9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
直前のお勉強会
《視点切り替え》
体が重い。あの時よりも異常を感じる辛さだ。
結局、ルナの傷をあの方法で治療をしたあと、何もしないのはまずいと判断して教科書の内容くらいはまとめるレベルの復習をした。
ここ最近は普段の授業の内容は全然聞いてなかったから理解するのも割と一苦労だ。
でも……九條さんがノート見せてくれるって言ってたし、それと照らし合わせて何とか最後の仕上げをすれば中の上くらいはいけるだろ。
にしても幻体のアーティファクトを手に入れてから身体の……いや、心の違和感が拭えない。通常とは違う特殊なアーティファクトを手にしているからか、それとも単純に多くの能力を所持しすぎているのか、たまに暴発してしまいそうになる。
レナとルナを出している時の方が気楽なくらいだ。今までは出してたら俺が疲れてきてたんだけど、留めておいた方がキツい。
まぁ……ちょっと疲労が抜け切ってないだけだろう。ここ数日は目まぐるしい程に忙しかったから。
天ちゃんの問題も何とかなったし、ルナも味方に引き入れた。《魔眼》の正体は掴めなかったけど……あれから石化の被害は出ていない。この期間中に絶対探さなきゃいけないんだが……アイツらがいる。
天ちゃんをあんな目に合わせた張本人たちのグループが。調べてみたいけど……もう誰かに頼んで捜査をするのは勘弁だ。また《ネクタル》を打ち込まれでもしたら次はどうなるか……
それを防ぐためには非アーティファクトユーザーが必要……だけどそれじゃあアイツらには対抗出来ない。俺たちのメンバーで1番バランスが良さそうなのは…………
「やっぱ俺かなぁ……」
少なからず味方が3人という状況を作れる上に、能力は反射。次点で可能性があるのは香坂さんだが……あの人はきっとトラウマを押し付けられてる。《想像の具現化》なんて超強力な能力を持ち合わせているが、この能力には弱点がある。
それは自身に強い意志がないと逆効果だということ。マイナス方向へと考えてしまうと、能力によって
なかなかに癖が強いモン持ってんな。
つかあの《雷》が強すぎるんだわ。攻撃速度も激速、威力は調整可能、高電離気体を発生できるってことは電子の操作も可能、そんで範囲は絶大。
こんなもんにどうやって勝てってんだよ……ったく。
しかも辛いのは《幻影系》ってこと。つまりレナとルナに対しては大きなダメージ限になってしまうし、魂の核が傷ついてしまうから迂闊に手を出せない。
そろそろ戦闘面での作戦を考えとかないと……かな。
と、考え事をしながらコンビニで朝食とパックの飲み物を買い、いつもよりもかなり早い時間に学園へ向かう。
「……寝みぃ」
…………
……
……
そして学園にたどり着くと、丁度門を抜ける所で自転車に乗った九條さんが颯爽と俺の隣にやってきた。
「おはよう、竹内くん」
「……ん? あ、おはよーさん」
もちろんこんな時間にやってくる生徒なんで、部活動での朝練組の人達しかいなく、帰宅部の奴らは俺たちだけだ。だから人が少なくてお互いにすぐに合流できた。
「悪いな、こんな時間に登校させてさ」
「ううん! 全然大丈夫だよ、早起きしてお爺様に褒められちゃったし」
「三文の徳って言うしな」
それから九條さんの自転車を置きに行って、一番乗りだったから教室の鍵を受け取り、各々の机にカバンを置いてノートを取り出す。
それを九條さんから受け取り、互いのノートを見比べておかしな点はないか、範囲はズレていないかの確認。ついでに朝に買った飲み物を1口。
うん……大体の教科は問題なさそうだ。
そしてひたすらに今日のテスト範囲の内容を頭に叩き込んでいると……
「私も数学は不安だから……やっちゃお」
と近くの机を俺の机に合わせて繋げ、九條さんは筆記用具たちと自分の飲み物であろうパックのジュースを用意していた。
「数学は………… 漸化式だっけ?」
「うん、そうだよ。1年生の頃にあまりにも授業の進みが早くてフライングしちゃったでしょ? だからちょっとズレちゃってるんだよね」
「あぁ〜……なんかそんなことあったな。しかも中間と期末には範囲外だから入れないって言ってたな」
「なのに今回は入ってるんだって、笑っちゃうね」
「大体今の俺たちにさせる内容じゃねぇんだよなぁ……」
そんな雑談をしている間もお互いに手は止めない。
そしてしばらく時間が経過したあと────
よし……やっぱ昨日やってたとこで問題無さそうだな。これならなんとか100位程度には潜り込めそう…………
「あの……竹内くん、この問題の解き方わかるかな……?」
「ん?」
そう言って九條さんが見せてきたのは、市販で売っている問題集の応用編と書かれた問題だった。
漸化式を使わなきゃいけないところで……あぁ、そういや数学って最後の方は絶対に解かせる気ないだろって感じに応用問題叩き込むよな。俺はそこ捨ててるから気にもしなかったけど……
…………うん。この程度ならなんとか……?
