9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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※この回はかなり胸糞注意です。閲覧する際はご注意下さい。
そしてお食事中の方はひとまず時間を置きまして、時間をずらしてご覧になる事を推奨致します。
尚、BAD√ではありませんので悪しからず。BAD√はこれ以上ですので……

それと都ファンの皆様に深く謝罪致します。申し訳ありません。しかし、決して都の事が嫌いでこういったお話を作っている訳ではありませんので、ご容赦ください。


‪✕‬ 裏の顔、心の真実

 

 お気に入りのバイクを乗りこなし、夜も更けて人と車通りが少なくなった道路を可能な限りのスピードで飛ばしていく。

 

 なんで……九條さんは俺から記憶を抜いたんだろう。

 

 九條さんの家へと向かう途中でそんなことを考えていた。

 

 自分のことを忘れて欲しいという理由ならもっと別の記憶を抜いておくべきだ。そうしなかったってことはその抜かれた記憶の中になにか重要なことがあるってこと。

 

 レナから教えて貰ったことじゃあ、九條さんが海外へと行ってしまう事を聞いた俺はあまりに突然すぎる言葉に動揺し、彼女にひたすら責めるような勢いでそれを止めていたらしい。

 

 そこから先のことを軽くはぐらかされたが……2人で会話している途中で九條さんに意識と一部の記憶を抜かれて気絶したんだと。

 

 そしてその出来事の前後に起こった問題を考えると……やっぱり納得いかない。全部本人から直接聞くまで絶対諦めねぇ。

 

「もうすぐ……全て理解(わか)る……!」

 

 そんな俺の高ぶる気持ちをバイクに伝染させるようにアクセルを回し、更に速度を加速させると、タイミングを狙ったかのように俺に行き先を狂わせ、邪魔をするように次々に《雷》が降り注ぐ。

 

「ッ!?」

 

 四方八方で疎らに降り注ぐ落雷は、無差別に暴れており、最後には道路を封鎖するように前方に一際大きな雷が大きく轟く。

 

 そしてそこに現れたのは、いつぞやの半裸の雷男の(あづま)だった。

 

「イィヤァッハ──ーッ!!!」

 

 無数の雷を自在に操り、リズムを奏でるかのように激しく轟く轟音。

 

 これは簡単にはこの道を通らせてはくれなさそうだ。

 

「くっそ…………もう目と鼻の先だってのに」

 

 急ブレーキを使ってバイクを止めて、威嚇をするようにエンジンを空ぶかしさせる。

 

「悠の予言通りだな、本当に1人でやってきたか……ヤーハッハッハッ!!!」

 

「悪ぃな、お前にゃあ恨みこそあるが今はそれどころじゃないんだ。そこを通してもらうぞ」

 

「なんだ? 自分の女を盗られて焦っているのか?」

 

 …………コイツ、事情を知ってやがる。それじゃあ今回もコイツらがグルなのか。

 

「馬鹿言ってんじゃねぇよ、お前らが奪ったのは都の《自由》だろッ」

 

 そう言い放つと、今度は(あづま)の隣で時が飛ばされたように見かけたことのある男がワープしてきた。

 

「その代わりにボンボンとして生きていけるんだ、金のねぇ奴と結婚するよりはマシなんじゃねぇの? 兄ちゃん」

 

「お前は…………あの時の……!」

 

 あの電気男を追い詰めた時に助太刀してきたあの男だ。

 

「なんだ、貴様も来たのか(てつ)

 

「権力もある、金もある、そして力もある。未来も安定の人生勝ち組男だ、あんなに()()()()()()()()下手なことするよりゃ幸せなんじゃねぇの?」

 

「…………」

 

 その言葉はおかしくないか? そのセリフが出てくるのは異常じゃないか? 

 

 まだ1日目なんだぞ……? 

 

「テメェら……都に何した……」

 

「オイオイ……そんなに怒んなよ、俺ぁただ親切に止めてやってるだけだっつの。あの女の事は諦めときなってな」

 

「ふざけんじゃねぇぞ! 散々人を振り回しといて何言ってやがんだっ! 誰が諦めるもんかよ…………俺は必ず都を連れて帰るッ!!」

 

 急に手を出しといてそのくせ身を引けだぁ? 自分勝手が過ぎるだろうがよ……! 

