9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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5月8日 都BAD√
※ 最後の言葉


 

 あれから、どれくらいの時間が経ったのだろう。

 

 窓から差し込んでくる陽の光をじっと浴びながらそんなことを思う。

 

 この一週間は特に忙しかった。天ちゃんと香坂さんのお葬式に参加して手を合わせに行ったり、自分の怪我を治すために病院へ通ったり。

 

 そして少しでも時間があれば────

 

「ただいま、安静にしてたかよ」

 

「あぁ、約束は守らねぇとお前らがうるせぇからな」

 

 ドサッと色々と物が入っている袋を机に置いて、レナがこちらへ近づいてくる。

 

「無理矢理にでもじっとさせてねぇと大将は簡単に死にそうだからな、アンタに死なれちゃ困るんだ」

 

 そう言ってスルスルと俺の頭に巻き付けてある包帯を解いていき、医師から説明された処置の仕方に習って対処したあと、今度は眼帯を付けさせてもらう。

 

「にしてもアンタもすげぇ頑固だよな、入院しろって何度も言ってんのに」

 

「馬鹿かよ、都を探さなきゃいけないんだ、入院なんてしてられるか」

 

「だからオレたちに任せとけっつってんだよ」

 

 そう、少しでも時間があれば俺が動ける時間に限り近辺で都の居場所を探索している。

 

 ルナがこの場にいないのは、今日の遠方当番に任命されているからだ。

 

 この2人には本当は完全に回復しきるまで安静にして欲しいんだが、本人たちの強い意志で捜索の協力を懇願され、俺と3人で聞き込みや調査をしている。

 

 幻体だからか、俺よりも若干の回復スピードが早いようで、万全とは言えないが日常生活に支障がない程にはすっかり戻っていた。

 

 それでも…………なかなか見つからない。

 

「少しでも早く見つけてやらないと…………」

 

「気持ちは分かるがな大将、仮に都が見つかっても今度は正真正銘アンタ1人なんだ。アイツらと戦うつもりなら、少しでも本調子になってないと今度こそ殺されるぞ」

 

「…………」

 

 あれから俺は学園にはもう登校していない。

 

 初日のみ律儀に行って、都が来ているかの確認を一応したが…………予想通りに都はいなかった。

 

 そして深沢も高峰もその姿を現していない。彼らが生きているのか、死んでしまっているのか、それすらも分からない。

 

「そう…………だな」

 

「わかったんならちゃんとメシを食え、もう何日一日一食を貫くんだよ」

 

 そして袋からレナが取り出したのはコンビニのおにぎり2つと適当な飲み物だった。他にもなにか入ってはいるが…………別に気にならない。

 

「ごめん、いらない」

 

「ま、だろうと思ったけどよ」

 

 そう言いながら袋から何かがもう1つ取り出される。

 

「つかその一食もオレが無理やり食わせてるんだけどな」

 

 レナが持っているのは先端がチューブになっている栄養補給ゼリー、キャップを外して無気力な俺の口に突っ込み、ゆっくりとそれを押し潰して流し込む。

 

 そんなことまでされたら、飲み込んでしまった方が早い。

 

「ったく……」

 

 確かに俺が動けなきゃ意味が無い。そんなことは頭じゃ理解はしているつもりなんだが…………

 

 如何せん都を探すこと以外に何もしたくない。

 

「しっかりしろよ、蓮華にも説教喰らっただろ? 死にそうなくらい辛い気持ちは十分にオレにも伝わってる。だから痛いほどわかるけどよ…………」

 

「アンタがしゃんとしてねぇと助けられるものも助けられなくなる。だから…………」

 

 そこで飲んでいたゼリーが底を尽き、ゆっくりと口から離される。

 

 特に力を入れていないからか、口元からはボタボタとゼリーが零れ落ちる。

 

「もう……見てらんねぇよ…………!」

 

「……悪い」

 

 指を動かして、クイッと口元を拭い、自力で口の中のものを飲み込んでしまう。

 

 今にも泣き出してしまいそうなほどに歯を食いしばるレナ。コイツら2人は本当に個性が分かれている。

 

 どっちかというとこういう場合にルナはこの表情をせずに、怒りの感情のままに俺を怒るだろう。

 

