9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
公園、そして噂
翌日の朝、教室の中に入ると、クラスメイトの女子達が軽く小話程度に話しているとある噂を耳にした。
その不思議な噂とは、公園のベンチに石像が座っているという一見くだらない噂。
今にも動き出しそうな程の巧みに作られたその石像は、あまりの完成度の高さから気味悪がる人もいるようだ。
何も知らないみんなは、またアニメの延長で変な製造を建てたか……なんて事も言っていたが……俺はそうは思わない。
確かにその線も考えられないことは無い。何かとこの市はあのアニメに関するイベントを頑張りたがるから、一概には否定できないが……。引っかかるのはどうやら昨日はそんな石像はなかったとの事。
つまり学生が塾などの理由で帰りが遅くなる時間帯よりも後から、今日の朝の間に石像を公園に一体作ったということになる。
そんな事有り得るのだろうか? 知識があるわけじゃないから断言は出来ないが……どうにも怪しい匂いがする。俺の予想通りに、能力者が動き出したら……なんて思うと、これはチャンスかもしれない。
能力の候補としては……別の場所から石像を転移させる。とか、石材を自在に操る。とか、そうだな……想像した物をその場で出現や作成できる……とか?
ま、どんな能力だろうと必ず何か強みがあるはず。もしそれらが手に入る可能性があるのなら、少しでもそれに関する情報が欲しい。
……と思う日の昼休み、席が少し近くにある2人の男子生徒が、早速この噂についての会話をしていた。
あれは……背の高い方が、「新海翔」。背の低い方が、「深沢与一」だったな。
特に別段仲良くはないから、聞き耳を立ててみる…………
「どうやらそうじゃないっぽいよ。近くにあるじゃん。あの、偏差値のお高い──」
「あ〜、玖方か」
「そうそう、玖方女学院。あそこの制服を着てるんだってさ」
「ふ〜ん」
……玖方? って、事は女の子の石像なのか。
それって、ほぼ確定的じゃないか? 能力を使ったことが。
能力の予想は「生成系」かつ、その石像は人を模した可能性が高い。例えば、ベンチに座っている女の子を見て、模写をするように石像を作るなんて事をした可能性もある。
特にこのことに理由はないが、実験的な感覚で能力を試したのかもな。そのままにしておくのはバカだと思ったけど。
「確認したくない?」
「何を」
「ちゃんとパンツまで作ってあるのか」
……くだらね。
ただ、近くの2人はどうやら放課後に公園に行くようだ。深沢が言ったように、「生きた人間をそのまま石にしちゃったみたい」な程の完成度の高い石像を。
「なんでそんなに必死なんだよ……。俺は別に──」
「あの…………それ、私も行っていい?」
そんな男達の会話に割り込んできたのは、九條さんだった。
パンツを見たいのか聞かれてちょっと焦っちゃってるけど、どうやらその石像に興味を持ってるみたいだ。
そんな九條さんの会話の節々から感じるのは、何かの違和感。使命感や決意とは違うようだが、それらに近い覚悟のような気迫。
と思うのは俺の気にしすぎだろうか。
「昨日まではなかった……としたら、早朝か深夜に運んだことになるでしょう?」
九條さんの疑問に思ったところは、俺と似たような所だった。つまりは短期間で石像が建てられたことに違和感を持ったこと。そして公園のモニュメントを市が作ったとしても、周囲に迷惑がかからないような、昼時に行うはずだと。
……もしかしたら、口には出さないだけで、九條さんも能力の事で気にしているのかも知れない……。
なんて考えている間に、九條さんと深沢と新海で放課後に公園に向かうことが決定したようだ。深沢は他の人(女子のみ)に声をかけていたが、あえなく全拒否を食らっていた。
そんな彼を見ながら、やれやれと呆れている新海の隣を通り過ぎて、そのグループの1人がこちらに向かってくる。
それはもちろん──
「竹内くんも……どうかな?」
唯一の女性、九條都。
「何が?」
「話、聞いていたでしょ? 気になったりしない?」
「……別に、悪いけどどうでもいいね。俺は別に困らないし」
……何故俺に声をかけた? 偶然近くにいたから? 俺が聞き耳を立てているのを見つけたから?
……それとも。
「…………アーティファクト」
「……!?」
その言葉に一瞬ピクリと反応してしまう。どうやら九條さんはそんな俺の些細な動作を見逃さなかったようだ。
「竹内くんのもそうなんだよね……?」
……下手に言葉を返せない。嘘を貫き通しても問題は無いだろうが……俺は1度呪いのアクセサリーとして、九條さんと一緒にお祓いを頼んでしまっている。つまりはお互いに能力のあるアクセサリー、「アーティファクト」を所持していることはバレている。
……ここも隠さない方がいいだろう。
「似てるもんな、「輪廻転生のメビウスリング」と。俺も同じようなことを思ったよ。アーティファクトって」
「確信はない……だけど、もしかしたらって思っちゃったの。良かったら、一緒に来てくれないかな?」
「……はぁ」
クソ……ということは、九條都は何かしらの能力を持ってるって事だ。半分は喜ばしいし、半分は面倒になった。
幸い、さっきから少し小声で、周りに聞かれないように話してくれているのが救いだな。
しょうがない。ここは同行しよう。本当は夜に行きたかったんだけど……この場を不自然に突き放す方が面倒そうだ。
「わかった。奥の2人が良ければ俺も行く」
「……ありがとう」
ちょうど俺達の会話が終わったタイミングで、深沢が不自然に俺に近づいた九條の異変に気が付き、俺たちに声をかける。
「んー? 竹内も来るの? もしかして、九條さんに誘われた?」
「ま、そんなところだ、2人が別にいいってんなら俺も一緒に行きたいんだけど」
「珍しいね、竹内が誰かと一緒に行動するなんて」
「別に嫌いってわけじゃないしな、気が変わっただけさ」
「へ〜、僕は別にいいけどね! 翔は?」
「俺も別に」
「じゃあ決まりっ!」
と、言うことで俺たち4人で放課後の待ち合わせを決めて、軽く話したあと解散した。
男2人は警戒する必要はないだろうが、九條さんの方は一応様子を見ていた方がいいだろうな。あの感じだと、間違いなく能力者がいることを疑っている。つまり…………
「びっくりしたなぁ。九條さんもそうだけど、竹内も意外と気さくで色々と話すタイプなんだね」
「九條の方は俺たちが身構えちまってるだけで、竹内の方は別に悪いやつって訳じゃなさそうだったもんな」
「仲良くなれそう」
「お前は誰とでも仲良くなれるからなぁ」
「翔にも教えようか? 女の子と上手く話すコツを。まずは相手の靴をベロベロに舐めて──」
「あー焼きそばパンうめぇ」
「聞いてよ」
アンケートの投票ありがとうございます。
これから先も、割と頻繁にこういったアンケートをさせて頂きたいと思っていますので、その際は是非、よろしくお願いします。
まだ、誰と手を組むのかのアンケートは数話にかけて引き続き行わせていただきますので、バシバシと投票してくれたら幸いです。
この物語の主人公は名前は仮名ではありますが、私を含む皆さんです。
君の選択で彼らの運命を変えてください。