たとえ勇者に非ずとも   作:そば茶

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第八話 調査

「ハッ──ハッ──」

 

コーイチ君の治療、もといナックルダスターとの交渉から二日後の早朝。

俺は、朝日が昇ったばかりで少し湿気っぽい初夏の風を切り、走っていた。

 

ランニングという奴だ。

 

本来、俺に走り込みなどという原始的なトレーニングは必要ない。

生体機能に干渉する波導の能力をフルに生かし、波導で筋繊維の破壊と再生を繰り返せば一日で結果にコミットできる。また、造血細胞を日常的に強化していれば高山トレーニングと同様の成果を得ることも可能だ。

そもそも、公道には法定速度──超人社会は人間にも適用される──がある以上、大して負荷をかけられるわけでもない。ランニングという行為は、俺にとっては単に時間と体力を浪費するだけの無駄でしかない。

 

だが、ナックルダスターに約束した情報提供のカモフラージュとしては適当な行為だった。

 

俺は基本的にこの糞見たいな治安の街中を出歩きたくないので、必要が無ければ外出しない。

故に、俺が日常の中で動く範囲は家⇔学校、学校⇔道場、道場⇔家の三択となり、その中でフルに波導の感知を広げたところで大した広さにはならない。

ナックルダスターの話を整理すれば薬の販売元はヤク中達の動向に注目しているらしい。

ならば、特定の地域でだけ検挙率が上がった場合、販売元はどう思うか?かなりの確率で、情報提供者の存在を疑うだろう。

それが地域の裏事情に精通した奴、とか勘違いしてくれれば結構だが、ここは超人社会。何か変なことがあったらまず個性を疑うのが鉄則だ。感知系の存在が疑われる可能性は高い。

 

この辺のヒーローにも俺に似たことができるヒーローもいるので、感知役の存在が透けること自体は左程問題視していないが、その活動圏がまんま俺の生活範囲というのはマズイ。

俺はあくまで匿名かつ正体不明の協力者でなければいけないのだ。

 

そこで、ランニングである。

これならば広範囲を活動する理由として自然だし、まとまった時間を取れる。

あと、時期的に美月を説得するのが容易いタイミングだったというのもある。

 

ちょうど2か月後、俺の学校では運動会がある。

俺は完全な異形型なので通常の競技には公平性とか安全性の問題で出場できないのだが、代わりに異形対抗の競技には毎年クラス代表として出場している。

まだ力の使い方が下手くそだった一年二年の時はともかく、三年からは負けなしで来ているので、クラスからの期待も厚く、美月も俺の活躍を毎年大変楽しみにしてくれている。

彼女は俺が肉体改造しているのでトレーニングが必要ない、ということは当然知らないので、運動会に向けて特訓がしたいと一言言えば、「がんばってね」と快く送り出してくれた。

 

とりあえずこれで、調査活動自体は問題ない。

後は問題になることと言えば、俺が見つけたヤク中をどこまでナックルダスターに報告するかだが・・・。

 

俺の独断と偏見に基づき、ヤク中の屯してそうな廃ビル街の近隣を掠めるようなコースを走る。

走りながらだとあまり感知範囲を広くできないが、それでも1ブロック2ブロック先を見る程度なら造作もない。

バーやライブハウス、麻雀部屋、漫画喫茶、銭湯。そういった可能性な高そうな場所を重点的に調べていく。

 

今回は時間が早朝ということもあり、まずもって感知できる人間自体がそう多くはないが・・・、

 

「(居るなぁ結構)」

 

想定を上回るペースで見つかるヤク中。

三十分程度走っただけでも、既に6名。

各々症状の重さに差こそあるが、全員に舌の欝血と、肝機能低下の所見が見られる。

また、使用を繰り返していると思わしき重傷者にいたっては、その個性因子らしき器官が大きく壊死しかかっているのが見て取れる。

トリガーにより過剰な力を開放し衰弱した器官を、より大量のトリガーで強引に賦活する。そんな無茶を繰り返したのだろう。体には既に相当な負荷がかかっているはずだ。自業自得とはいえ、その末路を考えるだけの脳があれば、彼らはああはならなかっただろうか。それとも分かっていてなお手を出さずには居られなかったのか。

哀れというかなんというか、救いようがない。

外見的特徴をメモにおこしつつ、ひとまずランニングを続ける。

 

「(問題はこれを()()()()オッサンに報告するかだが・・・)」

 

