9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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1人の犠牲か5人の犠牲か……

 

 今のままじゃダメだ。

 

 無鉄砲に挑むだけじゃ全く歯が立たない。気合いや根性だけじゃ結果は何も変わらない。

 

 なら俺に必要なのはなんだ? 今すぐに強くなることなんて出来ない。どんな劇薬を使ってもドーピングなんてものも出来ない。新たな力を宿すことだってできない。

 

 今俺ができることで精一杯を捻り出すんだ。

 

 力一杯に戦う方法を…………

 

《オーバーフロー》……奇跡と呼ばれる理由は、ついさっき理解出来た。確かに奇跡だ。もし俺が()()に使いこなせればまさに文字通りの最強と呼べるだろう。

 

 …………あれなら、いけるか? 

 

「技名を考えないとな…………ギア……いやダメだ。火事場の…………これもダメだな。うーん……」

 

 いや……待てよ? 多分この能力は俺自身にだけ乗せることが出来るエンハンス、要は範囲が異常に狭いバフみたいなもんだ。もし成功したのなら……レナやルナにも同じことができるんじゃ……? 

 

 つってもまずはやってみないとわかんねぇよな。

 

 なんて考えていたその時、ピコンとRINGに1件の通知が届いてきた。その内容は高峰からの位置情報の知らせ、どうやら西の方にある海沿いの港町の外れにいるようだった。

 

 何故いきなりこんなものを送ってきたのかを疑問に思ってると、ポンポンと続けて文章が送られる。

 

『訳あって今は秘密裏に君の友人を追っている。私の位置は把握出来たか? その辺に一隻の豪華客船が停泊している、九條氏はその船に乗り込み、海域を渡り私たちの知らない未知の大地へ向かうそうだ』

 

 ……え? なんでアイツはそんなことしてるんだ? なんでアイツはそんな所にいるんだ? 

 

『先回りには成功したが、彼女が船に乗り込むのは時間の問題だろう。これが彼女を救出できる最後の手段だと思え。私たちで可能な限りの足止めをする、早急に追いかけろ』

 

『以上』

 

 おいおい……なんなんだよ次から次へと……! 

 

 だったら都ん家に行ったところで何も意味ねぇじゃねぇかよ、しかも足止めするってどこでするんだよ、あの情報付近でってことか? 

 

 だったらすぐにでも切りかえしてって…………あれは? 

 

 ぶっ飛ばしていたバイクを無理やり止め、すぐさま()()に駆けつける。

 

「おい…………どうなったんだよこれ……!?」

 

 そこにいたのは《爆発》能力を扱う異常な強さを持った不思議な組織名を名乗るあの女。

 

 そして苦い顔をして地面に片膝をつき、または這いつくばり、それでも諦めずにあの女を倒そうと戦う5人の仲間たち。

 

 状況の悲惨さは火を見るより明らかだった。

 

「あら……随分と遅かったわね。もう彼女たち死にかけてるわよ?」

 

 余裕綽々といった感じであちらこちらに埃が舞い上がる戦場で、自販機で買えるようなペットボトルのお茶を飲む女。

 

「誰が死にかけてるってっ!」

 

 その言葉に反発するように翔が乱暴にその辺にあった鋭利なシャッターの切れ端を投げつけるが……あの女は能力を使うことなく、素手でそれを掴んで投げ捨てる。

 

「ろくに私に対抗できない落ちこぼれ君よ」

 

 チラホラとみんなを確認すると、レナ以外のメンバーは必ずどこかを怪我して流血しており、もう打つ手がないように思えた。

 

 特にそれを感じたのは、香坂さんが紋章を浮かばせていないこと。つまりは能力を発動するとまずい結果に傾いてしまう事を意識しているんだろう。

 

 つまりは5人の内実質能力者は3人、しかも攻撃性能があるのは希亜だけだ。他2人は《反射》と《消滅》、しかし反射は敵の攻撃に依存されるし、消滅は敵とはいえ人間に使うわけにはいかない。

 

 しかし希亜もバランスが取れない力だ、一瞬の隙を突くような繊細な攻撃は不可能だし、溜め動作も必要、しかも本人は無防備になる。

 

 そして爆発は反射不可能な攻撃だった。仮に消滅させても相手の爆発する攻撃の玉は1発だけじゃない。身体能力でも歴然の差がある。むしろよくこの被害で抑えたと褒めるべきだろう。

 

 ……正直この5人じゃあの女に勝てる可能性は…………無いとは言わない、けれど例えようがないほどに低い、低すぎる……! 

 

 けれどチンたらしてたら都が俺たちの手の届かない所へ行ってしまう、そうなったらもう俺たちじゃあ止められない! 

 

 もちろん俺がこの場に残ってみんなと戦ったところで勝てる可能性はほんの少し上がる程度だ、ほぼほぼ負けてしまうだろう。

 

 でも……俺がこの場を見捨てて都を追っかけてったら、この5人を見殺しにするようなものだ、都が仮に助かってもそれじゃダメなんだ! 

 

「グダグダ迷ってんじゃねぇよ大将ッ!!」

 

「レナ……でもお前……ッ!」

 

「どの道誰かが先に行かなきゃ都は止まらねぇ! この中の誰が傷ついても、誰が死んでも、振り返らずに真っ直ぐ進み切るやつが居なきゃ都は助けられねぇ!」

 

「相手が強いのはみんなが知ってる! 死と隣り合わせのこの戦いは、全員が覚悟して挑んできたんだ! そりゃ最高の結果を求めてはいるが……もう甘えたこと言ってられる場合じゃねぇだろ!」

 

「オレたちを捨ててでも都を連れ戻せよッ!!! 大将ッ!!!」

 

 なに……言ってんだよお前……! 

 

 俺にお前らを捨てろって言うのかよ……!! 

 

「蓮太……先へ行きなさい」

 

「希亜……」

 

「少なくとも私たちを信じていると言いきれるのなら、この場にいる全員を置いて先へ急ぐべき。負けるつもりも、死ぬつもりもないけれど……今貴方が止まれば全てが間に合わなくなる。蓮雫の言葉から察するに九條さんはここにはいないのでしょう?」

 

「で…………できるかよ! お前らを見捨てるなんて……!」

 

「この世の理は等価交換。何かを得るためには何かを犠牲にしなくちゃいけない。だから行って。九條さんを救えるのは貴方だけ」

 

 なんでそんなこと言うんだよ……! 

 

 なんでもう生きることを諦めてるんだよ……! 本気でそうするつもりなのかよっ!!! 

 

「私も貴方が好きだから、私は貴方の幸せを守りたい。だから行きなさい。全てを踏み台にして、全てを乗り越えて、私たちの……彼女の……貴方自身の未来を掴む為に」

 

 ……! 

 

 なんで……なんで……! 

 

 俺はどうしたらいい……!? 高峰がアイツらを止めてくれるってのにも限界はある、過信しすぎると本当に手遅れになっちまう! 

 

 だからって先を急いだら……大切な仲間がほぼ確実にいなくなってしまう……! 

 

 どうしたらいい! どうしたらいい!? 

 

 俺は……! 俺は…………!





はい。ここに来て第1選択肢でございます。彼の行動でこの先の未来は大きく変化します。

この場では敢えて深くは申しません。貴方達の信じる道をお決め下さい。

この決断のリミットはリアル時間16日までとさせて頂きます。8月16日までに選んで下さい。どうか……ご武運を。
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