9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
にしても呪いねぇ……。そういえば確かにそう感じても可笑しくはなさそう……かな?
そもそもとしてあのアニメ「輪廻転生のメビウスリング」に出てくるアニメに酷使していることが多い。紋章も、アクセサリーも、異常なほど近しいものを感じる。
元々はこの地域の伝承がモデルだし、なにか繋がりがあるのかも……? なんて考えてしまってもとても笑えない。
えぇっと……確か紋章は『スティグマ』アクセサリーは『アーティファクト』だったか? つっても、俺が九條さんにアーティファクトは? なんて聞いたりしたらバカにされるだろうなぁ。ただの痛いヤツだし。
まぁ今は別に気にしなくてもいいか。まずは目先の事を考えよう。
「それじゃあ行ってみようか。九條さん」
放課後になり、生徒が一斉に帰りだす頃、掃除当番以外の人がいなくなったタイミングで成瀬先生の所へと九條さんと2人で歩いていった。
いつものようにどこか気だるそうな先生に声をかけ、おそらく職員室へと向かっていただろう足を止める。
「先生」
「ん? なに〜?」
……思えばなんて言えばいいんだ? 素直に呪いを解いてくれって言ってもなんのこっちゃさっぱりだろうし。
つか、そもそも俺は同じ性質のアクセサリー……基『アーティファクト』を持ってたから簡単に信じることが出来たが、その経験がない先生は俺達の話を信用出来ないんじゃないか?
なんて考え込んでしまっていると、隣にいた九條さんが意外と淡々と説明をし始めた。
「このアクセサリーなんですけど……もしかしたら呪われているのかも? なんて思っていてですね。もしそうだとしたら、先生にお祓いをして欲しいんです」
「呪い?」
……こう言っちゃ悪いかもしれないけど、今すっげぇ先生アホな顔してる。
「俺もなんですよ。持っているアクセサリーがどんなに自分から離しても手元に戻ってくるんです」
「え? なに、どしたの。頭でも打った?」
「ひでぇなこの人」
「そ、そうですよね。そんな反応になりますよね……」
九條さんもある程度こうなることは予想してたんだろう。顔を少し赤らめながらも少しアタフタしていた。
「でも九條さんがそういうんならそうなんでしょうね。で、それって誰かに見せたりしたの?」
「いや、俺は先生と九條さん以外は誰にも」
「あ、私は新海くんに……」
はい誰?
「あー、じゃあ呼んでみよーか」
そう言って先生は、廊下で箒を持って掃除をしている男子生徒を手招きして呼ぶ。それに気がついた男子生徒は作業を止めて、のしのしと俺達の近くに歩いてよってくる。
「な、なんですか?」
「新海くん、なにか変わったことはあった〜?」
「はい?」
唐突に呼ばれてやってきた新海君は、呼ばれるや否や訳の分からん質問にやや混乱していた。
そりゃあそうだろうよ。内容を特に話さずに、「変わった事は?」なんて聞かれても、俺でも何が? って答えるわ。
ちなみに九條さんは大慌ての様子で顔を見ないようにしている。きっと恥ずかしいんだろう。
「最近ちょっと不自然なことが起こっててさ。もしかしたら新海君の周りでも怪奇現象でも起こってないかって思って」
「怪奇現象って言われてもな……って言うか竹内さ、フェスの時会場にいた?」
「ん? いたけど……なんで?」
「気が付かなかったのか? 俺の隣を素通りして行ったんだ。妹と話しながら、もしかしたらクラスメイトかもって思ってさ」
「そうか、だったら当たりだな。言われてみればカップルっぽい2人を追い越した記憶はある。あれだろ? 八百円を損した〜みたいな話をしてた」
「そうそう、それが俺たち」
カップルかと思ってたが、あれ兄妹だったのか。まぁそれなら確かにあの距離感は納得かも? ぶっちゃけどうでもいいっちゃどうでもいいが。
