき点は、治療した後に裁判沙汰を起されることくらいだが。

改めてポップステップを観察する。

 

「?」

『(──まぁ、それはないか)』

 

この娘も”苦労マン”ほどではないが、人格は善良。

自ら招き入れておいて、俺を陥れるような真似はすまい。

まぁ、最悪後で彼らの気が変わったとしても、相手はヴィジランテという名の犯罪者。対する俺は学校でも大人しい優等生で通った幼い少年だ。脅されていたとでも主張すれ大衆は俺の味方である。

どうとでも挽回できるだろう。リスクは0ではないが、巻き返せる範疇だ。

そもそも、問題になりそうな治療はパスすればいい。

 

他に懸念点はなくもないが、・・・まぁそちらはさして重要な問題でもない。

 

となれば、断る理由はないか。

 

『分かりました。僕で良ければ、協力しましょう』

「ホント!ありがとう!」

 

パァっと喜びを顔に出すポップ。

よほど相方のことを心配しているようだな。

まぁ、ヴィジランテ活動ともなれば傷を負うことも多かろうし、ヒーラーという保険を手に入れられたことは彼女にとっても僥倖だろう。

だからといって気軽に頼られても困るが。

 

「よしッ。なら航一の家に行きましょう!」

『ええ』

 

返答を聞くと、気が逸っているのか速足で駆けだすポップステップだが、俺はそこでハタと立ち止まる。

 

『あ、すいません。少々お待ちを』

「え、何?」

 

スマホを取りだし、確認する。

時刻は・・・17時40分。

不味いな。

今日は調べものしてそのまま帰るつもりだったからな。

長々と喋り過ぎた。

 

『すいません、先に連絡を入れさせてください』

「もしかして、なにか予定とかあった?」

『いえ、予定は無いです』

 

放課後の予定など、道場以外ない。

ただ、

 

『うち、門限六時なので』

 

我が家には門限がある。

 

「あぁ・・・そっか、小学生だもんね

 

そう、俺は小学生。

放課後に何処かに行くには、保護者(美月)の許可が必要なのだ。

 





赤外可視子
個性:《赤外線》
原作OVAにて登場した子。学校の風景を描く用にキャラが用意したかったが、使うかわからんキャラのために名前とか個性とか考えるのがめんどくさかったので出身とかの設定が無かったこの子を採用。仮免の人が学年同じなら良かったんですけどね。
個性の詳細は不明だが、赤外線を感知しているなら障害物を無視して範囲のものを感知する凛勇が圧倒的に格上なので、やや憧憬の目線を向けている、という設定。
OVAの該当話を書く気が湧けば、また出るかもしれない。
特にヒロインとかではない。

個性による治療
常識的に考えれば絶対法規制されているはずなんですが、その場合映画二作目のゲストキャラである活真君がお縄になってしまうので、訴えられなきゃセーフくらいのファジーな感じに。
そうであっても法の僕たるヒーローの卵が無法を見過ごすのはどうなんだろう、と思わなくもないですけど当人たちが割と無法をやらかすタイプなので誰も問題視してないんですかね。
非侵襲的な手法ではありますが、明らかに患者の生体機能に影響を与えているので医療類似行為には絶対なるよなーとか個人的には思ってます。

闇医者
ルカリオはバチバチの戦闘系キャラですが、ルカリオの能力の中で一番価値が高いのは【いやしのはどう】かな、と思っています。果たして最も清潔さが求められる医療の現場に、全身毛だらけの生物が踏み入れるのか、というとどうなんだろう?って感じですが。まぁ、頭にキノコ生やした医者(31巻)がセーフならセーフかな、という気もしています。あの世界の衛生観念が分からん。




誤字報告してくださった方、ご協力感謝します。

ところで、本作中ではざっくりと、ワザは【ひらがな】表記、現象を指し示す場合や他人が口にする場合なんかは漢字で表記、といた風に区別しているんですが、全部漢字の方がいいって人いますかね?いたら感想で教えてください。

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