9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

11 / 185
4月18日
他人に触れる。しかし未だ……


 

 さて……っと。

 

 まずは起床。アクセサリーを調べて、かき集めるという目的を定めてから、これ以上ないほどに俺は心を躍らせていた。

 

 何が楽しみって、どんな能力と出会えるのだろうと考えるだけで、もう笑みがこぼれそうだ。…………ま、まず近くにあるのかどうか、そもそも存在するのかも知らないけど。

 

 その為の調査だ。今日の放課後にナインボールにいって、あの眼鏡の店員さんに声をかけてみる。

 

 んだけど……なんて声をかけたらいいんだ? そもそもとして俺はコミュ障だからなぁ……上手く話せるかどうか……。でも、正直ウジウジしてても始まらないしな。

 

 今までは本気で人に興味がなかったけど、この際そんなことすらもどうでもいい。もしかしたら炎の力を持つアクセサリーとかもあるかもしれないし……うひょぉー! これからが楽しみだぁ! 

 

 個人的には水系があればいいなーなんて思ってるけど、まぁまぁ、夢を見てても外れた時が辛くなるから、まずは落ち着かないとな。

 

 なんて自分に言い聞かせつつも、俺はそのウキウキを上手く隠すことが出来ずにいるのだった。

 

 

 …………

 

 ……

 

 ……

 

 

 そしてたどり着いた学園。教室に入り、いつものように自分の席に座る。中の人たちは各々の友達同士で楽しそうに話しており騒がしかった。

 

 ちなみに俺の周りには一緒に話す人などいない。え? 友達がいないって? ……え? もしかして喧嘩売ってます? いやいやいやいや、いいじゃないですか、友達いなくても。てかいなくて当然なんですよ、俺から距離を離してるんだから。そもそも、人間なんて近くにいるだけで鬱陶しいんだよ? 友達なんてそんなカスみたいなものなくたってどうでも……

 

「竹内くん」

 

「はいっ!? なんでございましょう!?」

 

 なんだよ! ビックリするじゃんか! 人が心の声で語りかけてるんだからいきなり話しかけんな……って。

 

「九條さん?」

 

 まさかの人物が朝から話しかけてきた。普段なら挨拶はするかもだけど、特別な用事がない限りは俺からはもちろん相手からも話しかけられない。はず……

 

「おはよう。今、ちょっといいかな?」

 

「え、あ、はい。別に構わないけど……何か用?」

 

 十中八九、要件があってわざわざ席が離れている俺の所へ来たんだろうが……まぁ、この辺はな。

 

「うん。あの……これ、どこかで見た事とかないかな?」

 

 そう言って九條さんが差し出してきたのは、銀色に染まった髪飾りのようなアクセサリー。そう、これって…………

 

「…………似たような物なら」

 

「やっぱり。よかった、竹内くんも持ってるんだね」

 

 間違いない。これはあの時にナインボールで見つけたあの眼鏡を掛けた店員が持ってたやつだ。それをなんで九條さんが? 

 

 いや、そんなことは今はどうでもいい。問題はこの状況の処理だ。あの店員から奪い取った物? それとも運が悪いことに偶然落として、それを九條さんが拾ったとか? 

 

 どちらにしても能力の話をするのは絶対まずい。だったら何も知らないフリをして話した方が……? 

 

 というかまずなんで俺がアクセサリーを持ってることを知ったんだ? 確信があって俺に話しかけてきたってことだろ? 

 

 と、とにかく……

 

「あぁ。持ってる。俺のはピアスだけどさ」

 

 警戒はしているが、それを悟られないようにはしなくちゃいけない。内心はかなり焦っているけど、ポーカーフェイスでやり過ごすしか……! 

 

 どんな経緯でこれを手に入れたのかはわからないが……それは俺のだ! 絶対にあの店員から奪い取った技を引きずり出してやる……! 

 

「ほら、似てるだろ? ま、俺のって言っても俺が拾ったわけでもないんだけどな」

 

「私もなの。今日も家に置いてきたはずなのに気付いたらポケットの中に……」

 

 ……ってことは、これはあの店員の物じゃなくて、九條さんの物? 

