9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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天月蓮の戦い

 

「さて、問題は…………どうやってあそこまで向かうかだよな」

 

 不意にそんな翔の疑問が飛び交う。

 

「だな、オレは一旦消えりゃいいとして……大将は能力使って足場を作れば簡単に迎えるが」

 

「全員があの船に乗り込むとなると難しいわね」

 

 と、その時、俺たちの背後から何者かがやってくるような足音が聞こえてきた。

 

「おいおい……ケールの奴がやられたって聞いたから来て見りゃお前……こんな人数いたのかよ」

 

 声の方向へ振り向くと、仮面をつけて顔を隠した男が気だるそうにして俺たちを見ている。

 

「え? 誰……あの人」

 

「存じ上げませんが、恐らくはあの方々との面識がある仲間と考えてもよさそうですわね」

 

「……そうね。もし推察が正しければ実力もかなり高いと見ていいわ」

 

 俺たちが倒した敵ってのはさっきの女だけだ。だとするとコイツもIO5(アイオーファイブ)とかいう組織のメンバーだろう。

 

 能力不明で実力も未知数。厄介だな。

 

「そんじゃま、二手に別れますか。大将は都んとこ行かせるとして……誰が残る?」

 

「私がこの人の相手をするわ。蓮太が先へ進む以上は私が残らなければ勝機は薄いでしょうし」

 

「では(わたくし)も、任せて下さい、退路は確保しておきますので」

 

「だったら俺も残る。女の子だけに任せる訳には行かないしな」

 

 そう言って香坂さんと希亜と翔の3人が船に背を向け、仮面の男と対峙するように並ぶ。

 

「……え!? それじゃああたしは!?」

 

「天はオレたちと船に乗り込む係だな、頼りにしてるぜ?」

 

「え!? ちょ!? あたし空飛べないんですけど!? 存在感ちょ〜薄くなるだけなんですけど!?」

 

「ゴタゴタ言うな! ほら、行くぞ」

 

 あたふたとテンパる天ちゃんをレナは軽々と抱えあげる。それから俺の能力を使って足場を作るのかなー? なんて考えていたら、あろう事かレナは天ちゃんをハンマー投げのようにくるくると回し、思いっきり船の方向へとぶん投げたのだ。

 

「ちょちょちょちょちょちょちょ!?!?!?!?!? なななななななにやってんすかぁぁぁぁ!?!?!?」

 

「キャッチしてやるから我慢しろよ! そぉらっ!!」

 

「ほげぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」

 

 明らかに人間業じゃない力で空高くに天ちゃんを放り投げたレナは、今度は鏡の足場を作ってぴょんぴょんと飛び回り、空中で天ちゃんをキャッチする。

 

 これあれか、俺が使えるから、レナもオーバーフローを扱えてるのか。

 

 …………それなら別に投げなくても最初から抱えあげてやったらいいんじゃね? 

 

「あっ!? ちょっと待ってレナちゃん!!! パンツ! パンツ見えるから待って!」

 

「うっせぇな別にいいだろ下着ぐらい! 減るもんじゃねぇし」

 

「よくないよくない! いきなり投げられて今ちょっとくい込んでて…………ってうわっ────!?!?」

 

 あ、白色だ。髪の色に合わせてんのかなぁ……

 

「レナちゃん今ケツ触った!!!!」

 

「触ってねぇよ当たっただけだ!」

 

「セクハラァァァァ──────!!!」

 

 なんて訳の分からない会話をしながら、随分と派手にあの2人は船へと乗り込むことに成功した。

 

 ……あの、一応真剣にやって貰えますかね…………一応俺にとっては結構真面目な状況なんだけど……

 

「何故天が関わると全てが騒がしくなるの……」

 

「俺に聞くなよ……俺だってリアクションに困ってんだから……」

 

「あらあら、緊張しているよりは随分と安心できますわ」

 

「いやほんっとすみません、ウチの妹が……」

 

 ……いや、一応こっちのレナも悪いっちゃ悪いなコレ。

 

「まぁいいや、とにかく俺も行ってくる。死ぬなよお前ら」

 

「私たちの心配よりも、九條さんの心配をしてあげなさい」

 

「……あぁ!」

 

 レナと天ちゃんに続くように、俺も足場を作って船へと乗り込んでいく。

 

 あの場を任せるのも個人的には納得がいかないが……これはしょうがない。最悪レナをあっちに向かわせたりも出来るし……一応いつでもカバーできるように注意はしておこう。

 

 ぴょんぴょんとレナの真似をするように俺も軽く鏡を足蹴にしていき、2人とは遅れて船に乗り込む。

 

「よっと…………」

 

「随分と賑やかな登場だね、竹内くん」

 

「その方が都が笑ってくれるかと思ってな」

 

「彼女が笑う時は、君がいなくなったその瞬間さ」

 

 ポンっと男は都に軽く触れると、なにかの能力を扱ったのか、都の身体は吸い付くように鉄製の壁へ引っ張られ、ピタリと固定されたかのように張り付く。

 

 若干痛がる仕草を見せながらも、都は壁から離れようと身体を動かすが……力を抜いた瞬間に再びビタンと張り付いてしまっていた。

 

「今は邪魔だよ、都」

 

「つくづくクソだな……お前」

 

 あの能力はだいたい予想はつくけれど…………ダメだ。まともに考えるな、平常心が崩れる。

 

「いい顔してるよ竹内くん。まぁそんなに意気込んでも君じゃ勝てないけどね」

 

「勝てるさ」

 

 少し離れた場所にいたレナと天ちゃんが、言葉を返しながら俺の方へと歩いてくる。

 

「大将1人じゃねぇからな。オレと天がいる」

 

「危うくその《オレ》だけになるところだったけどね」

 

「レナ……白ちゃん……」

 

「白ちゃんってなんだ!? あたしゃあパンツか!? パンツの色が白だから白ちゃんなのか!? おうおうおう表出ろ! ぶん殴ってやるぅ!」

 

 やっべ、口が滑った。

 

 ……ダメだ、なんでかわかんねぇけど天ちゃんが近くにいたらどうもイマイチ気持ちが切り替わらない……

 

「大将……しっかりしろよ、こんな時にまで変態を出すな」

 

「変態じゃねぇよ! ちょっとMなだけだ!」

 

「変態じゃねぇかよ」

 

 いや確かに今のは俺が悪いけれども! もっとこう……注意の仕方があるだろ! 

 

「あははっ! 君たち本当に面白いね」

 

 パンパンと手を叩きながら完全に油断している男。うん……なんかチャンスっぽい。

 

「とにかく、俺が先陣切るからレナと天ちゃんでバックアップお願い!」

 

 特に作戦なんてものはないが、とにかく今なら不意の一撃を与えられると思い、最低限の言葉だけ伝えて前へ出る。

 

 そこから1度だけフェイントを混ぜて、俺は力を込めた右拳を相手の顔へと繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 ……が。

 

 まるで予めそうすることを知っていたかのように、御曹司サマは俺の拳を片腕て掴んで止めた。

 

「見えてるよ、竹内くん」

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