9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
絶望の中、先の見えない暗闇にさまよっている俺に手を差し伸べてくれる影。
2つとも似たようなシルエットだ。
「うわっ……大将、アンタ右手血まみれじゃねぇか…………馬鹿なことしやがって……」
その声の1つはゴーストだった。俺の事を『大将』と呼ぶ奴は他にいない。
「ははっ! 馬鹿の契約者は更に大馬鹿だなぁ!」
もう1つの声も…………ゴースト……?
ゆっくりと顔を上げると、その影の先には《黒》と《白》の2人のゴーストがいた。姿形がほぼ同じの双子のような2人が。
「んだよ? オレの大将を馬鹿にしてんのか? あぁ?」
「そりゃあするだろ、1分1秒を急ぐこの状況でこんな無駄なことしてんだ。馬鹿以外の何者でもねぇ」
「テメェ……言わせておけばコノ────ッ!!」
「止めろ、ゴースト……」
目の前で口喧嘩をいきなり始める2人に一声かけて、とりあえず落ち着かせる。
理由は一つ。
「でもな大将、コイツ────」
「何も間違っちゃいないから…………」
この行動は無駄だ。俺がどれだけ嘆こうとも天ちゃんの消滅は止まらない。俺がどれだけ悲しもうとも天ちゃんの能力の暴走は止まらない。
「なんだ、やけに物分りがいいな?」
「それだけ重荷に感じてるってことだろ! もうテメェは余計な事言うな!」
「うるせぇよ、いいからテメェは黙ってろ」
と、またも目の前で口喧嘩を始める2人を無視して、よろよろとその場に立ち上がる。
こんなことをしている場合じゃないから。
少しでも多く動かないと。少しでも早く移動しないと。
少しでも素早く見つけてやらないと。
「大将…………」
次はどこに行こうか、どこに天ちゃんがいるだろうか。
どこに…………
「んで、お前はどこに行く気だよ。《反射》のユーザー」
「…………」
あの子ならどこに行くだろうか…………寂しいと感じた時どこに行くだろうか……?
「はぁ…………もういい、見てらんねぇ」
「ん? おいっ! テメッ…………何して…………!?」
とぼとぼと、おぼつかない足取りで歩き出す俺の行く手に塞がるように、《白》のゴーストが現れ、右拳をグッと握る。
そして────
「オラッ!!」
その直後に伝わってくる痛み。硬い何かが俺の頬にぶち当たり、頭に衝撃が駆け抜けた。
「ヴッ…………!」
その突然の出来事に俺は全く対応出来ず、バランスを失った身体は流れるままに地面に強く叩きつけられた。
「…………はぁ……! クッソッ!」
《黒》のゴーストは、何かに苛立つようにフードの中の頭をくしゃくしゃと掻き回して、強引に何かを納得する。
「結局こうなんのかよ……!」
…………早く探しに行かなきゃ。天ちゃんを…………見つけなきゃ。
「フラッフラフラッフラしやがって。どんだけテメェ雑魚なんだよ」
《白》のゴーストから見下されている。明らかに挑発されている。
……そんなことどうでもいいけど。
「目の前のことで頭いっぱいになって、ちっとも周りを見てねぇ。誰にも頼らず縋らず、全部自分でどうにかしようってハラだ」
「だから何をしたらいいか分からなくなって、がむしゃらに暴れて、何も出来なくてこんなクソみてぇな場所で落ち込む。『俺が天ちゃんを助ける』だぁ? 生意気言ってんじゃねぇよッ!!」
「テメェの《信念》も守れねぇ様な奴が仲間の1人も守れるわけねぇだろうが!!」
…………ちっとも周りを見てねぇだと……? 逆だろ…………! 周りがちっとも見てねぇんだろ。
生意気言ってるだと…………? 違ぇだろ…………! 誰も生意気すら言えねぇんだろ。
仲間を守れねぇだと…………? まだだろ…………!
