9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「くっ!」
「左足の蹴り」
「ふっ!」
「右腕のフェイントからの左足の回し蹴り」
「くっそ……!」
「両手を地について…………」
「喰らえっ!」
「両足での蹴り上げ」
隙を与えぬ連続攻撃で数打ちゃ当たる戦法で挑んでいるが……何故か俺の攻撃はこの男には当たらない。まるで俺が次に何をするかわかっているかのように最適な防御法でそれぞれの蹴りを受けられていく。
「当たれ…………ッ!!」
空振った最後の蹴り上げの流れに身を任せて、両腕のバネを使った反動で身体を相手の方へと浮かして、両足のハサミで交差させるように蹴り挟む。
……つもりだったが、それすらも事前に読まれていとも容易く避けられ、逆に俺が腹部に強力な蹴りを入れられた。
「ぐふッ!?」
「君は僕を嫌うだろう。近づきたくないほどに……」
思わず怯んでしまったその瞬間に、俺に優しく手のひらを当てると、相手は肩に紋章を浮かばせて、何かの能力を使用する。
「
その言葉が聞こえた瞬間、俺の身体は自分の意思とは裏腹に
バイクに乗っている時に似ている感覚を感じる最中、その勢いは留まることを知らずにどんどんと加速していく。
「……んだっ!? これ……ッ!?」
そしてそのままレナ達の背後に山積みになっていた沢山の荷物に激しく叩きつけられるようにぶつかった。
「大将ッ!」
「先輩ッ!?」
ガラガラと物が崩れる音の中に、あの2人が心配そうに叫ぶ声が混ざって聞こえてくる。
「問題ねぇ…………生きてるよ……!」
あークッソ……背中痛てぇ……
派手に叩きつけてくれやがってあの野郎……
「厄介だな、お前の操るその《磁力》」
「じ、磁力……!? え!? どうゆうこと!? なんで先輩が押してたのに飛ばされたの!?」
「押してなんかねぇよ、大将の攻撃は全て読まれてた。それに都や大将が飛ばされたのは反発と引き合いだ」
やっぱり強い。
そりゃそうか、あんだけの実力の爆発女を従わせるだけのモノがないと上に立つ者として道理が合わない。
やっぱ俺は《オーバーフロー》を色々と使ってみるしかないかね。
「反発……?」
「都と大将は磁力をその身体に纏わせられた、きっと条件はあの手のひらに触れること。だから都は引き合うように鉄製の壁に吸われて、大将はアイツから引き離されたんだ」
「もちろん逆もできるけどね、こういう風に…………!」
御曹司サマは俺に向かって片腕を向けると、再び紋章を浮かばせて能力を使用する。そして俺の身体はその腕に吸い付くように身体を宙へ浮かして再び飛んでいく。
「この勢いは殺すにはもったいない」
グッと腕を構えて、明らかに俺を殴ろうとする体制を摂る悠。
不味い……このまま殴られなんかしたら勢いがある分ダメージが跳ね上がる……!
「天! 都の元へ行って纏われてる磁力を消してこい!」
「えっ!? えっ!? そんな事急に言われてもどうしたら……!」
「いいからっ!」
仕方ねぇ! こうなったら鏡の能力を使って殴られる瞬間に壁を作るしか……!
「へぇ……? そんな使い方もあるんだね、竹内くん」
「腕をぶった切ってやるッ!!」
目を見開いて、その瞬間を見極めるために意識を集中させていると、隣からレナが物凄い速度であの男に向かって殴りかかっているのがちらっと見えた。
「それを……止めろッ!」
レナは能力を止めさせようと素早く右足を繰り出してあいつを蹴ろうとするが……
「君が来ることも見えていた。竹内くんが気がついていたからね」
そしてその男がレナの顔を見た瞬間、一瞬何かがおかしいのか疑問を抱えたような表情を見せた。
「…………らぁっ!!」
そしてその流れのままにレナは蹴りを繰り出して、またこの男は避けるのかと思ったが…………蹴りが当たるギリギリのところで腕を盾にして何とか
「随分と重いな……この蹴りは……!」
「想いが詰まってるからよ……!」
引き付けられる磁力から解放された俺は、そのチャンスを無駄にしないようにすかさず攻撃を開始する。
わざとに反応されにくいように床に這い蹲るように姿勢を落として、不意になるように一撃を決める。
「うぐっ!?」
……当たった!