「んー…………ちょっと持ってて」
サッサっサッと方程式を当てはめて、考えうる方法をとりあえず試してみる。
違ったりしたら別パターンを組み込んで…………
「わっ……凄い、あっという間に解いちゃった……」
「合ってるかどうかは自信ないけどな」
「すごいよ! ちゃんと大正解だよ! 答えと全く同じだもん!」
そうか……合ってたならよかった。
「ここの解き方はまず────」
と、とりあえず自分がわかるレベルの説明をして、お互いに復習するように伝える。
そしてキリがいいところで手を止めると……もうかなりの時間が経過していた。
普段なら絶対に生徒たちが半数以上集まっている時間だ。
「あぁ〜〜〜〜…………ッ!! つ〜か〜れ〜た〜!」
ぐーっと背伸びをするように体を伸ばし、両腕を空高くにあげる。
「ふふっ、そうだね。でもおかげで今日のテストは乗り越えられそうかな?」
「まぁな、助かったよ……本当にサンキュ、九條さん」
なんて流れの中、何気なくパックの飲み物に手を伸ばしてそれを咥える。
「いえいえ、私もお勉強できたしとっても────ッ!?」
そういえば九條さんもこういう飲み物を買ってくるって珍しいな。いっつも水筒を持ってきているイメージなんだけど……まぁそんな時くらいあるだろ。
別にこれ自販機だろうがコンビニだろうがあんまり値段変わらないで100円くらいだし。
…………?
チラッと時計を見て時間を確認したあと、改めて九條さんの方に視線を向けると、彼女は沸騰でもしたのかのように顔を赤く染めていた。
……ん?
「どした? なんか顔赤いけど…………熱でもあるか?」
「いっ! いえっ!? そ、そそそそんなことありましぇんけど……!」
……言えてないけど。
何をそんなに動揺してんだ? この人。
「……? あ、無くなった。九條さんもそれ飲みきったんならついでに捨ててこようか?」
自分が口にしている空の飲み物をクシャッと潰して、そう聞いてみる。
「えっ!? あっ、ま! まだ入ってると思うから大丈夫です………………………………多分……!」
なんか引っかかる言い方だけど……まぁいいか。
そして自分の席を立ち上がってゴミを捨て終わり、元いた場所に戻ってくると…………九條さんは自分の飲み物を手にしながらプルプルと震えていた。
しかもその飲み物のストローを凝視している。
え? 何? この飲み物の美味さに感動したの? その辺にいくらでも売ってるものですけど?
ってか……俺と同じもの買ってたんだな。それ美味いんだよ、うんうん。
とりあえず席に座って道具たちを片付けていると…………とうとう九條さんは意を決したようにそのストローを口に咥えた。
しかしその瞬間に耳まで真っ赤に染まっていく。
「…………あのさ、本当に大丈夫か? 目に見えるほど顔が赤いし…………もしかして熱でもあるんじゃ────」
「んー! んー! んー! んー!」
ブルブルと首を横に振り、意見を否定する素振りを見せる九條さん。
うん……? そのストローから口を離せばいいじゃん……
「やっぱり変だって、ちょっと失礼…………」
明らかな挙動不審な動きに心配になり、九條さんの額に手を軽く当ててみる。
「〜〜〜ッッ!!」
「んー…………別にそこまで高くはないよな。熱があるわけじゃ無さそうだ」
でもここまで顔が赤いのは変だし、一応保健室に連れてった方がいいかも?
なんて考えていると、廊下の方から馬鹿みたいに大きな声で叫ぶあの声が聞こえてきた。
「またあの2人がイチャイチャしてる〜〜ッ!?!?」
「ぶふっ!?」
「おわっ!? 大丈夫か!? 九條さん!!」
その唐突な声にビックリしたのか、口に含んでいた飲み物をちょっと戻してしまったようだ。
とりあえず物をどかして、ティッシュで零したところを吹いて…………
なんてことをしていると、次々に声が聞こえてくる。
「馬鹿っ! 叫ぶなってバレるだろ!?」
「だってさ! 翔! あの2人関節キスした後、額に手を当てたりしてたよっ!?!? なんでっ!?!?」
「俺が知るかよ! つか声でけぇよ!」
深沢と翔…………アイツら面白がってたな……?
主人公の恋人は?
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九條 都
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香坂 春風
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結城 希亜