9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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思わぬ救世主…………?

 

 ザワザワと人集りが出来ている中を掻き分けるように突き進む。あちらこちらにスマホを片手に撮影や録画をしている奴らばかりで鬱陶しい。

 

 ピコピコパシャパシャ音をする中を突き抜けると、例の落下した電子看板の場所までたどり着いた。みんながみんなその地点に向かってスマホを向けていたから、何かとんでもないことが起きているのかとヒシヒシと感じていたが……あの反応とは裏腹に特に誰かが怪我を負ったりはしていない様子だった。

 

「なんだ……こいつらが無駄に騒いでいるだけか」

 

 安心感からかそんな言葉が漏れる。でも本当に人が巻き込まれていなくてよかった。

 

 いや……巻き込まれてはいるか。誰も怪我をしていなくてよかった。

 

 目立つ位置でそんなことを思っていると、不意に背後から腕を引っ張られ、再び人混みの中にその身体を隠してしまう。

 

「なっ……!」

 

 半場無理やり場所を移動させられ、なすがままに引っ張られ続けていると、目立たないような位置にある裏路地へと続く細い道で、ようやく俺を引っ張っていた人物を確認できた。

 

「なにやってんのさ、あんな所で…………」

 

「お前……深沢?」

 

 暗い月明かりに照らされた光沢のある青髪に、妙な力がある紅い瞳。そして普段翔をよく見かけているからか、少し幼くも見える小柄な女のような男。

 

 …………あれ? 青髪に…………紅い瞳……? 

 

「あんなに前に出てたら晒し者もいいところだよ? 最近の若いのはすーぐSNSに画像やら動画やら投稿するんだからさ」

 

「あ、あぁ…………そうだな……。でもいきなり大きな音がして驚いてさ、怪我人とかいたら大変じゃないか」

 

「確かにあの音には僕もビックリしたね〜。いきなりあのでっかい看板が壊れたかと思ったら変なのが飛び出したくんだもん」

 

 こいつも近くにいたのか。本当に怪我なんてしなくてよかったな。

 

 …………ってこんなことしてる場合じゃなかった! レナとルナにユーザーを任せたまんまだ! 

 

「とりあえず深沢も今日は早く帰れよ! じゃあ────」

 

「ちょちょちょっ!? どこ行くのさ竹内っ!」

 

 無理やり会話を中断させて一目散にアイツらの所へ駆け出そうとすると、再び深沢に腕を掴まれて止められる。

 

 こいつ…………意外と力強いな。

 

「用事があるんだ! 人を待たせてる!」

 

「……? 何か急ぎの様子だけど……商店街を抜けた先に行きたいんなら今の大通りを通るよりもこっちの方が近いよ?」

 

 そう言って深沢が指さす方向は裏路地の中にある細い分かれ道。しかし方向的には確かに…………合ってそうだ。

 

「そ、そうか……、わかった!」

 

 なんで深沢が裏道を知っているのかはまぁ置いておくとして、とりあえずこの道が使えるんならありがたく使わせてもらおう。

 

 そうして大慌てでその先の道へ駆け出していき、曲がり角を曲がる直前に礼を言おうと背後へ振り向くと…………

 

 さっきまでいた所に深沢は姿()()()()()()()()いなくなっていた。

 

「あれ……? アイツどこ行ったんだ……? って…………今はそれよりも!」

 

 色々と引っかかるところがあったけど、まずは目先に問題を解決しなければいけない。そう判断した俺は深沢から教えてもらった道を突き進んだ。

 

 そして走り出したその瞬間に…………

 

 

 

 

 

「危なかったとはいえ無事に生きてたね。それじゃあ手伝ってあげる」

 

 

 

 

 背中に何か違和感を感じて素早く背後を振り返る。

 

「……? 今……何が聞こえたような……」

 

 しかし軽く見渡してもどこにも誰もいない。気のせいか? 

 

「…………先を急ごう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 

 

 教えてもらった道を走り抜ける。そして何となくの方向に向かって走り続けていると…………街灯も無いようなボロボロの道の先から花火でも上がっているかのような爆発音が響いてきた。

 

 俺がいるところからはそこそこ音が小さいから……まだ距離はありそうだが、こんな寂れた道なら人気も無いだろう…………ナイス誘導だ、アイツら。

 

 そして俺は爆発音が響く方向へと全速力で走る。

 

 ひたすらに怪しいと感じた方向へ移動していると…………ボコボコと丸い焦げ跡が残った場所にたどり着いた。

 

