9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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気持ちのいい目覚め。からの…………?

 

 

 

 ピリリリリリ────

 

 耳鳴りにも似た高音が、深い眠りに誘われていた俺の意識をグラグラと揺らす。ウトウトとした意識の中、ぼんやりとした視界のせいでなかなか見えないスマホに手を伸ばし適当に何度か画面をタップする。

 

「うーん…………もう朝か……?」

 

 やっと部屋の中が見渡せるほどに視界が安定すると、強く日差しがカーテンを貫いて差し込んでいる。

 

 もう夏が近そうだよなぁ……なんて思いながら隣にいる都を確認する。

 

「すぅ…………すぅ…………」

 

 彼女も疲労が溜まりきっていたのか、あの激しく響いたアラームでも一向に起きる気配がない。

 

 …………やっべぇな、寝顔めちゃんこ可愛いじゃん。え? 何? 世の中にこんな可愛い女の子が身近にいたの!? やばくね? 

 

「か…………かわゆぃ…………」

 

 無防備に寝てしまっている彼女の頬を軽く突っつく。するとフニフニと柔らかいマシュマロのように凹む度に、「むぅ……」と呟く彼女がもう…………

 

「かかっ……かわかか……! かわゆぃ……」

 

 うっそだろ俺、こんな高嶺の花的な存在の人を彼女にしたのかよ……やべくね? なんか色んな意味でプレッシャーがドッシリとのしかかるんですけどッ!? 

 

 こ、これ大丈夫なのか!? 都と付き合っているなんて事実をみんなに周知されたら帰り道とか後ろから刺されるのでは!? 

 

 それに俺自身、自分に魅力があるなんてとてもじゃないけど思えない。これだけの美少女の隣に立つ男としては力不足では? 

 

 うーむ……こりゃ身だしなみとかの見た目には今まで以上に気を使わないといけないな。まずは髪を切ってサッパリするところから…………いや、右腕を治すところからだな。

 

「すぅ…………すぅ……………………にゃむにゃむ…………」

 

 そんな時に聞こえてくる都の寝言。

 

「はぅあっ!?」

 

 尊すぎる……! 何だこの生き物可愛すぎだろ!?!? 

 

 ダメだダメだ! これ以上都を見つめていたら可愛さで頭がおかしくなる! (手遅れ)ひとまずアラームが鳴ったってことは今は大体6時過ぎってとこだろ? とりあえず軽く弁当を作って…………と。

 

 自分の中に眠る今までに無かった新たな感情を隠すようにキッチンへと向かい、利き手じゃないから意外と扱いにくい左手で料理の準備を整えていく。

 

「あ……やっべ、米炊いてねぇ。まぁいいかレトルトのやつで」

 

 非常時のために買い置きしておいた(レナとルナ用)白米のパックを2つ取り出し、電子レンジの中にほおって加熱する。そしてその合間に今できる最低限のチンケなオカズたちを準備。

 

 本当はしっかりとした弁当を作ってやりたいが…………如何せんあの出来事からまだ全然時間が経過していなくて、身体もだるい。初日だから豪勢にいきたかったが…………庶民のお弁当で我慢してくれ、都。

 

「卵とウインナーと…………ほうれん草をめんつゆとバターで炒めるか。後は……」

 

 メニューを適当に考えながらどんなものが入っていたかの確認のため、冷蔵庫を開いて見てみると…………

 

「豚のこま切れ肉…………か。使えそうだな」

 

 揚げ物を作るような時間はないから…………ん? いや、レンチンが終わりゃあパン粉につけて擬似トンカツができるのか。だったらその準備をっと…………

 

 カチャカチャトントンと音を奏でて、いつも以上に手間取るお弁当作りが始める。

 

 右手が使えないって本当に不便だ。普段はひょいひょいっと当たり前のように使っているが、それがたった一つ制限されるだけで生活のリズムは一気に崩れる。

 

 夕方には通院もしなくちゃいけないし、夜には約束もある。

 

「…………弁当箱なくね?」

 

 その準備をしている途中で気がついた。俺のこの家の中には都用の弁当箱が存在しないのだ。当たり前っちゃ当たり前だが、そんなものを夜のあの間に持ち込むような余裕もあるはずがなく、ほとんどの都の私物はまだ自宅に置いてある。

 

 ……そういえば二段になってる大きめの弁当箱があったな。もうこれでいいか、2人分入ればなんでも。

 

 なんて適当な考えで空き箱に次々に俺たち二人分の昼飯をちょちょいと詰めている時、リビングの方で誰かが動いている気配がする。

 

 どうやら都の目が覚めたようだ。

 

「そうだな、もうすぐ終わるし起きるにしてはちょうどいい頃合いかな」

 

 ふんふんと鼻歌交じりに盛り付けをしていたのだが…………その直後に都の声が珍しく大きく響き渡る。

 

「あぁっ!?!?」

 

 何事かと思って急いでドアを開けると、未だ寝巻き姿のままの少しボサボサ髪の都が、プルプルと震える手で自分のスマホを開いて座っていた。

 

「ん? どうしたんだ? 都」

 

「れ、れれ……! 蓮太くん……!」

 

 やたら大袈裟に焦っているもんだから、なにか大切な事を忘れていたのかと思っていると……都は手にしているスマホの画面を俺に見せつけるように差し出す。

 

 それを目撃した瞬間に、彼女が驚き焦っている理由が判明した。

 

 現在時刻は朝の10時48分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………あ」

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