 

「九條さんもか。俺もそうなんだ、昨日なんか家に置いたはずなのにいつの間にかポケットに入っててさ」

 

「やっぱりそうなんだね。あの時、竹内くん驚いてたから」

 

 ……え? 

 

「え? ん? なんであたかも知ってる風なんだ?」

 

「なんでって、私だよ? 竹内くんの会計をしたの」

 

「九條さんが!?」

 

 ……………………あっ! だから同じアクセサリーなのか!? 

 

 この一瞬の反応で理解出来た。たしかによく見れば似てる気がする! 

 

「ふふっ、これで二人目だよ」

 

「何が」

 

「私に気づかなかったでしょ?」

 

「…………悪い。謝る」

 

 なるほどなぁ……。つー事は別に他人のアクセサリーを奪えたりする方法を知ってるってわけじゃないのか、なんだ、少し話してみて損した。

 

 だが、これはある意味チャンスかも? この髪飾りが俺のピアスと似たような物だったとして、何か能力があるのなら、もしかしたら……もしかするかもしれん。

 

「それで? そのアクセサリーを俺に見せて何の用なんだ?」

 

「もしかしたら、呪い……とかなのかな? って気になって、先生にお祓いをしてもらおうかと思っててね。竹内くんも一緒にどうかな? って」

 

「呪い? どういう事?」

 

「ほら、成瀬先生って巫女さんだからよくお祓いとかしてるでしょ? 離れた場所に置いてもいつの間にか戻ってくる。なんて物……ちょっと怖いから」

 

 確かに不気味っちゃあ不気味だが……それで能力が扱えるようになるのなら、俺は全く気にならないんだけどな。むしろ俺から絶対離れないと考えるとそれも利点の一つだと思う。

 

 だが……ここは話を合わせてみるのがいいのかも。彼女の気持ちに同調してウマが合うフリでもすれば……さりげなく能力の事をさぐれるかもしれないし。

 

「不可解な出来事ではあるよな。怖いって気持ちも……わからなくもない。確かに、相談くらいはしてみるべきかも」

 

「あの地震の時に神社にある神器も壊れちゃったみたいだし……専門の人に何か聞いてみると解決しないかなって思って」

 

「ありっちゃありじゃないか? 現状個人ではどうしようもないんだ。知識がある人に頼らざるを得ないね」

 

「だから、放課後に一緒に行かない? 私一人だと……その……」

 

「最悪呆れられる可能性も……ないとは言いきれないし、わかった。俺も同行する。二人で頼んでみよう」

 

「うん。ありがとう。それじゃあHRが始まるから……またね」

 

 律儀にお礼を言ったあと、九條さんは軽く手を振りながら自分席へと戻って行った。

 

 あの感じだと……まぁ悪くない雰囲気じゃないだろうか。おそらく俺の本心には気がついたりなんかはしてないだろう。別にビビったりもしてないし、むしろお祓いなんかじゃなくて、じゃんじゃんあのアクセサリーが欲しいだなんて。

 

 それに、気になることが一つ。多分……能力の件は隠しているのかな? それとも気がついていない? 離れた場所に置いても、いつの間にか手の届く範囲に戻っている事は簡単に打ち明けたが、肝心な能力についての事には一切触れなかった。

 

 俺が警戒すると思ってるんだろうか? 能力なんて非現実的なことを口走ると変な目で見られる。なんて思ったりしてるから隠してる? それとも純粋に知らない? 

 

 ここがどうしてもなぁ……もしかしたら、本当にただ似てるだけで能力なんて無いかもしれない。

 

 ……はぁ。俺が一人で考えても仕方がない。ここはしばらく様子を見るか。どうせ仮に今日、九條さんが持っているあの髪飾りが不思議なアクセサリーだったとしても、今すぐに奪う訳にはいない。そもそも奪えるかも知らない。

 

 焦ってミスなんかしたらたまったもんじゃないからな。ここは念入りに準備するべきだろう。

 

 今は息を潜める時だ。…………最後に笑う為に。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。