 

 チマチマチマチマちょっかい出してきやがって、まともに喧嘩の仕方も知らねぇガキ共が……

 

「ヤハハ……! 良い眼だ、今にも人を殺さんとする覇気がある」

 

「……止めとけ(あづま)、今1体1(サシ)で殺り合えば、多分負けるぞ」

 

 おそらくほんの1秒程だろうか、(てつ)と呼ばれる男と本気で睨み合ったのは。

 

 その一瞬の一睨みで、お互いに圧を賭けた流れの殺し合いになる。

 

「どの道俺たちが今拳を交えたとしても、結果は変わらないさ。あの女はもう悠の物だし、IO5(アイオーファイブ)の連中もいる。この兄ちゃんに勝ち目はないさ」

 

「その通りッ!!」

 

 俺たち3人以外は誰もいないはずの道路の奥から、一際大きな声と共に様々な人影がこちらに歩いてくる。

 

 全員で6人程だろうか? ツカツカと歩いてくるメンバーの殆どは誰も知らない奴らだった。

 

「竹内君、君が1人でどれだけ無駄なことを企もうと騒ぎを起こしても、僕の都は決して渡さない! 彼女は僕が守りきってみせる!」

 

 追加で歩いてきた団体様の先頭を歩く、髪の濡れたいけ好かない男は、いちいち癇に障るような言い方で堂々と喧嘩を売ってきた。

 

「…………お前が黒幕か、都を何処にやった」

 

「彼女ならここに」

 

 俺の威嚇に狼狽えることなく、その男は右腕を高く上げるとその影から九條さんがひょっこりと姿を現した。

 

 あの男と同様に、彼女の髪もしたしたに濡れている。

 

 ……………………風呂上がりのように。

 

「都……!」

 

「何故、ここまで来たの」

 

 そして、彼女の瞳は深い海のように光が篭っていない。どこか諦めているような悲しい瞳だ。

 

「そんなこと決まってる! なんの説明も無しにいきなり姿を消したりなんかしたらみんな心配するさ!」

 

「そう」

 

 驚く程に冷たい声に流され、俺の言葉は風に靡かれて消え去った。

 

 何かがおかしい。

 

「「そう」じゃなくて、聞かせてくれ! 都は海外に行っちまうって嘘だろ!? 恋人ができたとか、アーティファクト集めを止めるなんてさ、冗談なんだろ!?」

 

「…………おめでたい人、どこまでも私を信じてるって顔してる」

 

「……何言ってんだよ」

 

「貴方みたいな落ちこぼれは、私たちみたいな選ばれた人間に簡単に利用されるって言ったの」

 

 ……!? 

 

 なんだよ……それ。

 

 どうしたんだよ…………いつもの優しい九條さんはどこいったんだよ。

 

「……え?」

 

「……貴方たちのような庶民の方と真剣にお付き合いするわけないでしょう? 学校でもバイトでも、毎日毎日大変そうに過ごしているのを見て……楽しませてもらいました。やっぱり底辺を見るって素晴らしかったよ」

 

 いつものどんな事にも一生懸命で、毎日を頑張って生きてる九條さんはどこいったんだよ。

 

「でも、もう飽きちゃった。私は悠くんと一緒に楽をして幸せに過ごしていくから、竹内くんもしっかりとお勉強してこの街の歯車になってね」

 

 …………本当にわかりやすい。

 

「嘘つけッ!! 都……お前何かが弱みを握られてるんだろ! それでそんなことを言うしか手段がなくて、わざとに俺たちを引き離そうとしてるんだ!」

 

「……お馬鹿さんには難しいお話だったかな?」

 

「大体言葉選びが嘘くせぇんだよ! 心配すんな! 今すぐ俺がこんなヤツらぶっ飛ばしてお前を助けて────」

 

「いい加減にして!」

 

 俺の言葉を遮ると同時に、辺りが静まり返る程の大きな声を九條さんは荒らげる。

 

