9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「それで……どうしたの?」
竹内くんがいきなり電話をかけてくるなんて珍しい…………ううん、1度もなかった。今まではメッセージのやり取りばかりだったからかもしれないけれど、何か急ぎの用事なのかな?
『あ、いや……すっげぇしょうもない事なんだけどさ、明日実力テストあるじゃん? 朝の間だけでいいからチラッとノート貸してほしいなぁ〜って……』
え? ノートを見せる? それは構わないけど…………
『あぁ! もちろん夜の間にできる限りの勉強はするけどさ、結局今日はほら、予定が狂ったし……一応今日のまとめた内容が合ってるかどうかとかの確認したいなぁって……ダメかな?』
「ううん、全然大丈夫だよ? でも……それじゃあ朝に待ち合わせしましょうか」
『……ん? 朝に?』
「うん。明日は1時間早く学校に向かうこと」
『うへぇ…………。でもまぁ頭下げてる立場だからな……わかった、いつもより早めに学園に行っとく』
「はい、約束ね」
…………
……
……
『そんで…………どした?』
「え?」
明日の約束をしてから、ほんの少しだけ雑談をした。内容は特に意味のあるものなんかじゃなかったけど……今はこの電話を切りたくなかった。
そんな時、彼は突然そう聞いてくる。
『いや……何となく、本当に何となくなんだが、若干九條さんが暗いというか……元気がないっつーか、そんな感じがする』
「……、気のせいじゃないかな? 私はいつも通りとっても────」
『そんなのいいから、なんかあったか?』
「…………」
本当はそんなつもりはなかった。ただ、あの不安を忘れられるくらいに楽しいことで上書き出来ればそれでよかったはず。
でも、その言葉には優しさがあって、気持ちを吐露したくなる。
「私が出来ることって何なのかな」
『…………アーティファクト集めの件か?』
「うん。危険な思想の人達からアーティファクトを回収する。今はこの目標の為に頑張ってるけど…………今日、私は何も出来なかった」
『…………』
「お友達のことも簡単に忘れちゃって、最後の最後でギリギリ踏みとどまれただけ。でもそれは竹内くんが傷ついてくれたから」
想いを吐き出す。
無力な自分を責めて欲しくて。役に立てない私を叱ってもらう事で自分の立場を理解したかった。
それらは全て事実だから、訳の分からないままにあの場所へRINGで指示されて、その場に向かった流れで能力を使用した。
自分で1度も選択することなく、流されるままに。
「私がもっと早く気がつけていたら……私がもっと上手く能力を扱えていたら……! 私が────」
『別になんもしなくてもいいんじゃね?』
「……え?」
『言い方を変えようか、結局九條さんは何の為に頑張ってるんだ?』
「それは……!」
頭の中でグルグルと巡る言葉を考える。
何の為、もちろんアーティファクトを集めるのはこの街での犯罪を止めるため。
でも、考えているのはそれだけじゃない。今回みたいな不測の事態に陥った時に、みんなが傷つかなくていいようになって欲しい。
だからこそ、自分の劣等感を感じていて、力になれていないと思った。
『ほらな、1つに絞れないだろ?』
「…………うん」
『九條さんは優しいからな、きっと頭の中で俺たち全員のことを考えてると思う。そんで今日の出来事を思い返して自分を責めてるんだろ』
「だって……私は────」
『九條さんのおかげで、俺は助かった』
────!
『あんな事になってしまったのは誰のせいでもない。あえて言ってしまうと全員のせいだ。あの雷男も含めて、全員の。俺だって忘れてしまってたんだから』
『だからそこから学んで、次に生かさなきゃいけない。何をどうしたらもっと上手くできたのか。自分に何が足りなかったのか。その気持ちを持ったまま前に進まなきゃ行けない』
『けどそれは1人じゃなくていいんだ。少しでも重荷に感じたのなら誰かに分けてもらえばいい。そのための仲間だ』
『全部が全部自分のせいだって責めなくてもいいよ、九條さんの背中はそんなに大きなものを周りの人たちの分まで背負えるほどデカくないんだから。だからまぁ…………助けてもらった恩返しとでも思ってもらってもいいから、その重石を俺たちに分けさせてくれてもいいじゃん』
……
やっぱりこの人は凄い。どんなに心が迷走してしまっても、堂々と光が指す方へと導いてくれる。
確かにそうなのかも、私……信用はしてたけど、信頼を出来ていなかった。きっと……そうなんだと思う。だからこそ『私が』なんて考えになっちゃってたんだ。
酷い。
アーティファクトを手にしてから、どんどん私の醜いところが顕になる。真面目に生きてきたつもりだったのに……本当はこんなに…………
「うん……!」
『でも「出来ること」かぁ……そうだな…………。あ、明日のテスト、確か昼で終わるだろ? その時にちょっと色々試してみるか?』
「え? た、試すって……?」
『前にも言ったろ? アーティファクトは心によっていくらでも変化を遂げる。強い意志は既に持った。弱い所は仲間が補ってくれる。じゃあ必要なのはもっと自分の力を上手く扱えるようになること、その為にはもっと知らないことを知って柔軟性を高めたらいいんじゃないかな〜って』
「柔軟性……なるほど……」
『俺だってまだまだだからさ、色々と楽しみながら知ってこーぜ』
電話を切ったあと、私はまたあの霊薬を手に取る。
……うん。私は1人じゃない。仲間がいる。だからこそ辛い時には相談ができる。
今の私にはまだそれが限界だけど……もっと力になれるように頑張れる理由がある。
「明日……頑張ろうっ」
そう決意を固めた時、お父さんからの呼び出しがあった。
それに応えて、リビングに向かうと…………テーブルの上に何かの袋が置かれており、お父さんは嬉しそうな顔をして私にこう言った。
「都、さっきウチの会社と仲良くしてもらっている方がわざわざ家にいらしてな、その時にプリンを頂いたんだ、みんなで食べよう」
コロナグループとの友好関係が続いている会社……私が知っているだけでも沢山ありすぎて分からないけど……きっととっても大切なチーム。後で詳しくお話を聞いて機会があった時にしっかりとお礼を言っておかないと。
「そうなんだ? 次にお会いした時にお礼を言っておかないといけないね」
袋の中身を確認すると、私の家族の人数分のとっても綺麗なプリンが入っている。
その中身に入っている紙を取り出して見てみると…………どうやら《穂織》という名の町で作られた特別なものみたい。
お店の名前は……《田心屋》聞かない名前だけど、素敵な店名だしとってもいい匂いで本当に美味しそう。
いただきます。と手を合わせて早速そのプリンを頂こうとしてた時に、お父さんがいきなりビックリすることを言い始めた。
「なぁ都、一緒に食事会に出席してみる気はないか?」
「食事会……?」
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