9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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その日、想いは共鳴する

 

 身体中に力が入らずに、立つことすらままならなくなったオレはその場に抵抗することなく倒れる。

 

 そう……倒れた。気がつけばオレは何故かアイツの思うがままに()()()()()()()で動きを止められ絶体絶命のピンチだったはずだ。

 

 左肩ともも、そして右腕と腹はそれぞれに穴が空いており、その箇所は赤黒く塗りつぶされるようになっていて、見るだけでもかなり痛々しい。

 

 まぁ、痛すぎてもう感覚がないんだけど。

 

「おいっ! ゴーストっ!」

 

 そんなオレに駆け寄ってこようとしているのは……新海 翔だった。呼びなれない口調で血相を変えて向かってきている。

 

 そしてそれに続くように妹も。

 

「んー…………! えいっ!」

 

 その声とともに一瞬で()()()()。オレがさっきまで置かれていた状況を。

 

 赤い槍で貫かれていた事実を。

 

 チラッと背後を振り返ると、あの瓦礫の大きな岩には4本の槍が突き刺さったままだった。

 

「大丈夫っ!? …………って、そんなわけないですよね…………」

 

 倒れているオレを左右から挟むように座り込み、オレのことを心配しつつ蓮太を見る2人。

 

「あれが…………竹────いや、蓮太なのか?」

 

 赤黒く暴走した蓮太に戸惑ってるみたいだ。

 

「あれって…………あたしのせいでああなっちゃったんだよね…………」

 

 切なそうな表情でじっとアイツを見つめる妹。そうか……おそらく……能力を手中に抑えたな。

 

《ネクタル》は簡単に言えば暴走させる薬だが…………詳細は少し違う。契約者とアーティファクト間でのリンクの波長を狂わせる薬だ。

 

 そして合わなくなったお互いの波長は、次第にその揺れ幅を増幅させ、結果能力が暴走する。つまり…………逆にその波長に慣れてしまえばそのままの強さで自在にコントロール出来るようになる。

 

 それは簡単に出来ることじゃあないが…………これが蓮太の《奇跡》。とんでもない力だ…………

 

「新海……天…………だったよな? お前……その能力……」

 

「ゴーストさん達がワープしちゃったあとにね、お兄ちゃんが本当に来てくれて、みんなあたしのこと思い出してくれたの。流石のあたしでもわかるよ、みんな思い出してくれたのって……先輩のおかげなんだよね」

 

「……あぁ」

 

「それで、あの時……先輩苦しそうな顔してたから、力にならなきゃって強く思ったら……目覚めたっぽい。あたしの存在感操作(ちから)

 

「ゴーストさんも……ごめんなさい。本当に助けてくれてありがとうございます。だから、ここはあたしにどーんと任せて下さい!」

 

 ……コイツ、こんなに頼もしいやつだったっけ……? 

 

「もちろん天だけに無茶はさせない。俺も参戦して天を死ぬ気で守る。それに…………俺たちの仲間は駆けつけてくれてるから、間に合いさえすればなんとかなる……いや、何とかするさ」

 

「なか…………ま?」

 

「あぁ、新海チーム(俺たち)の切り札が来てくれてる」

 

 …………よかった。アイツにこんな仲間たちがいて。

 

 よかった……オレ以外にも希望があって。

 

 もうオレは何も出来ないけど、コイツらなら…………! 

 

「ごがあぁっ!!」

 

 次々に襲いかかる無数の《鏡の欠片》を、新海 天がその存在をかき消し、3人が安全圏まで移動すると元に戻す。この作業を何度も何度も続けている。

 

 そう、新海 天が行っているのは存在感の完全操作。今まで1~100の幅だったのが0~100に変わった。

 

 1と0の差はでかい。完全に忘れてしまうのが厄介だが、指定した存在を完全に消すことが出来る。

 

 けど……

 

「うぐぅ〜…………!」

 

 まだここまでの自分の力の扱いに慣れていないコイツには全て任せるのは無理だ。

 

 たまに完全に消しきれていないものもあるし、何よりも能力を使用するのには自分の精神力がいる。つまり乱発しすぎるとスタミナが尽きるんだ。

 

 きっとこの世で無限に能力を扱えるのはオレたち幻体だけ。

 

「やめろ! 新海 天ッ! もうお前は限界だ! 逃げろ!」

 

 もちろん怪我してしまいそうな危険な攻撃は、何とか新海 翔が妹を体を張って助けているが……そんもの長くは持たない。必ずボロが出て負けてしまう。

 

「嫌だっ! 逃げないっ!」

 

「なんでそこまでして────」

 

「全部あたしが悪いのに、あたしが勝手なことをしたからこんなことになっちゃったのに、先輩は最後まで見捨てないでくれた! ずっと……ずっとあたしを探してくれた!」

 

「みんなの記憶から消えちゃってた時も、あたし自身が消えかけてる時も、先輩は命を懸けて助けてくれた! 諦めなかった! だからあたしも諦めない! もうすぐあの人が来てくれるから……せめてその瞬間まで!!!」

 

 そしてその妹の決意に応えるように輝きを放ち出す小さな背中。

 

 服越しからでも十分に伝わるその輝きの強さに目を疑った。色こそ蒼色ではあるが、紋章が侵食していない。

 

 つまり、アーティファクトの支配に飲まれていない。

 

 けどこんなに力を解放させちまったら、コイツの精神が持たないはずじゃ────

 

 

「あたしが…………守るんだぁぁぁっっ!!!!」

 

 

 右腕を前に差し出し、銃を作るように親指を立て、人差し指を蓮太に向ける。するとその銃口にあたる人差し指の先端から、蒼い光が波紋のように広がっていく。

 

 そこに密集する背中から放たれる光たち。

 

 しかし段々とその指や腕が痙攣を始める。圧倒的すぎるアーティファクトの力に身体が耐えられていないんだ。

 

 徐々にその痙攣が激しくなっていくが……その手を支えるのはお兄ちゃん。

 

「ソフィが前に言ってたみたいに紋章(スティグマ)が広がってない……ならお前を信じるぞ! 天ッ!」

 

「……! うんっ! 先輩の力の暴走そのものを消す! みゃーこ先輩が来ても…………無事なように!」

 

 指先の波紋は更に大きく広がっていき、最後の力を振り絞るように視界が焼かれるような青白い閃光を放って────

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩を……いじめるなぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

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