「まだまだぁ!」
「オラオラッ!」
そこから先は俺とレナでの連続攻撃、何度も何度も殴りや蹴りを繰り出し、ちょこちょことお互いの場所を入れ替え、極力撹乱させるようにとにかく激しく移動する。
狙いを一点に絞られないようにお互いにフェイントを挟みながら、何度も何度も攻め続けた。
命中率は圧倒的にレナの方が高い理由は……やっぱりそういうことだろう。
あいつの心理を読む能力。確かに強力だ、俺が次に何をどうするのかなんて全て読まれている。だから今まで避けられていたんだろう。
けれどコイツはレナの思考を読めないんだ。理由は分からない。幻体だからといってもレナにはレナの意思がある、だから読まれてもおかしくは無いが……
俺の攻撃だけはほぼ完璧に防がれてしまっている事から考えて、レナに心理を読む能力を使っても、
「ふんっ!!」
「邪魔だッ!!」
そんなことを考えながらも、力の限り思いっきり殴ろうと拳を振るうと、今度は磁気の能力を使用されて、俺の身体は強く都たちがいる壁の方向へと吹き飛んでいく。
「えぇぇぇぇっ!?!?!? 先輩がなんかすげぇ勢いで飛んできてるっ!?!?」
「グッッ!!」
ボコっと軽く壁が凹む程度には激しく身体をぶつけて、そのままズルズルと引きずられるように背中は壁に引っ付いたまま重力に従って落ちていく。
「えっ!? えっ!? すごい音したけど大丈夫っ!?」
「れ、蓮太……くん……!」
「だいぶ痛てぇけど……まぁ大丈夫……、それにわかった。アイツを倒す方法」
今の衝撃だ。俺が激しく叩きつけられた時、明らかに磁力が弱まった。
つまりは自己減磁を起こしてるってことだ。要はアイツに触れられた俺と都は磁石のような物、ということは人間基準のキュリー温度に達すれば磁気は消滅できる。
幸いレナがアイツにとっての“天敵”であるから、1対1でもいい勝負に持っていけているが……、それにしても悠はシンプルに強い。能力抜きにしても俺よりも遥かに戦闘慣れしているような動きだし…………意外と一発一発が堪える。
「た、倒す方法って……?」
「考えがある」
目を瞑って《オーバーフロー》を自身の肉体に使い、あの時のように強制的に火事場の馬鹿力を引き上げて自分の運動能力を向上させる。
そうするとまた同じように段々と身体中の体温が上昇していき、ぽたぽたと汗が流れ始める。
「またその能力……!? 先輩! それってどういう……」
「《オーバーフロー》……つっても分かりにくいか。要は力の限界の100%を壊してそれ以上に引き上げる力。それを俺自身に使ってる。だから身体中の細胞を無理やり超活性化させて激しく働かせてるから長時間運動した直後みたいに身体が熱くなってくんだ」
「うわ……凄い湯気……先輩今何度くらいまで……」
「さぁ……? 38度以上はあると思う」
だからこそこういう使い方をしたら頭はガンガンするし身体はだるくなるけどな。
一瞬でもだいぶキツかったんだ、これは切り札として使いたかったけど……状況が変わった。
切り札はレナだ。
「ごめん都、汗臭いかもしれないけど…………少しの間だけ我慢してくれ」
そう言って、壁から離れることに成功した俺は、一応軽く汗を拭った後に未だ張り付いたままの都に向かって優しく抱きしめた。
「え……? あっ、れっ、蓮太くんっ!?」
「え? なんか急に目の前でイチャコラされたあたしはどうしたら……?」
「一応あの2人の戦いを監視してて、そんなに時間はかからないと思うから」
一応都に負担がかからないようにゆっくりと壁から引き離しながら身体の熱を移していき、ゆっくりと磁気から解放していく。
「で、先輩たちは一体何を?」
「キュリー温度って言ってな、磁石には熱に耐えられる限界温度があるんだ。それは相手によって限界の高さが変わるんだけど……
「あっ……身体が…………」
なんて説明をしている間に、簡単に都の体から磁気を取り除くことに成功した。
よし、これで逆転できる。
「あの、あ、ありがとう……」
「まだ礼を言うのは早いぜ? こっからはアイツを止める。どの道アーティファクトを回収しとかねぇといけねぇしな」
都の能力で奪うにしても相手にああも暴れられちゃあ危険だ。どの道1度動きを止めるしかなさそうだし…………
「じゃあ急いでレナちゃんの加勢にいかなきゃ!」
「待て、策もなしに突っ込んだら今の二の舞になる。作戦があるから……俺の説明した通りに2人とも動いてくれ」
「その作戦って?」
「まずは…………俺を消してくれ天ちゃん」