9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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魂の叫び

 

 風を切り、暴走に近い形でどんどんバイクを走らせていく。正直こんなに速度を出したのは初めてだ。

 

 最低限のルールくらいは守っちゃいるが……今はそれどころじゃない。そんなものを守ってチンたらしていたら全てがパーだ。

 

 そしてしばらくの間真っ直ぐに目的の場所へと向かっていると、その道中で複数人の人影が暴れているのが見えてくる。

 

「…………高峰と深沢っ」

 

 それによく見ると様々な異能力の跡や音が確認できる。水のようなものが巻き散らかされていたり、当然雷も、それに不思議な形をしたポンプのようなダムもあった。

 

 それは正面からはボッコりと凹んでいるだけだが、角度を変えて反対側を見ると、1面が無くなっているほどの大穴が空いており、まるで衝撃を貫通させたような跡まであった。

 

 どれだけ激しい戦いをしたらここまでの被害が出るんだろう。

 

 コイツらにも協力してやりたいが……それをしてしまえばさっきの俺の決断は……! 

 

 と勢いを殺さずにその乱闘の中を突き抜けようと加速していった時、その道を開けるように高峰が素早い体術で戦っている相手を蹴散らして、戦場に隙間ができる。

 

 あまりの速さに会話をすることは出来なかったが、「行け」と言わんばかりに高峰は親指をクイッと奥へと向けて、ニヒルな笑みを浮かべている。

 

 …………ありがとう。

 

 そうして俺は再び仲間を置き去りにして都が連れ去られている客船、フェリーまで突っ切って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてとうとうたどり着く、幾多の仲間を信じて、数々の心を踏み台にして……やっとたどり着いた。

 

 しかし岸からは中途半端に船が離れており、タラップを使ったとしてもとてもじゃないが歩いて乗り込めるような距離じゃない。

 

 いや……勢いをつけて俺の能力を使って飛台を作れば…………って待てよ? これってあの能力を使ういい機会じゃないか? 

 

 でもまずは…………やっぱ伝えないとな。

 

「ス──…………!」

 

 幸いここには民家はない、どれだけ大きな声で叫ぼうと誰にも迷惑はかからないだろう。

 

 だからこそ……! 

 

「みーやーこ────ーッッッ!!! 助けに来たぞォォ──────ッッッ!!!」

 

 あの場で乱闘に参戦していたのはアイツら含めて8人程度だったはず、だったらあの時のメンバーを逆算して……残るは都と名前は…………悠……! 

 

 来たことを知らせる為に全力の大声で叫ぶと、微量に揺れる船のデッキから2人の人影が姿を現した。

 

 その2人はもちろん────

 

「凄いね君のお友達は、こんな所まで追いかけてくるなんて……凄まじい執念だよ」

 

「…………えぇ」

 

 都と悠。

 

 一方的に都に腕を回して、高みの見物でもするかのように俺を見下ろしている。

 

 相変わらずムカつく野郎だ。

 

「いい加減に諦めたまえッ! 都はもう君の顔なんか見たくもないんだ! だからわざわざ白巳津川から離れる為にこの船を用意したんだぞ! 何時まで僕の彼女を苦しませるつもりなんだッ!!」

 

「その()()()から救う為にやってきたんだよッ!!」

 

 あの男の腹の中は十分すぎるほど理解出来た。どれほど腐っているかも、どれほど狂ってるかも。

 

 だからこそ俺はあんなやつからは助けたいと思った。これから先の未来、都がどんな人を好きになっても構わない。()()()()()()()()()()()()()()()()()、以前言っていた好きな人と無事に結ばれて本当の幸せを味わって欲しいから……助けたい。

 

 絶対に、今お前の隣にいるソイツとだけは幸せになれないから。

 

「もうやめてっ!!」

 

 都の少しガラガラになった叫び声が響いてくる。

 

 何度、そうやって叫んだんだ? 何を何度も叫んだんだ? あの時の俺に向かって放った言葉や、今の言葉だけじゃそこまで喉を痛め付けることは無かったはずだ。

 

 ……やっぱり、辛いんだろ? 

 

「どうして……そこまでしつこく追ってくるのッ!? 私はもう貴方の事なんか忘れたいのにッ! 二度と現れないでと伝えたでしょうッ!?」

 

「なんで……何度も何度も私の前に現れるの…………!」

 

 強く唇をかみ締めて、祈るような目つきで俺を見る都。

 

 本当に、何かを我慢しているのは丸わかりだった。

 

 そんなの決まってんだろ…………! そんな男と一緒にいてもお前は幸せにはなれないからだ! 

 

 一生そうやって自分の心を殺して生きていくつもりのお前をここで見放したら、お前はこの先ずっと泣き続ける! 

 

 そんなの…………そんなの…………!! 

 

 

 

 

 

 

「好きな人には笑ってほしいじゃねぇかっ!!!!」

 

 

 

 

 

「────ッ」

 

 その言葉を彼女が聞いた時、より強く唇をかみ締め、拳をキュッと握り、強ばった顔で真っ直ぐに俺を見つめてきた。

 

「この先お前が何度俺から逃げようとも、何度俺を拒絶しようとも、何度でも何度でもお前を奪いに行くッ!」

 

「何年かかろうが何十年かかろうが、ジジイになっても歩けなくなっても、死ぬまでお前を追いかけ続けてやるッ!」

 

「お前が心の底から笑顔になれるその日まで、俺は絶対にお前に見捨てないぞッ!! わかったか馬鹿野郎ッ!!」

 

 だから言ってくれ。

 

 都の本心を。

 

 都の想いを。

 

 もう我慢するな、お前が何を背負っているかは分からないけれど、願ってもいいだろう? 

 

 俺達も無事で、背負っているものも無事で、自分の幸せも感じられる……そんな明るい未来も。

 

 ごく普通の誰もが夢見る幸せを。

 

「後は……お前次第だ、都ッ!! 俺はまだお前の本心を聞いてねぇッ!!」

 

 顔を俯かせ、プルプルと震える体を両手で支えて必死に堪える都。今はきっと戦ってるんだ。自分自身の心と、背負った《何か》と戦う心を。

 

 そんな都からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちているのが見える。

 

 後…………もう一押し……ッ! 

 

「都ッ!!」

 

 すぐにでも駆け出してやる。お前がそれを望んでくれたのなら、俺は、俺は…………! 

 

 だから聞かせてくれ、都! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は聞き逃さなかった。ひたすらに彼女を信じて、追いかけ続けてやっとそれが聞けたんだ。聞き逃すはずがない。

 

 大丈夫だ、安心しろ。どんな結果になっても、どんな事が敵になっても絶対に見捨てないから。絶対に守り通すから。

 

 絶対に……救ってやるから。

 

 

 

 

 

 

「助けて…………! 蓮太くん……ッ!」

 

 

 

 

 

 ……。

 

「やっと…………言ってくれたな」

 

 簡単にかき消されそうなほどに、か細い声だったけど……ちゃんと俺の耳には届いたぞ。

 

「待ってろ、すぐに行く!!」

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