9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
九條 都 奪還作戦、始動
《視点切り替え》
カツカツと足音を響かせながら、誰一人声を発することなく静かに怒りを押し殺している。
いえ……静かではなかったわね。
「ふん────! ふん────!」
天だけが鼻息を荒くしてドシドシと力強く歩いている。
「天、腹立つ気持ちは俺も一緒だけど……ちょっとは落ち着けって」
「何言ってんのにぃに! こんなの……ちっとも落ち着けるわけないでしょ!」
「そうですわね、
「…………フン」
相変わらずまとまりの無いチームね。仲間たちを先導するリーダーとして、私が誰よりも冷静にならないと……また失う事になる。
まぁ、かと言って私もどこまで堪えきれるかは分からないのだけれど。
「早速お出迎えのようね」
完全に眠りきった闇夜の街の中、その中心に堂々と待ち伏せをするように佇んでいる女性が、妖艶な色気を醸し出しながらこちらを品定めするように見ていた。
「えぇ、かなり待ったわ。せっかくあの子が倒れているのに中々貴女たちが駆けつけてくれないんだもの」
「……そうね、すぐにはバックアップしてあげれなかった。だからこそ彼は1人で挑んで……無様に敗北を喫した」
「随分と冷たいのね、貴女は竹内君のお仲間じゃなくって?」
「仲間よ」
左の瞳に熱い力を纏わせ、目の前を立ふさがる女性を《罪人》と見なし、能力の準備を始める。
それに続くように春風と天がやや大きくなった
「肝心な時に私たちを頼ってくれない愚者の……大切な仲間」
「お前が……先輩たちをいじめたのかっ!」
「貴女が強いのは承知しています。ですので初めから全力で……!」
春風は左手を胸に構え、一瞬のチャンスを逃がすまいと最大限の警戒をして威嚇している。
天はまるで銃を構えるかのように指先を突き出し、その先端に青い光を凝縮させる。
「素敵な友情ね、九條 都を取り、あの子に選ばれなかった
そう言って、敵である女性は指先からキラキラと小さく輝く粒のような光を放出させ、ふわふわと彷徨うようにゆっくりとその光を飛ばしてくる。
そしてそれが近くに飛んできた瞬間に、思わず怯んでしまうほどの閃光を放ち…………
激しく衝撃を周囲に放つ。まるでそれは爆弾のようで、私たちが立つ場に、凄まじい熱気が漂い始めた。
「…………
「蓮雫……」
「こう言うと、大将が力を貸してくれてるみたいで調子よくなるんだ」
パーカーのポケットに手を入れたまま、強く足踏みをするように彼女は蓮太の能力を使っていた。
どうやら熱を感じる程度で済んだ理由は、反射の能力を駆使して守ってくれたからみたい。
「……完全に俺空気だよな、ここにいてもただみんなの足を引っ張るだけな気もするけど…………一瞬の隙を作る程度なら俺でも……」
……敢えてこの場では野暮な事は言わないでおきましょう。力を合わせたいと願う彼の気持ちは分かるから。
《不明な能力》の覚醒に……期待するわ。
「我ら《ヴァルハラ・ソサイエティ》一同、自由を奪われた友の為……今この時を以てここに宣戦布告するッ!」
「あら……私たち
……
私たちは奪うために、救うためにやってきた。戦いの覚悟は出来ている。
「……望むところよ」
《視点切り替え》
「ん…………」
ヒリヒリと感じる痛みに刺激され、無理矢理起こされるように意識を取り戻す。
すると俺は建物の陰に寄り添うように寝かされていた。
「…………あれ? 手当されてる……」
倒れた記憶のある場所から少し移動しており、きっちりと丁寧に施された応急処置。効果は流石に期待できないが…………何故か異常な速度で身体の傷が癒えている。
その理由……心当たりは一つある。だからこそ俺は咄嗟に能力を使用して彼女を出現させた。
「よぅ……目が覚めたかよ」
現れた彼女は力なく俺の目の前に座り込んでおり、素で表したその身体には四肢に穴が空くような傷が残っており、俺との類似点を感じさせた。
「ルナ……お前……!」
「アンタに魂の傷を治して貰えるんだ、だったらその逆もできて当然だろ?」
「そうじゃねぇよ! 何やってんだお前……!」
「お互いに細胞を活性化させる力があるのなら、オレの方からアンタに渡せばいい。少なくともアンタが前提で必要になるオレよりも、《奇跡》を持つアンタなら、この喧嘩……勝機はある」
……勝機か。
敵は能力不明の人物多数、《雷》使いに、《爆発》使い、下手をすれば《石化》もいる。
能力だけでも手に負えないのに兵力差もある。
こんな状況で…………
「諦めたくなる気持ちは……オレにも分かるよ。実際オレもあの時諦めてたからな。だけどさ、勝負ってのは最後まで何が起こるのかわかんねぇんだ。だからこそオレは今アンタの幻体としていられてる」
「アイツにとって、アイツらにとってアンタは希望なんだ。だから
……好き?
好きなんて考えたこと無かった。誰かと付き合いたいだなんて思ってもなかった。
でも、彼女は最初から特別だったし、俺に持っていない物を持ってたから、その心に惹かれていったんだと思った。
友達……仲間……友情……確かにどれも合っててどれも違う。
なんでどうしても取り戻したいのか。
なんでこんなにも必死になっているのか。
なんであの彼氏のセリフにあそこまでイラついたのか。
…………そんなこと決まってんだろ。考えなかったんじゃない。考えないようにしていたんだ。
俺は……都を────
「あぁ……好きだ」
愛してる。
「フッ、だったら立てよ、そんで全部終わったらオレを治してくれよな」
「……そうだな。無事に都を奪い返して、アイツをぶっ飛ばしたらすぐに治すよ」
今なら魂が感じてる。本当に微力でちゃんと扱えるかは自信が無いけれど…………でもそこに確かに感じる。
俺の
バイクは…………アレか。
「じゃあな、ルナ。助けてくれてありがとう、後はゆっくり休んでてくれ」
そう言って能力を解除していると…………そのギリギリで軽く背中を押されて最初の一歩を踏み出さされた。
「信じてるぜ、オレの…………た、た……、大将……」
「恥ずかしいなこの呼び方……!」
「…………あぁ、任せろ」
俺は……
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5人を見捨てられないッ!
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それでも都を助けたいッ!