9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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ソラ キ ク

 

「お前…………何言ってんだよ…………!?」

 

 頭では分かっていた。そうなんじゃないか? と予想もしていた。けれどやっぱり信じられなくて、こんな予想は外れて欲しくて。

 

 そんな願いは叶わなかった。兄である新海すらも天ちゃんのことを忘れていた。

 

「たった1人の妹だろうがぁぁっっ!!」

 

 もちろん自分のことを棚に上げているのは分かっている。事実俺だって忘れてしまっていたのだから。もしかしたらこの怒りは、俺に向けてのモノなのかもしれない。

 

 でも俺はそんなに人間が出来ていなくて、そんな正論よりも怒りと焦りが……恐怖と不安が勝ってしまっていて、気がつけば新海の胸ぐらを掴んでいた。

 

「お前が忘れるなよッ! あの子が産まれて今の現在(いま)までずっと強い繋がりがあったんじゃねぇのかよ!!」

 

「ウッ…………っ!!」

 

 俺の叫びを受け止めた瞬間、新海は頭を抑えて何かに苦しみ出す。理由や意味はわからなかったが、俺の直感があることを感じさせた。

 

「いつだって近くにいたんだろ!? 守ってやる為に家に泊まらせたんだろッ!?」

 

「うぐっ…………っ!!」

 

 頼むから…………答えてくれ……新海…………! 

 

「大切だから、あの時に火の海に飛び込んだんだろッッッッ!!!!」

 

「──────ッ!!」

 

 思い出せ…………翔ッ! 

 

「翔ッ!!」

 

 5秒ほど待っただろうか、今までずっと苦しみ続けていた翔は何かに吹っ切れたように、力なく腕を離した。

 

 その身体は震えている。

 

「ごめん…………()()()()……」

 

「…………ッ!」

 

 理不尽なのは分かってる。俺がこんなことを言える立場じゃないことも分かってる。

 

 けどあんまりじゃないか。酷すぎじゃないか。

 

 あの子は……ずっとお前の背中を追ってきてたんじゃないのか? ずっとお前を頼ってきてたんじゃないのか? 

 

 何をする時もお前ら兄妹は一緒で、いつも仲良くて、喧嘩ばっかりしてたけど…………揺るぎない絆があった。天ちゃんを見てるだけでそれは分かる。

 

 一日の会話の話題には必ずお前の話が出てくるし、自分がピンチの時にも真っ先に頼ったのはお前だった。

 

 その気持ちが何なのかは俺にはわかんないけど…………少なくとも、彼女にとってはお前が一番頼りになったはずだ、大好きだったはずだ。忘れて欲しくなかったはずだ! 

 

「そうかよ…………」

 

 もう仕方ない。覚えているのが俺だけなのなら、俺が何とかしないといけない。

 

 心の中で翔を諦めた俺は、そっと制服を掴んでいた手を離す。

 

「だったら…………俺が天ちゃんを助ける」

 

「そ……ら…………?」

 

「じゃあな」

 

 最後に気になる言葉を口にした翔を置き去りにして、俺は教室を飛び出すように出た。

 

 

 

 

《視点切り替え》

 

「そ……ら……」

 

 唐突に竹内から叫ばれた時、俺は何が何だかわからなかった。

 

 ただいつも通りに過ごしていただけだったんだ。でも、それには何かが欠けていた。

 

 するりと抜け落ちていた。

 

 本当に最初はその答えがわからなかったが、ほんの少しだけ脳裏によぎる。

 

 

 

 

 

 

 いつもウザイくらいに元気が良くて、めんどくさいほど生意気で。

 

 でもほんの少しだけ臆病で、実は気が弱くて。

 

 

 

 

 

 

 …………何なんだよ、これ。

 

 誰なんだよ、お前。

 

 そしてなんで…………俺は泣いてるんだよ。

 

 泣いたってしょうがない、どうしようも無い。何も変わらない。

 

 あの声をきっかけに、俺の頭の中に次々に何かが溢れ出す。

 

 それを忘れないように、一生懸命声を出して、魂に語りかける。

 

「そ…………ら」

 

「そ……ら…………」

 

「…………そ……ら」

 

「そ………………………………ら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………天」

 

 

《視点切り替え》

 

「はぁ…………! はぁ…………!」

 

 がむしゃらに走り続ける。

 

 とにかく走って走って走りまくって、街中をくまなく探す。

 

 どこにいても直ぐに見つけられるように、目を血眼にして探し回る。

 

「どこにいるんだよ……天ちゃん……!」

 

 いない…………

 

 

 

 

 

「どこなんだよ…………ッ!」

 

 いない…………

 

 

 

 

 

「どこに行ったんだよ!!!!!」

 

 いない……ッ! 

 

 

 

 

 

 

 あれからどれほど走り回っただろう。

 

 少しも休憩する間もなく、探し回っていたが…………どこにもいない。

 

 そして絶えずRINGで連絡をしているが…………一向に既読はつかない。

 

 スマホくらいは持っているだろうと思っていたが…………良く考えれば既読がつかないことは()()なんだ。

 

 それは朝のコンビニの件で想像できる。

 

 もう…………すっかり夕方だ。日が暮れ始めている。

 

 マジでどこに行ったんだよ………… 天ちゃん…………

 

 思いつくような所は全て行った。女の子が好きそうな服が売ってある店。近くにある公園。行きなれたであろう駅。もしかしたらと思っていて一度学園に戻ってきたし、1人になりたいとか思って隠れてしまっていないように路地裏もくまなく探した。

 

 でもいないんだ。どこを探しても天ちゃんがいない。

 

「クソっ! クソっ!!」

 

 その時、あんまりにも俺は焦っていたのか、何も無い場所で足元を躓いて転んでしまった。

 

 でも……全然痛くない。天ちゃんの気持ちを考えたらこんなもの屁でもない。でも…………見つけられない…………! 

 

 そんな自分が悔しくて、腹ただしくて、虚しくて、街中で転んだまま何度も何度も地面を殴りつける。

 

「ちくしょう…………ッ! ちくしょう……ッ!!」

 

 力いっぱい握りしめた拳から、滴る赤色を見ながら、自分の力の無さを呪う。

 

「俺は…………仲間1人も……………………救えない………………ッッ!!」

 

 何も知らなすぎる……! 天ちゃんが好きなところも、普段行くところも、どんな考えなのかも、俺はわからない……! 

 

 そんな時だった。転んでいる俺を見下ろすように、2つの影が現れたのは。

 

 

 

 

「こんなところで何してんだよ、大将」

 

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