俺が発見したヤク中を全て報告する義務はない。

事件の解決速度を緩めようと思えば、報告はこのうちの一人二人にとどめるということもできる。

オッサンは俺の個性は知っているが、具体的にどう感知できているかまでは知りようがない。俺がこれ以上は無理だと言えば、それが()()になる以上、追求したところで無駄なのだ。

流石に0人ともなれば向こうも強硬な手段に出ないとも限らないが、それほど時間が取れないとはあらかじめ伝えている。定期的に報告が上がってさえいれば向こうにとってもプラスだろうし、ことを荒げるようなことはあるまい。

 

問題は、一人報告しようが全部報告しようが変わるもんは変わるので、どっちがいいとは断言できないということ。

確かに一人の方が影響は少なくなるだろうが、それが回り回って悪い結果に繋がらないとは言い切れない。むしろ、ガンガン見つけまくって黒幕が早く尻尾を出すようにしたほうが有利な可能性もある。

逆もまたしかり。

 

走るペースを維持し、掌中のスマホを弄びつつ思案する。

 

どちらがよいと判断するかは俺の心持次第。

消極的な手段で()()()()()に近い形を狙うか、積極的に早期解決を狙うか。

 

先日の別れ際、ナックルダスターに言われた言葉を思い出す。

 

──蜂に注意しろ。

 

その言葉の真意は語らなかったが、あまりに意味深な言葉。

間違いなくオッサンはこの事件に対してかなり深いところまで進んでいる。

であるなら、やはりあのオッサンへの協力は、このイベントに大きな影響を与えると推測される。

 

やはり慎重路線を取るべきか。

そんなことを考えていると、見覚えのある波導が感知に引っ掛かった。

 

「──ン?」

 

前方200mほどの位置。

かなりのスピードで接近する気配。

 

気配といい、移動するときの体勢といいもう間違いなく彼なのだが、

おかしいな・・・彼は今日ここに居てはいけないはずなのだが・・・。

 

「(これは、少しお説教だな)」

 

そう息巻くと、俺は道の真ん中に仁王立ちした。

 

 

 

◇  ◆  ◇  ◆

 

 

 

朝のランニングは灰廻航一の日課だ。

 

それは、体を鍛える行為であると同時に、個性を鍛えるための行為でもある。

昼や夕方ごろであれば人の行きかう路地も、早朝であれば人の気配はない。

 

これならば、存分に個性を使い走り回ることが出来る。

普段から街中で個性を使ってはいるのに何の配慮かと思うかもしれないが、本人にしてみれば人を助けるために個性を使うのと、個性を使うために個性を使うのことは、似ているようで違うのである。

 

そんなわけで、変なところで生真面目な灰廻航一ことクロウラーは、日々早起きしては街の路地を高速で這い回るのだった。

特に最近は、偶然知り合いランニング友達となった”インゲニウム”からのアドバイスで個性のスピードに磨きがかかっている。

時折道を蛇行してみたり、速度を付けたまま曲がったり。人が居たらとてもできない危険な走り方を試す場として、朝方の空いた道はクロウラーにとっても貴重なのであった。

 

とはいえ、危険な走行であることには変わらないので、人が居れば控えねばならない。

常に進行方向への注意は欠かさない。

猪男の際の失敗の経験も踏まえ、コーイチはしっかり前方を確認しながら走っていた。

 

そのために、早い段階で進行方向に人影があることに気づいた。

 

斜めに差し込んだ朝日のせいで、地に伏せた姿勢のコーイチからはその姿は良く見えない。

だが、それほど背が高くない人物ではないことは分かった。

 

何となく既視感のある光景。

何故か、相手は歩くでもなく走るでもなく、道の真ん中で仁王立ちしている。

違和感を覚えつつ、やや速度を緩め近づいていくと、ようやくその顔が見えた。

相手は、コーイチの顔を見ながら牙を剥き出しにして笑っていた。

 

『おはようございます。一昨日ぶりですね、コーイチさん』

「おはよう。えっと、大神君──だったよね?」

『はい、正解です』

 

当然、見覚えはあった。

大神凛勇。

以前助けようとして失敗し、つい一昨日足の怪我を治してもらった相手だった。

一昨日はポップステップと喧嘩したために、治療が終わるとさっさと帰ってしまい会話する時間はあまりなかったが、それでも印象に強く残っている。

 

