9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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蓮太VS悠

 

「ふんっ!!」

 

 バイクを岸に放置し、足場のない空中に身を投げるように勢いよく飛び出す。もちろんこのままだと海の中へとフルダイブしてしまい、救出どころの話ではなくなるだろう。

 

 だが、俺は足場を作れる。能力を発動して鏡の足場を作り、それを蹴ってはまた1枚、蹴ってはまた1枚と無理やり海の上を渡っていき、都たちと同じデッキへと足をつけた。

 

「ふぅ…………たどり着けた」

 

《オーバーフロー》を使わずにここまでれたのはでかかったな。空中という身動きのしづらい場所で悠が攻撃してこなかったってことは、遠距離攻撃の類は持ち合わせていないんだろう。

 

 少し助かった。

 

「や、やめろ! 僕の都に何をするつもりだ!」

 

「そのくせぇ演技はやめろよ。クソ野郎」

 

 コンコンと靴擦れを直しながら、戦うべき敵を睨みつける。

 

「…………」

 

「それにさっき言っただろ、何するもクソもあるか、俺は都の《自由》を奪い返しに来た」

 

 俺が知ってる中で、この男の能力は2つ。片方は知らないけど、もう片方は読心能力……

 

 さて……どう攻めるか。

 

「クックックッ……はははっ…………!」

 

 まずはどうやってぶん殴ってやろうかを考えていると、あの男は何かに耐えきれなくなったように急に笑い出す。

 

「まるで姫を助ける勇者様、主人公だねぇ……竹内くん……」

 

「あ? 勇者?」

 

「その勇敢な心もどこまで抱くことが出来るかな?」

 

 そして不意にあの男は俺を見ると、その瞳の周辺に青く光る紋章が浮かび上がる。

 

 ッ!? これって敵だったあの時にルナが使ってた能力じゃあ…………!? 

 

 そう気がついた時にはもう遅く、俺の身体はたちまち痺れたように動かなくなり、自由を失った。

 

「これ…………は……ッ!!」

 

「ん〜? あれぇ? 中々能力が進行しないな…………」

 

 だが、その攻略法は心得ている。

 

 本当に良かったよ……あの時に一方的な殺し合いを強制されてさ! 

 

反射鏡(リフレクション)ッ!」

 

 弱点は視線、鏡の能力を使えば視界を遮ると同時に相手は自分自身を見ることになる! 

 

「……チッ。やっぱり簡単には殺せないか……反射も厄介だけど何故お前には進行が遅いんだ……?」

 

「馬鹿みたいに能力を使えよ、全部跳ね返してやるから」

 

 進行? なんの事だ? もしかして、あの能力って動けなくなるだけじゃ終わらないのか? 

 

「まぁいいや、とにかく邪魔だよ都。退け」

 

 そう言って男は都の胸に手のひらを当てると、なにかの能力を発動したようでほんの少しだけ手のひらが光ったように見える。

 

 そしてその光が収まるや否や、デッキの奥にある鉄製の壁に向かって都は急速に飛んでいき、ビタンっと張り付くようにぶつかってしまった。

 

「うっ……!」

 

 ガンっ! と激しい音が響き渡る。彼女は必死に壁から身体を離そうと力を入れているが……ゆっくりと壁から少し手が離れたかと思えば、また勢いよく壁に張り付く。

 

「てめぇ……!」

 

 きっと磁力を操る能力なんだろう。それは簡単に察することが出来たんだが……雑に扱う都への対応にどんどん怒りが増していく。

 

「そう言えばさっき言ってたよね? えぇーっと……なんだっけ? 「ぶっ殺す」だっけ?」

 

 ……まだ使うつもりは無かったけど我慢ならねぇ。一瞬、一瞬だけアレを使ってやる……ッ! 

 

「殺す殺すって大声で言うもんじゃないよ、弱く醜い奴ほどそうやって馬鹿騒ぎするもんさ」

 

身体強化(フィジカルブースト)…………」

 

 四つ目の能力を解放し、脳の無意識のリミッターを無理やり解除する。するとその途端に激しい頭痛と耳鳴りが俺を襲い、一瞬意識がぐらつくが…………力の限りに足場を蹴り、今までに感じたことの無い速度で敵の男に飛びかかった。

 

「第一、ろくな力も持ってない男が僕を────ぶへっ!?!?」

 

「ぶっっっっっっっとべッッ!!!!!」

 

 明らかに物理法則を無視した現象を巻き起こし、力の限りに男の顔面をぶん殴る。

 

 40%の力でぶん殴った拳はピキピキと悲鳴の音を上げて、それでもその衝撃を逃がすまいと男の顔を突き抜けるように殴り飛ばした。

 

 殴り飛ばされた男はそこら中にあるテーブルや椅子等の物を巻き込みながらも激しく転がり進んでいき、やがて大きな箱が山積みになってある場所へ勢いよく衝突する。

 

 そんなアイツを確認してその場に着地を済ませると、その瞬間に脳が焼けるように熱を帯び、アイツを殴った左拳が真っ赤に茹でられたタコのように充血し腫れていた。

 

「うあっ……! ぐぐっ………………!!」

 

 ジンジンするなんてレベルじゃない……! 何だこの痛み……! や、やべぇ…………! ボウリングの玉を手の上に落としたみてぇにほぼ感覚がねぇ! 

