9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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※ 半分

 

 静かに揺れる船の中から数々の医療グッズを持ち運び、ひとまず俺の左眼の止血だけを済ませて、都と2人で海の上を歩く。

 

 鏡の能力をフルに使い、なんとか足場を作りながらも岸へとたどり着いた。

 

 そこからはひとまずバイクを放置してノソノソといて行く。

 

 なぜゆっくりなのかと言うと、俺が都に肩を貸してもらいながらじゃないと歩けないからだ。能力を使えば無理やり身体を動かして進めそうだが……それもいつまで続くかわからない。

 

「はぁ…………! はぁ……!」

 

 ダメだ……頭がふらついてくる。心做しか視界もぼやけてきていて数メートル先に何があるのかも認識できない。

 

「大丈夫だよ、蓮太くん……。急いで救急病院に連れていくからね……!」

 

「それ……よりも……! みんなを…………」

 

「うん。みんなも連れていくから……! 絶対に私が助けるから!」

 

 ズルズルと足を引きずる俺を都は肩に背負いながら、歯を食いしばって歩く。慣れてなさげに不器用ながらどうしたら俺が少しでも楽になるかを試行錯誤しながら移動しているようだ。

 

 最短ルートでコンテナの隙間を掻い潜り、廃材置き場を通り過ぎたところで魂の芯から湧き上がる力を体感し始めた。

 

 あまりに突然の事で最初は理解に困ったが、それが過去に1度経験したことのあるモノだとすぐに気が付き、原因と効果が判明した。

 

 歩きながら一瞬ぐらつく身体を気合いで踏ん張り、自力で立て直す。

 

「だっ、ダメだよ蓮太くん! そんな無茶なことしちゃったら……」

 

「いや、大丈夫。多分見てられなかったんだろう、ほんの少しずつだけど自分で歩けるぐらいには何とか回復した」

 

「…………え?」

 

 余計なことしやがって……ソレをしたらお前が傷つくんだぞ、馬鹿野郎が。

 

 きっとあの戦いの時には既に始めてたんだろう、これだけの時間差で効果が出てきたってことは……よっぽど俺が傷ついていたのか。

 

 だったら…………お前は今かなり傷ついてんじゃねぇのか? ルナ。

 

「……落ち着いたら全部話すよ、とにかくみんなの所へと急ごう。……都は大丈夫?」

 

 中途半端に傷や疲労が治っていくが……1度完全に損傷したこの左眼だけはどうにもならなかったか。

 

 よかった、ルナの左眼が傷つかなくて。

 

「全然大丈夫っ」

 

「よし、行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっと、たどり着いた。

 

 あれからどれほどの時間が経過したのかわからないが、少し回復した足すらもちぎれてしまうんじゃないかと感じていた頃、1度訪れた事のあるあの戦場に足を踏み入れた。

 

 所々に激しい交戦の跡が残っており、街中だというのにまだ誰にも見つかっていない事に疑問を抱きながらも、更に奥へと歩みを進める。

 

「酷い…………」

 

 そんな都の声が風に流されるように聞こえてくる。

 

 確かに無惨と言わざるを得ない。道路や1部の建物は破損……いや崩壊と言ってしまった方が正しいだろうか。とにかく戦車でも引っ張ってこないと出来ないような《破裂跡》だ。

 

 本当に、何故誰も気づかないんだろう。

 

 2人でそんな戦場跡を進んでいると、段々と大きな瓦礫が積み重なっている山が目に入ってくる。

 

 数段重なったその瓦礫からは、誰かの足が2本並んで飛び出していた。

 

「────っ」

 

 思わず息を呑んでしまう。

 

 重なるように瓦礫が山積みになってるってことは、戦闘の現場にいた人間の可能性が高い。だとしたらその正体は2択に絞られてしまう。

 

 それでもと恐怖を振り払うように真っ直ぐにその場へと向かい、ようやくそれがよく確認できる所へと到着すると……………………

 

「…………!」

 

 無言のままに都は立ち尽くしてしまった。

 

 石にでもされてしまったかのように目を泳がせながらもその足をマジマジと傍観している。

 

 いや、そうすることしか出来ないんだ。

 

 ピクリとも動かない両足。紅色に近い色の青い紐で結ばれた靴を履いているその足を、ゆっくりと持って引っ張ってみる。

 

 何故上の瓦礫をどかさなかったのかと言うと、重なり方の運が良かったのか大きな隙間ができているように重なっており、その下敷きになっている人を実際に挟んでいなかったからだ。

 

 流石に奥までは見えないがこれなら引きずるだけで助けられそうだったから。

 

「ふっ…………!」

 

 軽く足を掴むだけで身体が悲鳴をあげているが……俺の事なんかどうでもいい。まずはこの人を助けなけれ…………ば……………………!! 

 

 

 

「ひっ…………!」

 

 

 

 その足を引っ張るのと同時に都の小さな悲鳴が聞こえてきた。

 

 それもそうだ。俺だって声が出そうになった。

 

 まるでホラー映画にでも紛れてしまったかのようなショックすぎる光景に怯んでしまう。

 

 理由は1つ。

 

 俺の引っ張った足の先が続いているのは腹の辺りまでであり、そこから先は完全にちぎれてしまっていた。

 

 中から()()()()()()()様々な臓物が飛び出すように転がっている。

 

 そしてそこでようやく気がつく生臭い血の匂い。

 

 これだけでもトラウマに残るようなショックになるのだが……俺たちにとってはそれよりも更に心に深い傷になる事実が判明した。

 

 空色と桃色のスカートに、靴と同じ色の上着が破れて腰巻のようになってしまっているが……それがしっかりと身につけていたものだと理解することができた。

 

 なぜなら、似たような衣服を身につけている姿を見たことがあるからだ。

 

 そう、俺が選択をしたあの瞬間に親指を立てていたあの子。

 

 あの子が身につけていた衣服と被るんだ。

 

 同じような靴を履き、同じようなスカートで、やたらとお腹を出したファッションの似たような色の上着を着ていた……………………あの子に。

 

 嘘だ……

 

 嘘だと言ってくれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天ちゃん…………」

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