互いに知らぬ仲ではない。

たまたま朝あって挨拶を交わすくらい当然のこと・・・なのだが。

コーイチは、彼のテレパシーから不思議と嫌な予感を覚えた。

 

自分はなにか重要なことを忘れている。

そんな気がする。

 

しかし、それがどうにも思い出せない。

牙をむき出した彼の笑顔が、獲物を見つけた獰猛な獣のソレに見える。

 

『コーイチさんは朝から何をされているのですか?』

「ランニングだよ」

『ランニング。なるほどなるほど、それは精が出ますね』

「え、そ、そうかな」

 

なんだろう。

言葉がどこか刺々しい。

もしかして怒ってる?

だがどうして?

 

『ええ、大変元気で結構なことなんですがねコーイチさん。僕は今割と怒っています、何故だかわかりますか?』

「えーと、・・・なんでかな?」

『──ホウ』

「うっ」

 

凛勇から放たれる謎の威圧感に、思わずうめく。

やばい、何かを忘れている気がする。忘れている気がするのだが、全く思い出せない。

だが、間違いなく凛勇を怒らせる何かがあったはず、そう必死に頭を捻るコーイチに呆れたような視線を向けつつ凛勇は言った。

 

『”念のため二・三日は安静にするように”。僕はそうお伝えしたはずですが?』

「あー・・・・」

 

そう言われて思い出す。

彼は確かにそう伝えていた。

だがコーイチは、「痛みも傷跡も無くなったし違和感を感じない、心配性だなぁ」といった具合に軽く流して綺麗さっぱり忘れていたのだった。

それも、単に歩き回っているだけならともかく、個性をフルに使ってランニングときた。苛立ちの一つもするだろう。

 

『少しご一緒しても?』

「・・・はい」

 

少年の放つ身の丈に合わない迫力を前に、コーイチは頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

『まず世間一般の人間は勘違いしていますが、治療の個性といってもあくまでその治療効果は患者の細胞が有する再生能力を促進や、再生能力が機能しやすいように体を整えた結果として起こるものであって、”傷をふさぐ”といった概念的な効果を実現する能力ではなく、元々ある機能の延長の結果しか起こせません。ですから、傷を塞ぐと簡単に言っても、そこには細胞の分裂・成長のサイクルが前提としてあるわけで、その過程で消費されるエネルギーや物質が無から湧いてくるわけではありませんし、排出される毒素なんかもあるわけです。むろん、治癒の工程を高速化しているわけですから通常の医療では治らないような深い傷でも治せるというメリットはありますが、それはそれでデメリットのある事なんです。わかりますか?』

「──え、いや・・・なんでだろう」

『いいですか、細胞分裂を高速化して傷を治すということは、数日から数か月かけてゆっくり行われるはずの工程を数分から数秒、つまり数万倍に加速しているんです。本来各細胞同士が連携を取り合って、少しづつ進める工程をですよ?必要以上に()()()()()存在しないはずの場所に別の組織が浸食してしまったり、未発見だったガンが高速で成長して重篤化したという例だってあるんです。治療後にチェックは入念にしていますが僕の目でも細胞レベルは見えませんし、知識は独学です。誤って正常と判断する可能性だってあります。その場合あなた自身の感じる違和感が────』

「(長いなぁ)」

 

走りながら話しましょう、と言われ連れ立って走り出した後、コーイチは怒濤の説教を聞かされていた。

治癒の原理やら治癒の個性によって起きた過去の事件や訴訟、その顛末。どこで調べたのかそんな事例を引き合いに出しながら、いかにコーイチの行動が軽率で弁えていないのかという話を、延々と続けている。

おまけにテレパシーという会話方法であるせいか、猛烈な勢いで、しかも走りながら喋っているのにも関わらず息継ぎする様子すらない。

自分が悪いという自覚はあるのだが、如何せん長い。

流石にコーイチもうんざりするのだが、そんな感情を抱いたとたん、

 

『──ちゃんと聞いてます?』

 

と、ジトっとした謎の威圧感を叩きつけれ、コーイチとしては背筋を正して傾聴する他ない。

 

『──から、初めから最低限必要な療養期間を提案しているわけです。今回は僕が見て異常が無かったから良しとしますが、次からはしっかり僕の言ったとおり休んでください。いいですね』

「・・・はい」

 