「じゃあお前に何が出来るんだよッ!!!! 戦うことしか脳のないお前に一体何が────ッ!!」
こんなこと言い合ってる場合じゃない。それくらいわかってる。頭ではわかってるんだ。でも………………
この事実を知ってから俺は、
だからだろうか? 《白》ゴーストの言葉がどんどん胸に刺さるんだ。チクチク刺さって痛いんだ。
「
真っ直ぐな目だ。失敗を知らない、純粋で力強くて…………未来を見ている目だ。
コイツは目の前の現実を見ていない。もっとその先。天ちゃんを救う未来を見据えている目だ。
「多少は頭が冷えたんなら答えろ、《反射》のユーザー………………いや、
なんでかは知らないけど…………
「新海 天の暴走を止める手だては一つ。《アンブロシア》によるアーティファクトとの強制契約解除だ。だが、とあるお人形さん曰く、これはお前たち人間が使用すると高確率でその急激な変化に負ける。つまり…………死ぬ可能性がある」
「もう少し時間がありゃあ、リスクを極力無くしたVer.も作れるらしいが…………残念ながらそっちは無理だ、時間が無さすぎる」
「じゃあどうするかって顔してるな? コレ、なんだか分かるか?」
そして《白》ゴーストがポケットから取り出した物は試験管のようなもの。そのアイテムをひょいひょいっと動かして針を出したり直したりしている。
「《アンブロシア》。お友達を唯一助けられるヤツだ。コイツを使えば、高リスクを背負って低確率で新海 天を助けられる」
「ちなみにここで豆知識を一つ。この《アンブロシア》にちょいちょいっとこの容器の中身を入れると…………《ネクタル》っつー能力を暴走させる霊薬が作れるんだ」
そう言って取り出したのは、透明の幻想的な試験管に入れられた紫色の液体。
「蓮太、前に異世界人から奇跡を起こせる力があるって言われたんだろ? そこの《黒》から聞いたぜ? そこで思いついたのがコレだ。つまりだ、オレが言いたいのは…………《アンブロシア》をお友達に飲ませるか、《ネクタル》をお前が飲むかどっちがいい?」
狂気にも感じる不気味な笑顔で俺ににじりよってくる《白》ゴースト。
なんでコイツがここまでの情報を知っているのか。なんでコイツが霊薬を所持しているのか。色々と疑問に感じることはあるが…………本当に時間が無い。それは感覚でわかる。
だって………… 天ちゃんの名前を、既にもう忘れかけてしまっている。
「どっちを取るにしても賭けだ。《アンブロシア》を使ってリスクが高い危険を選ぶか、《ネクタル》を使って期待度の低い奇跡の暴走を起こすか。もちろん《ネクタル》を選んで物事が良い方へと傾くとは限らない。むしろ奇跡の力が暴走するって確証もない。暴走するのはもしかしたら《幻体》の力かもしれないし、《反射》の力かもしれない」
「それに…………お前の能力の暴走の力は未知数だ。本来奇跡ってのは人間が簡単に起こしていいものじゃねぇ。人の命を救うんだ、それ相応の覚悟は必要だぜ? 全てが上手くいっても死ねる覚悟があるのなら遠慮なく選べ」
「あ、ちなみに新海 天の居場所は既に割れてる。今日一日中そこの《黒》に付き合わされて死ぬほど追いかけてたからな」
「《アンブロシア》を使うなら、お前よりも距離が近いお兄ちゃんに使わせる。《ネクタル》を使うならお前が必須だからお前に来てもらう。オレは瞬間移動ができるからな、今すぐにでも連れてけるぜ」
不自然なほど親切だな。
ついこの間まで敵対していた俺たちに向ける言葉じゃねぇ。
まるで、お前かお友達、どっちか死ねよって言われている気分だ。
でも……きっとこれは悪意じゃない。《白》は理由は知らないけど、本当の意味で助けようとしてくれている。だって…………
「大将、突然のことで頭の整理が追いつかねぇかもしれねぇ。けど、天を助けられる手段はもう…………このどっちかしかない」
「アイツの事は大丈夫だ、嘘なんか言ってない。オレにはわかるんだ。だから…………決めてくれ。アンタの選んだ道をオレも一緒に歩くからよ」
《黒》が《白》を信じてるから。
「上手くいったら……そんときにオレが知ってることを全部話すよ。あの《白》から聞いたことを……全部」
重要なことは全て後回し、そりゃあそうか。本当に時間がねぇ。
もう………… 天ちゃんの事はほぼ思い出せない。本当に薄らと、微かに覚えているだけ。
…………腹を括ろう。突然の事で頭がパンパンだけど……今決めるしかない。
俺は…………俺は……!
運命の選択肢の始まりです。この選択肢は今日から4日間……つまりリアル時間の7月30日の土曜日まで選択できます。そして7月31日に終了させて頂きます。
絶対に後悔のないようにお願いします。
そして、作中の説明で理解しにくいと思った所や、純粋に疑問に感じたことがあれば、感想欄にて質問していただければできる限り簡潔に伝えたいと思います。ですので、分からないところがあれば遠慮せずに聞いてください。
もちろん、あえて自分の感じとったモノだけで選択して頂いても構いません。もし気になる事があるならばといった感じで大丈夫です。
どちらを選ぶ?
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アンブロシア
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ネクタル