9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
心は揺れ動く。
濁った心だからこそ、他人の濁りを見つけることが出来る。
その濁りが清められた時、その枝は姿を現す。
その為には…
先生達の相談事も、無事に終了し何の成果も得られない結果になったあと、俺はそそくさと家に帰ることにした。
先生は、「男の子なんだから2人で九條さんを送ってやりなよ〜」なんて言ってたが、丁重にお断りさせていただいた。そりゃあそうだろ? なんで俺がそんな面倒な事をしなくちゃならんのだ。わざわざ送り届ける義理はない。
一瞬少しだけでも仲良くなった方がいいか? なんて思いもしたが……下手に距離を縮めすぎると、慣れない出来事に思わぬ失敗を重ねそうで止めることにした。そもそもとして、不思議なアクセサリーを持っているもの同士……なんてある意味特別な関係になっているんだ。これを話題にすれば何かあった時にとりあえずは怪しまれることなく話すことが出来るだろう。
あくまで俺の目的は、能力を持つアクセサリーの収集。そんなに急がなくてもまだ大丈夫だ。
それに、俺や九條さんがこのアクセサリーを手にして一日が経過した。例えば俺たち2人以外の人間が仮にアクセサリーを手に入れていたとしたら……そろそろ好奇心に耐えられなくなる奴も出てきてもおかしくない。
能力こそわからないが、アクセサリーは複数あるという仮説はそのままでも良さそうだ。細かな差はあれど、髪飾りのアクセサリーとピアスのアクセサリーは似た物。つまり…………おそらく俺の目的の物だ。
だからこそ息を潜める。出来るだけの最低限の準備は済ませた。だから後はこれからの事を考えよう。
まず第一にあのアクセサリーの……そうだな、分かりやすいし「呪い」と呼ぼう。
アクセサリーの呪いによって決して持ち主から離れることの無いあのアクセサリーだが、それをどうにかすることは出来ないのか?
この課題をどうにかしないと、俺はどんな目的の物を見つけることが出来ても、それを自分のものにすることが出来なくなる。
何か条件があるのなら……それを見つけることが出来たら一番いいが、そんなものが簡単に見つかるようなら、九條さんは先生にお祓いの依頼なんてしないだろう。
これは俺だけじゃなく、九條さん以外に存在していると仮定している人達も困っているはずなんだ。俺みたいなバカは別として、普通はまず不審に思うだろう。どれだけ離れた場所にいても、いつの間にか手元に戻るのだから。
ある種呪いの類ならば……そりゃ解呪する事が手っ取り早いが……適当とはいえ、本職の巫女様がああ言ってたんだ。その路線は今は一旦無視していいだろう。
だとすると何かの条件を達成する。これも正直どうかと思う。
普通に生活していた俺が、何か決定的な瞬間を見逃した……なんてことはない気がするんだ。本当にいつも通りに何気なく生きていたら急に手元にあったんだから……記憶力が良い方ではないこともあって、これも難しい。
多分、1番手っ取り早い方法は……
所持者を殺すこと。
あのアクセサリーは、間違いなく「元の場所」ではなく、「持ち主の場所」へと帰ってきている。その証拠に、俺と九條さんが経験した怪奇現象は全て自分のポケットの中等の手の届く範囲に「必ず」戻ってきていた。
だとすると、その帰るべき持ち主がいなくなってしまったら?
きっと、あのアクセサリーは帰るべき場所を失って、新たな「家」を探すんじゃないだろうか? もしくはそのまま帰ることなく放置……なんてことも有り得る。
だからこそ、1番手っ取り早いのは殺人。
だかこれは色々と面倒だ。動かせる手駒が無いし、何よりも証拠がひとつでも残ると終わり。そんなリスキーな事をしなくても楽に手に入る方法がある。
それが、横取り。
今までの仮定が全て正しいとして、誰かがアクセサリーを私利私欲のために使ったとする。もちろん、それを許すことの出来ない奴も出てくることになるだろう。
そうなると、間違いなく欲望にまみれた人間は、自分が手にしたアクセサリーを離したくはなくなるだろう。それのおかげで人生が変わったりしたら尚更。
実際にそれほどの力があってもおかしくないんだ。それは俺の能力だけでも証明されている。
「反射」の力があればどれだけのことが出来るか。日本だけでなく、海外で未だに行われている戦争や兵器開発。
国内でも、物に対する反射がある事で、武力行使に出ることだってできるだろう。だって自分は傷を負うことがないのだから。
しかも俺の鏡は形も変化することが出来る。本当にクズが手にしたりしたら、道路でも走っている車にちょっと当てるだけで大事故を起こすことも可能なんだ。
「誰」が「どんな」能力を持つのが分からない以上、ありとあらゆる可能性が残っている。
だからこそ、未体験の能力を手にする人間が、簡単に手放したりなんかは思えない。となれば戦いが起こるのは必然。
そして戦いが起こる以上はどちらかが負け、どちらかが勝つ。負けた方のアクセサリーをタイミング良く奪うことさえ出来れば……俺は何個もアクセサリーを手に入れることが出来るだろう。
そんな上手く行くものか? なんて思うかもしれない。だか、よく考えてみてくれ。俺は「反射」だぜ?
いかなる攻撃もいかなる手段も、俺なら相手に返すことが出来る。つまり、しっかりと作戦を練れば相手の自滅か引き分けかしかないんだ。
最初こそ、雑魚能力だと思ったが……他の人間よりは有力な方だろう。
まだ試したりはしていないが、「鏡」ならではの使い方も出来るかもしれない。分身や、姿を真似たり、もしかしたら鏡の裏の世界にも行けたりするかも?
それに、単純に扱い方に慣れれば、反射そのものを強化することが出来るかもしれないしな。
だからこそ、今は気を待つ。
バカたちがこのアクセサリーを求めて、奪い合いになるのを……ただ……ゆっくりと。
「……はぁ」
「レンタ……記憶を持っていないのね。オーバーロードの使い方を間違えた?それとも、何か問題が起きた?」
「どちらにしても、私からじゃどうにも出来ないわ」
「……アナタは間違いなく、彼ら救う鍵となる。この調子だとカケルと似たような結末を辿るわね……」
「もっとも…………カケルよりも悲惨な結果になるかもしれない。どんな未来でも受け入れる事ね。それが、私が言える精一杯の言葉。聞こえてなんかいないでしょうけど」