 地面や人の住んでいないであろうあばら家やその周りを囲うように佇むブロック塀、至る所に少し凹んだ真っ黒い影が残っている。

 

「なんだこれ……」

 

 その跡を調べてみようとすると…………耳を塞ぎたくなるような爆発音と同時に、大きな何かが目の前のブロック塀を突き破ってきた。

 

「ぐはっ……!!」

 

「……ッ!?」

 

 勢いよく飛ばされるように俺にぶつかった何かは、苦しそうに息を荒らげながらビクビクと震えている。

 

「痛て…………って……ルナッ!?」

 

 あの一瞬じゃ判断なんて出来なかったが、しっかりと姿を確認できる今ならわかる。白いパーカーを身に纏い、短いスカートのようなモノを履いているロングの女の子…………

 

「おいっ! ルナッ! ルナッ!!」

 

「うっ…………せぇ……な…………ッ! 聞こえ……てる…………っつーの…………」

 

 辛うじて吐いた無愛想な返事を聞いて、状況を聞き出そうとしたその時、ルナが飛び出してきた先から更に激しい爆発音が響き、奥でまだ戦いが繰り広げられているのが理解出来た。

 

 ルナを面倒見てやりたいが…………今はそれどころじゃ無さそうだ。

 

「蓮……っ……蓮雫(アイツ)が引き付けてる内に…………逃げろ……っ!」

 

「はっ!? 何言ってんだ! 家族を置いて逃げるわけねぇだろッ!」

 

「いいから逃げろ……ッ! アイツは強すぎる…………!! 殺されるぞ……ッ!」

 

 今にも死にそうな表情をしているルナを能力を解除して休ませる。

 

 普段あれだけ強気なコイツがここまで言うって事はあの音はハッタリでもなんでもないってことだ。地形に影響を与えて且つ幻体にもダメージを与えられる。

 

 いや…………ルナに傷は残っていなかった。つまりは《幻影系》じゃない。その攻撃には俺は特に気を付けなきゃいけないってことだ。

 

 でもいくら傷つかないとはいえ痛みはあるし、疲労も溜まる。レナ1人を残せて行けるもんか。

 

 待ってろ! 直ぐに助けに────

 

 

 

 

 そう強く決心したその瞬間に、再び爆発音が鳴り響き、俺とすれ違うように黒い人影が前方から倒れた。

 

「…………え?」

 

 思わず気の抜けた声が出る。それほどまでにあっさりと彼女は俺の横を倒れた。

 

 今のは間違いない…………

 

 イカン……! 俺がしっかりしないでどうする……! これ以上コイツらを傷つかせてたまるか……! 

 

「ごめん、ゆっくり休んでろ。レナ」

 

 もう1つの能力も解除する。ゆっくり休んでもらう為に。もう無茶させない為に。

 

 そしてレナとルナが飛んできた方向を睨んでいると…………奥から人が現れた。

 

「こんばんは、貴方が《反射》の能力者で……いいわよね?」

 

 その姿は至って普通の女。どこか見なれた制服に身を包み、長い髪を後ろに束ねながら冷たい目で俺を見る。

 

「…………ッ!」

 

 コイツがあの俺よりも強いレナとルナを倒したのか……! しかも…………汚れ1つ着いてもいない姿で。

 

「竹内蓮太。名前は合ってる? 一応人違いだと後処理が面倒だから聞かせてもらうわ」

 

 名前も知られてる……

 

「あぁ」

 

「じゃあこっちも自己紹介、とある事情で貴方を殺すことになった《IO5》です。突然で悪いけれど…………大人しく死んでくれる?」

 

 目の前の女は自分の指先に優しく息を吹きかけると、その先から淡い光が誘われるように俺の元へと移動してくる。

 

 …………ッ! 

 

反射鏡(リフレクション)ッ!!」

 

 咄嗟に能力を発動させて鏡の壁を作るが…………《反射》は出来ずに壁の奥で地形を壊さんとするような凄まじい爆発が響き、その爆風に耐えられず身体をのけぞらせてしまった。

 

「くっ…………!」

 

 なんつー威力だ……! 手始めの挨拶でこのレベルかよ……

 

「あら……貴方、その子の味方をするの?」

 

 ……? 

 

「君たちがしつこいからでしょ、厄介事に巻き込まれるのは僕は嫌いなの」

 

 誰に話しかけているのかと思えば…………この声……! 

 

「逃げるのも面倒になってきたしね。いくら追跡を撹乱させたとしても何故か君たちはずーっと追っかけてくるし、それなら……………………」

 

 

 

 

 

 

「やることやるしかないでしょ」

 

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