9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「はぁ…………! クソっ……!」
この戦いが始まってからどれくらい時間が経っただろうか? 体感的には何時間にも及ぶ死闘に感じる。
殺し合いは大好きだが、こうも不利な状況が続くのは流石に納得がいかねぇ。
しかも相手は全力でオレを潰しに来ているにも関わらず、オレは命を取っちゃいけない。ハンデ戦もいいとこだ。
それに面倒なのが…………
「グガアッ!!」
「しゃらくせぇ!」
暴走したアイツはオレの能力を真似するように扱っていた。
しかも辺りに飛び散る無数の鏡の欠片はそれぞれが《反射》の能力を持ち、その欠片そのもので攻撃することも出来ている。
例えば今みたいに────
「あっぶね────!?」
一部の欠片が集まって槍のような鋭利な武器に変化し、至る所から飛んでくる。そしてそれらがオレにヒットしなかった瞬間に砕け散り、元の場所へと戻る。
まるで
無造作に攻撃してる時もあるが、明らかにオレを狙ったりもしている気がする。
普通はありえないだろ。校内火事の時だって創造主サマ曰く自我こそ保っていたが奇声を上げながら自分の能力を操れていないような感じだったらしいし、範囲も学校全体を包むレベルの強大な範囲だった。
アイツらに止められたけど……あのままだったらもっと被害は広がっていただろうって言ってたし……
「あ…………あ…………」
「……?」
最初こそ落ち着きがなくて似たような感じだったが、今は違う。あからさまにオレの隙を狙ってる。
「わ……たし…………じゆう…………」
「はぁ? お前何言って────」
その不思議な言葉と共に、蓮太を中心に突風が巻き起こる。辺りの瓦礫や砂を取り込むように浮かせて、グルグルと駆け上がっていた。
まるで小さいサイクロンだ。
もしこれらの力が《鏡》の能力だけの暴走だったのなら…………考えたくもねぇな。
と、その時。脳内に直接とある意思が流れ込んでくる。
そしてその直後に足元にコロコロと転がってくる試験管のような容器。
その中には琥珀色の液体が入っている。
「…………そうかい。オレはどうなってもいいけど
どこかから見てるな。微妙にそんな気配がする。
やっぱり…………心の底からどうでもいいんだな。オレの事なんか。
この数日間で創造主サマの性格や心は分かった。思想や目標も。アイツの大切な物にオレは入っていない。いや……そもそも大切な物なんてないんだけど。
人を物のように扱い、自分以外は全て気にしない。唯一気にしているのは翔だけ。
オレは常に《便利のいい物》だった。
だからこそ、今でも鮮明に思い出せる。あの時に蓮太が駆けつけてくれたことを。《電撃》を身体に浴びせられ、全く動けないオレを本気で心配してくれたアイツを。
ちょっとだけ《黒》が羨ましかった。その時くらいからだ、オレの中の殺意がどんどん溶けるように消えていったのは。
殺したい欲求が抑えられ、まともになれたのは。
こんなことを思うオレは幻体失格だろう。仕える立場でありながら主人を離れたいと願っている。
オレを《人》として見てくれているアイツの元へ…………行きたい。
「だからよ…………そんな顔しないでくれよ」
力を暴走させた蓮太は、相変わらず狩りをする獣のようにオレを狙う。
白目を剥いて、苦しそうに、呼吸を乱して……
泣いている。
「まだ……負けねぇ……」
赤い槍を飛ばし続け、時には瞬間移動で返し技を躱し、一定の距離を保ちつつ戦闘を続ける。…………が。
「……うっ!」
精神の限界がきてしまったのか、正確な動きをすることが出来ずに《反射》された赤い槍に左肩を貫かれる。
そしてそのまま背後へ飛ばされ、大きな瓦礫の岩に突き刺さった。
アイツら人間ならこんな槍を貫かれたところで大した意味は無いが……オレは違う。実物の槍を突き刺されたのと同じなんだ。
だから…………抜けない。
「…………ぐあっ!?」
必死に左肩に突き刺さった槍をどうにか抜こうとしていると、反対側の右腕に今度は1本槍を飛ばされ、突き刺さる。
「いっ…………!!」
次に左もも。
「ぐっ…………!!」
そしてダメ押しに腹を貫かれる。
ダメだ……! やっぱり無茶だった…………! まさか暴走の力がここまでなんて……
身体の自由を奪われると、暴走した蓮太はその隙を逃さず無数の《鏡》の欠片で鋭利な武器を作り、オレにトドメを刺そうと襲いかかる。
そして、その瞬間に感じる心。
創造主の記憶。
『あ〜あ、よく頑張ったけど残念だったね! バイバイッ』
そして何かの繋がりが切れる感覚がした。
それを境に、オレはアイツのことを思い出せなくなる。ノイズがかかったように雑音と砂嵐の記憶が混ざり、オレは誰と契約していたのかさえ分からなくなった。
ただ一つ理解出来たのは…………見限られた。
『使えない』と判断された瞬間に捨てられた。
いや、最初っから捨てる気だったんだ。
薄れゆく意識の中、オレは意識のない蓮太に声をかける。
「なぁ? 酷いだろ……?」
せっかく……オレは…………
「…………大将」
全てを諦めたその瞬間。このまま消えゆくのみだと望みを捨てた瞬間、とある女の子の声が横から通り抜ける。
「