 そういう点では元々の『ゴースト』に近いのはアイツだ。

 

 レナは暗い感情がメインの人格な気がする。

 

 

 

 まぁ…………今はいいか。

 

 とその時、玄関の方から何かが落ちるようにゴトっと音が鳴る。きっと郵便入れに何かが入ってきたのだろう。

 

「……オレが取ってくるから、大将は待ってな」

 

 テクテクと歩いてレナが届いたものを取り出し、不思議そうな顔でその中身を開けてみると…………

 

「んだこれ、…………DVD? CD?」

 

 出てきたのは表面が真っ白の、何も情報がないただのディスクだった。透明のケースに入っており、それ以外の特徴が特に見当たらない物。

 

 つまりはわざわざ誰かが焼いたんだろう。

 

「とりあえず使ってみるか……ちょっとパソコン借りるぜ大将」

 

 無駄になれた動きでパソコンを起動させ、届いたばかりの謎ディスクを取り込む。

 

 すると画面は当たり前だが読み込みのモードに切り替わり、ゲージがMAXに到達すると表示されたのは、1つのフォルダに入った動画だった。

 

 そしてフォルダ内には『たのしいみやこ』とタイトルが付けられている。

 

 その文字を見た瞬間に、俺は身体を前のめりに動かしてその動画をダブルクリックして再生した。

 

「大将…………これ…………」

 

「あぁ……もしかしたら都に関しての情報が何か掴めるか…………も……………………」

 

 今考えると、これは十分に怪しい代物だった。

 

 それでも俺がこれを疑わなかったのは、藁にもすがる思いで都を探し求めていたからだろうか? 

 

 だが、その行為はすぐに後悔へと変わってしまう。

 

 10分近くある動画フォルダを開くと、まず最初に映ったのは真っ暗闇だった。

 

 何も見えない暗闇の中で、グチュグチュと水のような液体が掻き乱されるような音だけが続いている。

 

 いや…………

 

 よく聞いてみると、荒い吐息のような音も…………? 

 

 声を押し殺すような……いや、まるでなにかに()()()()()()()()ような……声? 

 

 そしてしばらくそれを聞き流していると、少しずつ画面に光が差し込んできて、その映像が流れ始めた。

 

「────ッ」

「ウソだろ…………」

 

 息を呑む俺。

 

 怒りと驚きの入り交じった言葉をこぼすレナ。

 

 最初はそんな反応しか出来なかった。

 

 そして徐々にその映像が、俺の脳へと刻み込まれ、俺自身が理解を示してくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眼は虚ろになり。

 

 

 

 

 衣服を剥がされ。

 

 

 

 

 身体中に白と透明が入混ざった液体がこびりついているその姿。

 

 

 

 

 その手には男ならではのモノが両手に握られており。

 

 

 

 口にも同じものを詰め込まれている。

 

 

 

 涙を流しきってしまったのか、その顔からは感情を感じることが出来ず。

 

 

 

 ただひたすらと数人の男によって体を揺らされる都。

 

 

 

 床に散りばめられた様々な色の萎んだ風船がその行為の()()を訴えていた。

 

 

 

 そして使い切ってしまったのか、何も入っていない一際大きな箱が隅の方へ捨てられている。

 

 

 

 彼女は……一言も喋らなかった。

 

 

 

 何も感じていない人形のように男たちを受け入れ、懸命に奉仕するその姿は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラスト1分。

 

 突如として暗転したかと思えば、いきなりまだ()()()()()()()都だけがそこに映った。

 

 しかしその顔は画面の奥に怯えており、脅される形でこのビデオを録画されている事が容易に理解出来る。

 

 そして聞こえてくる加工された声。

 

『では、それが最後の竹内蓮太くんへの言葉となります。最後に都ちゃんのお気持ちをお伝え下さい』

 

 よく見ると都は腕や体を縄で縛られており、明らかな監禁状態であることが判明した。

 

「…………」

 

『これが最後です。確実に最愛の竹内蓮太くんへ届けますので、安心して最後の言葉を残して下さい』

 

 隠しきれない恐怖を無理やり押し殺し、涙目でレンズを見つめる都は意を決したように叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

『蓮太くん! わた────────』

 

 

 

 

 

 

 

 そこで無理やりビデオは切られ、動画は終わってしまった。

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