9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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戦いの始まり

 

「…………」

 

 ここは……俺の家? 

 

 気がつくと俺は自分の部屋のベッドの上で横になっていた。

 

 ……気がつくと? 俺はさっきまで何をしていたんだっけ……? 

 

「目が覚めたかよ、大将」

 

 カチカチと時計の針だけが聞こえる部屋の中で、レナ1人がしっぽりとテーブルの前に座っていた。

 

「レナ……? 俺は一体…………」

 

「まぁとりあえずはゆっくり休んでろよ。落ち着いてから少しずつ思い出せばいい。…………茶でいいか?」

 

 スっとその場を立ち上がり、キッチンの方へと歩きながら俺を気にかけてくれるレナ。

 

 ……なんだかんだで優しいよなコイツ。

 

「あぁ、ありがとう」

 

 カチャカチャと音を鳴らしながら、適当なコップに飲み物を淹れてくれているレナを見ながら改めて今日という一日を思い返す。

 

 確か…………そうだ、レナとルナと俺の3人で晩飯を食いに行ってたらあの女を見つけて、戦って…………負けた。

 

 深沢が協力してくれたけど、それでも2人じゃ勝てなかったんだ。

 

「はいよ」

 

「ん……」

 

 せっかく用意してくれたんだけど、気分的には全然まったりする余裕はない。

 

「そういやルナは?」

 

「さぁな、多分寝てる」

 

「そっか」

 

 今の時刻は……23時過ぎ……か、だいぶん寝てたんだな。

 

 ……? 

 

 そう言えば誰がここまで俺を運んでくれたんだ? レナか? 

 

「また何も覚えてないんだな、……まぁ今回はしょうがないけど」

 

「……? なんの事だ?」

 

「都の事だよ」

 

「みや……こ?」

 

 あれ? コイツらって九條さんの事を都って呼んでたっけ? 九條って呼んでたような……? 

 

「都がどうにかしたのか?」

 

「大将……アンタの脳は覚えてなくても、その身体が、その魂が覚えてるみたいだな」

 

 ……なんで俺は都と口にしたんだ? 今までは苗字で呼んでいたのに。

 

「教えてやるよ。アンタが都に奪われた記憶の欠片を」

 

 

 

 

 

 レナ説明中……

 

 

 

 

「本当かよ……それ」

 

「オレが嘘をつく理由がどこにあるんだよ」

 

 不可解な点やまだまだ理解し難い部分もあるが、とにかく分かったのは俺があの女から生かされた理由は、きっと九條さんが助けてくれたって事。

 

 あの時の殺害依頼の件を話している時に、「黒眼鏡の……」と発言していた。あれは多分俺が渡したものじゃないだろうか? 

 

 九條さん本人は絶対にそんなことをしないだろうが、彼女の周囲にいる誰かがそんな企みを練っていたとして、彼女はそれを止めてくれたのなら……一応辻褄が合う。

 

 そして最初は断るつもりだったのに、あんな悲しい笑顔でそれを受け入れたってことは…………

 

 いや、憶測だけならなんとでもなる。こうなりゃ直接本人に聞いてみるしかない。

 

 そう思ってスマホに手を伸ばし、RINGで連絡を取ろうとすると……

 

「…………都がいない」

 

 友達リストからもグループからも、九條さんのアカウントが綺麗さっぱり消えていた。

 

 そこには元々誰かがいたかのように、枠だけが余っている。

 

「どうやら本格的にもうオレたちとは関わる気は無いらしいな。どうする? 大将。これじゃあ会話も出来ないぜ?」

 

 俺は九條さんの電話番号を知らない。RINGを絶たれた今、ここにいて彼女と連絡をする手段はもう持ち合わせていない。

 

 俺が寝ている内にグループの方で高峰を除くメンバーが九條さんが居ないことについて色々と騒いでいる所を見ると……他のみんなも俺と同じ状況なのだろう。

 

『みんな見てくれ。都が急に俺たちとの繋がりを絶ったのは事情があるんだ。その内容までは俺もあまり理解出来ていないし、本人はそれを隠そうとしてる。詳しいことはレナから伝えさせるから、みんなはとりあえず待っててくれ。俺が何とかしてみる』

 

 RINGのグループチャットにそう呟き、俺はレナにスマホを手渡す。

 

「おい大将……アンタマジかよ」

 

「連絡する手段がもうないんだ。だったらこうするしかねぇだろ」

 

 きっと俺の考えを読んだんだろう。若干呆れるような態度でレナは頭を抑える。

 

「もし本気なら……それをすれば大将は立派な犯罪者だな。自分の立場を犠牲にしてでも……するのか?」

 

「あぁ……!」

 

 いくら嫌われてもいい。いくら俺が辛いことになってもいい。でも、やっぱり九條さんが何かを隠しているのなら、俺たちの為の《何か》を守っているのなら、俺は足枷になんかなりたくない。

 

「だから、みんなのことを頼む。事情を説明して俺とはもう関わらせないようにしてくれ」

 

「それでアイツらが納得するとは思わねぇけどな、オレは。特に…………希亜」

 

「アイツはルールを守らない奴らが嫌いだからな。敵視されることになっても仕方ないか」

 

 だが……それでもいい。

 

 九條さんが全てを心の底から()()()そうしたのなら……俺はもう何も言わない。けれど我慢をしているのなら…………俺は…………

 

 俺は…………

 

 

 

 

 

 

「じゃあレナ、あとは頼んだ。俺は都の家に行ってアイツが嘘をついたら………………」

 

 もちろん第一にそうするつもりは無い。本当に最悪のケースになった場合……

 

「誘拐してくる」

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