 

 骨でも折れたか……!? 

 

「はぁ……! はぁ……! 《オーバーフロー》……欠片ほどの力でこれかよ……!」

 

 コイツの奇跡の力ってのは、要するに《限界の枷を壊す力》。今のは俺の人体の出すことの出来るありとあらゆる力を無理やり解放させた結果、ああなったんだ。

 

 人体が出せる力の限界はせいぜい2~30%程度と言われている。最も高い力を故意に得られたのは約30%だ。俺の能力はその限界の上限を壊して更なる《進化》を強制させる力。

 

 まさに文字通りの《オーバーフロー》。ただその限界を超えた力に身体は対応出来ないようで、トレーニングをして少しずつ慣らした訳でもない俺の骨や筋肉は、その急激な一瞬の成長に耐えられなかったようだ。

 

「……そう簡単に扱うもんじゃねぇな」

 

 肉体の強制進化なんてやっぱり思いついても実践しなけりゃ良かった。もうこの戦闘で左腕は使えなさそうだ。

 

 それでも、この一撃であの男を倒せたら万々歳なんだが…………

 

 なんて考えていると、アイツが飛んで行った方向から物がガラガラと動いて落ちる音が聞こえてくる。

 

 やっぱそう上手くはいかないよなぁ……

 

 ミシミシと痛む腕を抑えながらその場を立ち上がり、改めて戦闘態勢を整える。

 

「痛いなぁ……もう……ちょっと油断したらこれだよ」

 

「あれだけの力でぶん殴ってよくそんなにケロッとしてられるな……」

 

 こっちはもう《オーバーフロー》は使いたくないってのによ。

 

「簡単な話だよ、殴られた瞬間に身体をひねって衝撃を逃がしたんだ。ダメージは最小限に抑えてある」

 

 こいつも喧嘩慣れしてそうだな、咄嗟にそんな行動が出来るなんてよほど殴られ慣れていないとできない芸当だぞ。

 

「そして君にはもう僕を殺すチャンスはやってこない」

 

「吠えてろ……ッ!」

 

 余裕をぶっこいている男に向かって走り出し、すぐさま離れていた距離を詰める。

 

 おそらく磁気能力で拘束されている都を本当は助けてやりたいが……そんなことをしていたらコイツがどんな事をするか分かったもんじゃない。

 

 だからまずやるべき事はこの男をぶっ倒す! 

 

 そして十分に近づいてから、ジャンプして右脚で相手の顔を蹴ろうとする。その瞬間────

 

「右脚の蹴り」

 

「──ッ!?」

 

 船から落ちるように蹴り飛ばしてやろうと足を振るうと同時に、いや蹴る直前にまるでそこに攻撃が来ることが分かっていたかのように躱される。

 

「ふむ…………左脚のソバットから右腕のストレート」

 

 だったら最大の弱点となる攻撃を躱した瞬間に左脚の蹴りで怯ませたあとに右腕でぶん殴ってやる! 

 

 って…………え? 

 

 続けて俺が繰り出した攻撃もスカスカと空振りが続き、相手に一切のダメージを与えられない。

 

 それどころかなんで……!? 

 

「なんで俺の攻撃が当たらないんだ? と言いたいの?」

 

 なんで俺の攻撃が当たらないんだ? 

 

 ──ッ!? 

 

「ふふっ! はははっ!! そもそもだよ? あんなに強力な能力を持っているゴミたちをどうやってコマにしたのかなんて考えたりしなかった?」

 

「《電気》に《互換》に《爆破》に《水》あと……《衝撃》もいたかな? これだけの力がありながらも何故みんな僕に逆らわないのか……それは金と更なる力だよ」

 

「対等な立場を演出するために金を使う。そしていくら強力な攻撃があっても僕には届かないという現実! わかりやすいように説明しようか? 君の攻撃は僕にはもう()()()当たらないよ」

 

 ……悔しいが反論できない。事実として初撃以降は全ての攻撃を綺麗に避けられている。

 

 しかも俺が攻撃すると判断したのと同時に読まれている。

 

 クッソ……まるで《覇気》だな。あーあ、俺も体がゴムならなぁ…ニッカニカに笑ってぶん殴ってやるのに。

 

 つって、ないものねだりしてもしょうがない。だったら仕方ねぇ……《オーバーフロー》を使ってまた初撃の時みたいに…………

 

「《オーバーフロー》? それが最初のやつかい?」

 

 また俺の頭の中を…………

 

 ……ん? 

 

 

 

 

 

 …………! そっか! 

 

 え? 待てよ……!? それじゃあコレって…………どうやって勝てばいいんだ!?

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