「疎ましいの、そう言っていつもいつも上の立場からものを言って……偉そうにしないで」

 

「都……」

 

 棘のように痛々しい言葉を俺に刺しながら、九條さんは怒りを露わにするように思い足取りで俺に迫ってくる。

 

「だから俺はお前を助けようと────」

 

「私と悠くんの幸せの邪魔をしないでッ!!!」

 

 その瞬間に、バチンと響く音。

 

 ヒリヒリと痛む左頬から、俺が何をされたのかを確認できる。

 

 驚きのあまりに目を点にしながら驚いていると、彼女を見て右側に大きく伸びた右腕が、俺の視界に入ってきていた。

 

「ハハハハッ! 流石だよ都! 流石にここまでしつこいと確かにストレスが溜まっちゃうよね! 僕もスッキリとしたよ!」

 

「もう二度と……私たちの目の前に現れないで」

 

 そう捨て台詞を吐いて、彼女はくるりと振り返り引き連れてきた4人の人たちをボディガードのように扱い、自分の家の方角へと歩みを進める。

 

 そしてそれを笑い続ける先頭だった男。おそらく…………悠。

 

 先にいた(あづま)(てつ)も爆笑していたり、言わんこっちゃないと呆れていたりしている。

 

「待てぇぇぇっっっ!!!! 都ぉぉぉっ!!!」

 

 それでも俺は声を出して彼女を止めようとする。

 

「お前嘘つくなよッ!! 何か隠してんの…………バレバレだぞッ!!!」

 

 諦めずに、彼女に向かって叫び続ける。

 

 それと同時に駆け出して足を踏み出したその刹那に、突然()()()()()()()()ようにポンっと太い針のような物が現れ、俺の両足を貫く。

 

 バランスを崩した俺の身体はそのまま地面に強く打ち付け、1歩も歩けなくなった。

 

「そうやって全部隠し通す気かよ! お前の事だ! なんもかんも1人で背負い込んで犠牲になろうとしてんだろ!!」

 

 返事は…………返って来ない。

 

「まだ間に合う! 戻って来い! 戻ってきて……また俺にハンバーグを食べさせてくれよッ!! 俺だけじゃない! 翔も! 天ちゃんも! 香坂さんも! 希亜も! みんな都を待ってる! みんな都を信じて待っててくれてるッ!!」

 

「頼むよッ!! 俺は都がいなきゃ……………………何も出来ないッ!!!」

 

「戻って来い! 戻って来いッッ!! 絶対に戻って来いッッッ!!!」

 

「都ぉぉぉっっっっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冷たい風が吹く。

 

 静まり返った街中の道路で、俺はまた何も出来ずに倒れていた。

 

 今この場にいるのは……九條さんの彼氏と思わしき金持ちそうな男と俺だけ。

 

 残りのメンバーは動けなくなった俺の心を更に折るためか、両腕には雷で出来た能力の槍を貫いて、這いずることも出来なくなっていた。

 

「悲しいねぇ、竹内君。最後の最後まで都は裏切ったままだったね」

 

「…………」

 

「あれ黙りかい? あらら……せっかく色々と教えてあげようかと思ったのに」

 

「……………………ぶっ殺してやる……。都の人生をめちゃくちゃにしやがって…………!」

 

「何を言ってるんだい? こうなることは10年以上前から決まっていたんだよ?」

 

 コンコンと動けない俺の頭を何度も軽く蹴りながら、優越感に浸るようにその男は語り続ける。

 

「僕の父親は《コロナグループ》に因縁をつけていた。事情は詳しくは知らないけど、昔から僕達《近衛家》と《九條家》はとても歪な関係だった。表面上は仲良く、僕たち一族は強く恨んでいるっていうまぁよくある話だよ」

 

「だけど僕たち近衛家が社会的地位と力を手にして来た時、向こうの方から誘いが来たんだ。九條家の皆様は僕たちをとっても信頼していたみたいでね、共にコロナグループを大きくしていかないか? って素敵な提案さ」

 

「その時点で会社の乗っ取りは計画されていた。父親は運悪く道半ばで死んじゃったけれど…………その心は僕がしっかりと受け継いだ。そしてせっかくなら……あの素敵なお嬢さん、都も僕の物にしようと思ったんだよ」

 

「星の数ほど女を抱いてきたけど…………都はとびきり美しいね。あれだけ大きなおっぱいとぷるんぷるんの尻、成長していくにつれ早く汚したいと何度願ったことか……」

 

 …………屑が。

 

「まぁ僕的には? もう今更会社や九條家をぐっちゃぐちゃにした所でどうでもいいんだけど……あの身体だけは使ってみたいんだよねぇ……」

 

 結局お前らのワガママで全部狂ったんだ……! 