「とにかく怪奇現象だ。俺と九條さんが持ってるこのアクセサリーなんだけど、家に置いててもいつの間にか手元に戻ってきててさ。まるで瞬間移動みたいに」
「瞬間移動? なんだよそれ」
だよね、そんな反応になるよね。わかる。わかるよ君。
「本当なのか? 九條」
まだ恥ずかしさがあるのか、言葉は発さずに九條はこくりと頷いて答える。
「それでお祓いして欲しいって言われて」
「それをなんで俺に話すんです?」
「だって呪われてるなら新海くんもかな〜って」
「2人がそう言ったんですか?」
と新海君が質問した時、九條さんは自分が持っていたあの髪飾りのようなアクセサリーを差し出すように見せる。
……俺は、止めておこう。
「これが、手元に戻ってくるって?」
「うん」
「ごめん、話が見えないんだけど……」
……あれだな。やっぱり、実際にそれを経験しているかしていないかで理解の時間に差ができるんだな。それはそれでしょうがない。
「要するに、机とか引き出しの中に入れたりしても、気がついた時にはポケットとか手の届く範囲に戻ってくるんだ」
「勝手に移動してくる……って事?」
その質問に対して、俺と九條さんは再び首を縦に振る。
すると新海君はいかにも信じられないと言わんばかりの表情で、「えぇ……」っと声を零した。
そらそやろなぁ。
「こっわ。心霊現象じゃん」
「だよね〜、怖いよね〜」
「自分でも馬鹿馬鹿しいと思うんですけど…………。でも、怖くなってしまって」
「それでお祓い」
確かに馬鹿馬鹿しい……な。俺でもそう思うよ。何も疑いを持たなかった自分にも、この現象にも。
「昨日神器が壊れてしまったと聞いて、そのせいなのかな? って」
あぁ……そういえばなんかフェスの会場がそんな話題でザワついてたな。1部のコアなファンが本気で残念そうにしてたような気がする。
「あー、それで……やっと意味がわかった」
「まあ〜何となく新海くんを呼んだだけなんだけどね〜」
「あ、そうなんすね。てっきり俺が壊した……なんて言い出されたのかと思いましたよ」
話を聞く限りだと、新海兄妹があのフェス会場にいたのは、単に楽しみに行っていた訳ではなく、バイトとして……運営側として行っていたらしい。(妹は普通に遊びに来ていた)
そしてタイミング悪く例の地震が発生。たまたま近くにいた新海兄妹がその割れた神器を回収していて……先生は新海くんが壊した〜ってからかってる。
「同じようなものでしょ。それと、お祓いはもうちょっと様子を見てからでもいいんじゃないかなぁ?」
「何でですか?」
「だって、あんなのした所で多分何も変わらないよ? インチキだし」
うせやん。まさか本物の巫女様から本職を全否定する言葉を直接聞くことになるとは思わなかったわ。どんだけ適当なんだこの人。
「マジかよ」
「え……」
「……いいんですか、先生。それ言っちゃっていいんですか……?」
みんなもどうやら俺と似たような感じだった。
「だって心霊現象もだいたい思い込みでしょ〜? お祓いなんて、もう大丈夫って気分になってもらうためのものでしかないんだから」
アンタもう聖職者辞めちまえ。
「あれだよ、あれ。えぇ……っと……、スパシーバ効果」
んだよそれ。プラシーボ効果だろ。
「…………プラシーボ効果?」
なんて九條さんのツッコミが鋭く決まった。
…………
……
……
結局、相談の結果、マジで何も収穫はありませんでした。改めて担任の先生の適当さが深く理解出来た程度で、有力な情報どころか、進展すらありませんでしたー。
巫女様は万が一、このアクセサリーが本物だとしても、それが悪いものだと決めつける理由にはならないと言われて、渋々と納得するしかなかった。
でも実際九條さんからしたらそうなのだ。このアクセサリーが手元にある事で、何か自分にとって悪いことが起きた訳でもない。少し不気味なだけで今の所は何の支障もないのだ。
ないならほっといてもいいんじゃない? っと適当すぎる有難いお言葉を頂いて、この話は終了した。
……結局無駄な時間だったな。