そうして一頻り語り終えると、凛勇は説教を締めくくった。

実家の母も厳しく、口うるさいタイプだったが、彼ほどじゃない。

コーイチは内心でそうため息を吐いた。

 

 

 

説教も終わって暫く。

雑談をはさみながら歩いていると、唐突に凛勇がテレパシーを飛ばしてきた。

 

『そういえば前回聞きそびれたんですが、コーイチさんは何故ヴィジランテになられたんですか?』

「え、俺?」

『はい』

「どうしてか。んん~、どうしてっていうと難しいけど」

 

ヒーローへの憧れ。

ヒーロー科への受験の失敗。

上京してからの自主的なボランティア活動。

ポップステップや師匠との出会い。

そういったものをかいつまんで話した。

 

『なんというか、結構波乱の人生を歩んでますね』

 

果たして、凛勇はコーイチの話に驚いたようだった。

そうかなー、などと照れて見せるが、受験の失敗や師匠との出会いは客観的にもなかなか無い事件だと、改めて自分の人生を振り返ってみれば、確かに昔の自分もこうなるとは思っていなかったに違いないと一人得心する。

 

『よくナックルダスターさんについて行こうと思いましたね』

「いやー、付いていくっていうか、殆ど強引に巻き込まれた感じだったけどね」

『それでも、本気で追い払おうと思えば追い払えたでしょう?』

「それはまぁ、そうだけど」

『なぜ、そうしなかったんです?』

「何故って──」

 

思わず横を振り向けば、凛勇がコーイチの顔を見ていた。

どう答えたものか?そう思案しつつ、コーイチは言葉を紡ぐ。

 

「──確かに、師匠って乱暴だし、俺ん家の窓割って入りこんだりとか、間違ってるところもいっぱいあるけど──」

 

言葉にしながら、コーイチはナックルダスターと出会ってからの数か月を思い出す。

最初は、無資格な上「悪党を殴るとスカッとする」などと宣う、ヤバいオッサンという印象だった。

以降も、ナックルダスターに対する印象が変化したかといえばそんなことは無いのだが、それでも尊敬できる部分はあった。

そしてなりより、彼に付いていくことでコーイチは実感した。

 

ずっとヒーローに憧れていた。

一度挫折して、諦めたはずだと思っていた夢をナックルダスターはそんなはずがないと一喝した。

そしてそれは紛れもない事実で、自分の手で人を救ってみて分かったのだ。

 

「やっぱ、人助けっていいなって思ってさ」

『──人助け、ですか?』

「うん」

 

ほんの、数か月前の出来事を思い出す。

一度目の時は、ほとんど訳も分からず無我夢中だった。

 

「ゴミ拾いとか、道案内が嫌だったわけじゃないよ。でも、自分の手で人を助けたとき、凄く疲れたし、死にそうにもなったけど──やって良かった、って思えたんだ」

 

でも、二度目の時。

超大型ヴィランに掴まれ、空中に放り出されたポップステップを助けるため、空に飛んだあの時だ。

無我夢中だったのは同じだったが、助けるために()()()()と強く思った。

そのあとすぐに死にそうなほど後悔することになったが、それでもあの時飛んで良かったとコーイチは思っていた。

 

「師匠はそれを教えてくれたから。俺が師匠についてく理由は、そんなところかな」

『────』

 

コーイチの言葉に、凛勇は閉口した。

その様子は、何かを思案しているようにも見え、コーイチは言葉をかける。

 

「どうかした?」

『・・・いえ、大丈夫です。貴重なお話、ありがとうございました』

「そう?」

 

 

そんなコーイチに対して、凛勇はなんでもないとばかりにいつもどおり丁寧な言葉を返した。

そして、不意に立ち止まって言った。

 

『僕、こっちですので。これで』

「ああ、うん。それじゃ『それから』──」

 

家に帰るのだろうと別れを告げようとコーイチが口を開くと凛勇が言葉を続けた。

 

『もし個性を強化したいなら、僕に相談してください』

「え?」

『今日は個性のトレーニングのためにランニングをなさっていたんでしょう?』

「そうだけど・・・」

 

それが?とばかりに首を傾げたコーイチ。

 

『そのトレーニング、間違ってますよ』

「ええ!?」

 

物心ついてからというもの続けてきた個性の鍛え方を間違っていると評され驚愕するコーイチに、苦笑しながら凛勇は続けた。

 