 

 勝手な思想を勝手に押し付けて…………勝手に全てを壊しにかかってやがる……! 

 

「まぁそんなに怒らないでよ、()()()手を出したのは謝るからさ」

 

 ……なんでこいつ、俺の考えを……

 

「読めているのかって? 僕の2つ目のアーティファクト能力で簡単に心理が読めるんだよ」

 

 …………クソが。

 

「さっき都とお風呂に入った時もね? ビクビクしながらとっても怖がってたんだよぉ〜」

 

 …………ッ! 

 

「胸を触るといちいち泣きそうな反応をしてね? 下半身に触れると目を瞑って震えてね? キスをすると気持ち悪いんだって! あはははははっっ!!」

 

 グリグリと俺の頭を強く踏みつけながら、高らかに笑う男。

 

 もう…………怒りで言葉が出てこない。

 

「強引に押し倒すとね! ごめんなさいごめんなさいって何度も何度も謝るの! それだけはまだやめてくださいってもう号泣! でもね? でもね!? 竹内君のことを盾にすると、その感情を押し殺してぜーんぶ受け止めてくれるんだ!!」

 

「いやぁ〜…………興奮したなぁ……!」

 

 殺す……! コイツだけは絶対殺す…………! 

 

 死んでも殺す……! 殺しても殺す……! 

 

 絶対殺す、殺してやる、今すぐ殺してやる……! 

 

 指を全部ちぎって殺す、歯を全部ぶち折って殺す、関節全部逆に折って殺す、目玉を両方潰してくり抜いて殺す、鼻も耳も削ぎ落として殺す、臓器を全部取り出して殺す。

 

 ありとあらゆる痛みを与えて殺してやる…………!!! 

 

「うっわぁ……そんなに怒らないでよ、大丈夫! まだ都は処女だから、それは暫くは奪わないから安心して? 焦らして焦らして都の心を完全に折るトドメの為に残しとくからっ!」

 

 腹が立つ……! 

 

 やっぱり都は無理してるんだ……! 隠してたんだ……! 

 

 俺を盾にってことは弱すぎる俺を守る為に1人で人生全部捨ててまで助けてくれてるんだ……! 

 

 偉そうに意気込んでおいて、格好つけて助けるなんて言っておいて、俺は何も出来ていない……! 

 

 俺が弱いから……! こんな奴に都が酷い目に遭わされてるんだ……! 

 

「ちく…………しょう………………!!!!」

 

 悔しさのあまり、強すぎた歯ぎしりで口中から血が溢れ出てくる。

 

 そんな俺を余裕の表情で見下ろしながら、男は俺の耳元である言葉を囁いた。

 

 

 

「都のおっぱい……柔らかいし美味しいよ……」

 

 

 

「ぶっ殺してや────」

 

「バイバイ」

 

 近づいてきた顔面を噛みちぎってやろうと顔を上げたその瞬間、ありえない爆音でバチバチと鳴り響く青白い閃光を首に当てられ、その瞬間に身体が言うことを聞かなくなる。

 

 これは…………スタンガン……

 

 体験したことの無い痛みをひたすらに浴びせられ続け、目がひっくり返るのが感覚で理解出来た。

 

 口元も緩み、ボタボタと液体が溢れ出て、下半身からは妙に生暖かい感覚が広がっていっていた。

 

「あがががががががががっっっっっっ!?!?!?」

 

 そして最後に…………バチンっと耳を塞ぎたくなる爆音が一瞬聞こえてきたあと、何も考えられなくなった俺は力なくその場で意識を失った。

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