9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
キンコンと鳴り響く、録音された鐘の音が学園中に駆け回る。
それは今日行われている最後のテストを終了するという合図だった。一気に切れた緊張の糸を気にせずに、テスト用紙を教卓へ集めてHRを聞き流す。
「ぼへぇ〜…………」
もうくったくただ……
勉強もそうだが、やっぱり1番堪えるのはルナの治療をした事。あれがかなりズルズルと引きずっている。
まぁ……明日から土曜日だし1日くらいゆっくり休んでもいいか。でも髪も切りに行かなきゃいけねぇし…………
「竹内くん」
そんな時だった。九條さんが俺の席までわざわざ来てカバンを持って呼んできたのは。
「んにゅ?」
「ボーッとしてたでしょ、もうHR終わったよ?」
「…………ほんとだ」
周りを確認してみると、確かにもうクラスの半数は下校しており、ワイワイガヤガヤと賑わう中で俺だけが未だにダラダラとしてした。
「やっぱり、お勉強で疲れちゃった?」
「そりゃ疲れもするよ、慣れないことをいきなりするもんじゃねぇな」
俺も自分のカバンを持って立ち上がり、九條さんと2人で教室を後にして歩く。
「もう今日は中止にした方がいいんじゃないかな? テスト中も竹内くん、なんだかウトウトしていたし……」
「そりゃいつもの事だから大丈夫。だから気にしなくていいさ」
そうして校門を通り過ぎ、目的もなく歩くのも疲れるだけだから、とりあえず昨日言っていたことを九條さんに聞いてみる。
「それで……どうする? どっか行ってみたい場所とかある?」
話していく中で決まったこと。それは今まであんまり行ったことのないところで遊んでみようということになった。適当に映画を見てもいいし、ブラブラ歩くだけでもまぁ……いいし、少し離れた場所には美術館や動物園、ブラネタリウムにイモンモールもある。
バイクを使えば海沿いの港町や隣町にも行けるし……正直選択肢はたくさんある。
「行ったことのない場所…………行ったことのない場所……………………」
「……あっ! ラウンドツーに行ってみたいっ」
……これまた意外なところが出てきたな。
まぁあそこなら時間も潰せるし、楽しめるものは結構多いし、行くのはいいか。俺も頻繁に行ってるわけじゃないし。
「ラウンドツーならこのまま歩いて行くか、お金は持ってる?」
「そこは抜かりありません! お昼ご飯代とは別に500円も準備しました!」
「ウッソだろお前……」
セレブらしからぬ発言と行動に驚きながらも、自分の小銭入れを確認する。
入っているのは…………6千円くらいか、……………………まぁいいか。
「とりあえず行ってみようぜ、中に入って回るだけでも全然違うだろ」
「ふんふんふーん♪」
……偉い上機嫌だな。
「わっ……すっごい沢山のクレーンゲームがある……!」
とりあえずラウンドツーにたどり着いた俺たちは、特に目的の場所がないため中に入ってすぐにあるクレーンゲームコーナーへと立ち寄った。
専用コーナーなだけあって、その数は尋常ではなく、このゲームだけで100台はあるんじゃないか? と疑わざるを得ない広さと数だった。
そしてそれを一つ一つ眺めて、目をキラキラと輝かせるお嬢様。
…………結構ガチで来たかったんだなぁ。
「すごい……! お菓子まで景品になってる……」
まるで子供のようにはしゃぐ彼女を見て、やっぱりここに来てよかったと思う反面、きっと知らないことが沢山あるんだろうな、とも思った。
「奥に行きゃあまだ色んな種類のタイプがありそうだ。行ってみる?」
「うんっ! 行きたいっ」
「ははっ、それじゃあとりあえずゆっくり回ろうか」
それから俺たちはウインドウショッピングのようにコーナー内をウロウロと歩き回る。最初に九條さんが食いついた菓子が景品のものや、人形が景品になっているもの、くじ引きシステムのものや、フィギュアなど、様々なものを見て回る。
そしてある一つのものを発見すると、九條さんは歩む足を止めた。
「これ……可愛い……」
「おろ?」
静かに見つめる九條さんの視線の先には、少し小さめのとあるキャラクターがモチーフになっている箱があった。
「……なんだこれ」
「ルームランプだって、ほらっこんな感じの」
そう言って九條さんが指差す先には、商品紹介の張り紙が貼られていた。
「ふーん……『暖色系の優しい光が、あなたの睡眠をより快適に』…………あぁ〜なるほど、ベッドの横に置いたりしたらいいのか」
「それにデザインが可愛いよね、キャラクターも可愛いし……………………1回だけやってみようかな……?」
あれは確か……ドラファンのイモテンダーだっけか? まぁ作品を代表するモンスターだし、確かにこんなグッズにするにはちょうどいいのかも?
「そんな簡単にとれねぇって、クレーンゲームなんてハマったら目も当てられないぞ?」
「やっぱりそうなのかな? うぅ〜……でも欲しい……」
……いや待て、今俺たちがこんな所にやって来ているとは、自分の知らない世界を知るためだ。それが結果アーティファクト関連での成長に繋がるのなら…………
「でも、もしかしたら意外とすんなり取れるかも? 動画とかじゃあ1発取りなんかも結構上がってるし…………お試し感覚ならいいんじゃない?」
そもそもとして九條さんはバカバカとお金をつぎ込むタイプでは無いだろうし、そんなに大した大打撃にはならないだろ。
これもいい機会だ。
「そ、それじゃあ…………やってみます……!」
キリッとした表情で、クレーンゲーム機の前にスタンバイする九條さん。緊張でもしているのか、指先をぷるぷると震わせながら財布から100円を取り出した。……つか喜怒哀楽が結構激しいっすね。それも楽しんでくれてる証拠なのかな。
そんな彼女を横で眺める。
九條さんって何事にも一生懸命だよな……勉強も仕事もアーティファクトの件も、この遊びも。
やっぱりこの人には学ぶものが多い。
「あ、あのっ! これって……どうしたら動くの!?」
「ボタンが2種類あるだろ? それを順番に押したらアームが動くんだ、んで位置調整をした後にボタンを離せば、あとは勝手に掴んでくれる」
「ボタン……ボタン…………えいっ」
俺の説明をウキウキな表情で聞いた九條さんがボタンを押した瞬間、アームがピクンっと動く。
そう、ウィ────ンとスライドしていくように動かなきゃいけないのに、ピクっと動いた。
それはつまり……………………
「九條さん…………ボタンは長押しです……」
「……あっ」
主人公の恋人は?
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九條 都
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香坂 春風
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結城 希亜