『コーイチさんの個性は、手足の器官から推進力を生じるものですよね?』

「うん。多分、そうだと思うけど」

『なら走るより、重り背負って上に飛んだ方が効率的です』

「上?」

『はい』

 

凛勇の言葉に、自分の個性は《滑走》だと思ったコーイチだったが。

 

『まぁ、騙されたと思って試してみてください。きっと飛べますから。それじゃ、僕は学校があるのでこれで』

 

そう言い残し、凛勇は走り去ってしまった。

 

「上って・・・」

 

コーイチは自分の掌を見つめる。

 

──きっと飛べますから。

 

凛勇の遺したその言葉が、やけに耳に残った。

 

コーイチの憧れるヒーローの姿は、常に空にある。

故に、自身も飛べるなら飛んでみたい。

 

「ま、まぁちょっとくらい試してみよう、かな?」

 

とはいえ、「なんかこの年で必殺技の練習してるみたいでちょっと恥ずかしい」なんてことを思ったり思わなかったりもするのだった。

 

 

◆  ◇  ◆  ◇

 

 

ヴィーーンと、マナーモードにしたスマホが、ナックルダスターのポケットの中で震えた。

取り出した画面に表示されたのは、覚えのないアドレスからのメール。

 

「ふん・・・捨てアカか。用心深いことだ」

 

いくらでも使い捨て可能なフリーメールから届いたと思わしきメールの件名には、”情報提供”と端的な文字。

スクロールしていけば、先日捕まえた情報提供者”大神凛勇”からのメールと分かった。

 

「あれから二日、大したものだ」

 

届いたのは昼。

分かれたのが一昨日の夜であったことを考えれば、実質的な調査期間は1日もない。

それにも関わらず、メールには実に()()()ものトリガー使用候補者の外見・発見場所・時間の情報が記されている。中には身体構造から推測される個性やその攻撃手段に至るまでの情報が記載されていた。

正に値千金の情報。

 

今までの怪しい奴に総当たりしていく方法では到底なしえない発見速度。

初回ということもあり、今後はペースも鈍っていくことは想定されるが、一度目にこれほどの情報を提供してきたという事実に、ナックルダスターは内心で歓喜した。

 

「思ったより使えそうだな」

 

ともすれば、刺客の可能性もある少年は、情報を過少に、あるいはダミー情報を伝えて来る可能性が高かった。

そうでなくとも、消極的な態度だったのだ。調査自体をほとんど行わないという可能性も考えられた。

だが、結果はこれだ。

仮にこれがダミーの混じった餌の類であったとしても、常識的に考えれば半数程度は本物だろう。

つまり最低でも1/2。多少調査の手間はあるが、普段のそれを思えば望外ともいえる確率。

 

「一番近いのは、コイツか」

 

いつも通り、彼──ナックルダスターの代名詞ともいえるメリケンサックを装着する。

与えられた情報をもとに戦術を構築し、使えそうなアイテムを袋に詰めて担ぐ。

 

「──行くか」

 

いつも通りの変わらない姿。

だが、確かなターゲットを手に入れたことで、その心の内にはいつも以上の戦意が溢れている。

少しだけ速足に彼は進む。

 

「待っていろよ、ヴィランども」

 

この日、ナックルダスターは提供された情報をもとに8名の候補者を発見し、──8名のトリガー使用者を仕留めた。

 

それは、彼の活動開始以来、ダントツの戦果であった。





波導式トレーニング
筋繊維をぶっ壊し、即座に回復するという工程を延々と繰り返すことで数か月分の筋トレの成果を一日で得る「努力の過程?何それ食えんの?」なマンチキン的トレーニング法。デメリットは物凄く体力を消耗するので加減をミスると栄養失調で死ぬこと。
凛勇はこういったクソマンチ的トレーニングや体調管理の合わせ技で、常時理論値性能を維持しており、6V個体的なナニカとなっている。

コーイチ君
若いころからゴミ拾いや道案内をやっていたという関心な子供。緑谷君もオタクノートまとめてるだけじゃなくて、こういうことしてればもっと好かれてただろうになぁ、と残念でならない。かっちゃんのストーキングしてる場合じゃないですよまったく。
「全人類こんな感じならなー」と凛勇君が思うレベルの圧倒的善性のオーラを纏っており、凛勇君は普段感じてるストレスの反動で彼に甘い。それはそれとして、訴訟に発展しかねない危険で軽率な行為は断固として許さない。




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