9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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幸せ?を取り戻した『日常』

 

「もうそんなに急ぐことなくないか? いくら焦っても遅刻なんだしさ」

 

「だめだよ、少しでも早く学校へ行って謝らないと」

 

 現時刻は11時を過ぎてしまっている。そんな時間だから当たり前なんだが制服を着ている生徒は俺と都以外は全くいない。

 

 完璧に遅刻です、はい。

 

 にしても驚いたな……10分置きに鳴り続けるアラームが死ぬほど連続していたなんて。俺が目覚めた時のアラームはあれが最初ではなかったらしい。

 

「病院には放課後に行くんだよね?」

 

「うん、そのつもり。それからナインボールで待ってようかな? なんて思ってたけど店的には迷惑かな。ってそういえば都は今日バイト?」

 

「そうだよ。だから一緒に病院には行けないけれど、またすぐに会えるから……ね」

 

「ふふっ……あぁ、ついでに寝床も同じだしな」

 

 なんて会話を2人でしながら登校する。おそらく走ったりしない理由は俺のこの右腕だろう。別に俺を置いて走っていっても気にはしないけど……少しでも一緒にいたい気持ちは…………な? 

 

 でもせっかくいい雰囲気なのに手を繋げないのが本当に痛い! ギブスで右腕を固めてるから鞄を左手で持たなきゃいけない都合上必然的に両手が塞がるのがもう……! 

 

 それに都の自転車は彼女の自宅にある。つまりは2人で並んで歩いているということ。カゴに入れさせてもらったりもできないし……はぁ……

 

「……お、生徒指導のハg…………先生がいない」

 

「あ、本当だね。どうしたのかな?」

 

 白泉の校門にたどり着くと、いつもなら遅刻した生徒を取り締まるために突っ立っているハゲ頭が何故か今日に限っていなかった。

 

 もしかしてどこかのクラスの授業を担当しているタイミングなのだろうか? いや、それならそれで代わりの教師がいるはずだから……

 

「運良くトイレ中だったりしたのかもな。とりあえず成瀬センセのとこ行かなきゃいけないだろ?」

 

「うん、でも今は3限目よね? 確か今日の3限目って成瀬先生の授業だったような?」

 

「じゃあそんまんま教室にいくか」

 

 なんて授業中の静まり返った学園内を都と2人で歩いて進む。休憩時間とは雰囲気がガラリと変わってるよなホント。

 

 どんな言い訳を使おうか? 寝坊ってのは絶対怒られるから……

 

 なんて考えていると、教室にたどり着くや否や都は申し訳なさそうにゆっくりと扉を開けてその身体を縮こませるように中へ入っていく。

 

「おいおい……言い訳する気無しですか」

 

 この辺が俺と全然違うとこだよな。俺一人ならどうせ遅刻するからって多分ゲーセンとか行ってるだろうし。

 

「すみません……遅刻しちゃいました……」

 

 しゃあない、相方がこうしてしまったのなら俺も合わせてしまうしかないだろう。

 

 若干ため息を吐きながらも俺も続いて教室内に入る。

 

「ちわーす、今日も元気で〜す」

 

 と出席代わりの挨拶を適当に済ませて自分の席へ向かおうとすると、当たり前だか成瀬センセに止められる。

 

 ついでに都にも。

 

「は〜いストップストップ〜。あのさ、一応聞いておくけど遅刻の理由は?」

 

「んぇ? あ〜っと…………足腰が悪そうなお婆さんをおぶって家まで送り届けながら迷子の子供を交番まで連れていく途中で倒れている妊婦を助けてたら遅くなりました」

 

「……え、えぇっ!? そ、そんなことしてたっけ……!?」

 

 おい、ここでその反応されたら全部嘘だってバレちゃうじゃんか! いや騙し通せるとも思ってはないけれど! 

 

「へぇ〜それは感心感心。それじゃあ同じことをもう一度言ってみて」

 

「えぇーっと……足腰が悪そうな妊婦さんを交番まで送って倒れている子供をお婆さんが助けてあげたら遅くなりました」

 

「は〜い嘘だね〜」

 

 ゴンッと教科書の後ろの硬いところで頭を叩かれ、罰を受ける。

 

「ごめんなさい……寝坊です……」

 

「九條さんは正直に謝ったから許す」

 

「ごめんなさい。遅刻しました。俺も謝ったから許──―」

 

「さないよ〜。君火事の日も遅刻してたでしょ。誤魔化すの大変だったんだからもう」

 

 ひどい。なぜ俺と都でここまでの差が出るのか。

 

「正直その腕の怪我が気になるところではあるんだけど……九條さんのお父さんが書類提出してくれてたし、そっちを見ることにしようかな。…………なんで竹内君の怪我を九條さんの親御さんが知ってるんだろ」

 

「はは……」

 

 アフターケアバッチリかよ。こちとら娘さんとイチャコラして遅刻かましてますけど。愛想笑いしか出来ねぇわ。

 

「それじゃあとにかく各々自分の席に着いてね〜、遅刻カップルさん」

 

「はいはーい、了解で……………………は?」

「────ッ!?」

 

 唐突すぎるその発言に、思わず耳を疑った。な、なんで俺たちの関係が一瞬でバレたんだ!? 

 

「な、なんで!?」

 

 隣の都も顔を真っ赤に染めて俯いてしまっている。

 

「あー! やっぱりそうなんだ! 2人で並んで門を歩いてたから気になってたんだよねぇ〜!」

 

「あ、アンタ窓から見てたのかよッ!?」

 

「それに2人とも()()シャンプーの香りがするし? とうとう九條さんに手を出したか〜こりゃ刺されるぞ〜」

 

「同じって…………あっ!」

 

「みんな〜! やっぱりこの2人付き合ってるってよ〜! けしからんっすな〜!」

 

「ちょ……!? やめろよ! 茶化すな!」

 

 いつまでも幼稚なイタズラを仕掛ける成瀬センセを止めていると、後ろの生徒たちの『キャーっ!!』という黄色い声が響き渡る。

 

「九條さんやっぱりそうだったんだー!」

「おめでとー!」

「どこまで!? どこまでいったの!?」

 

 などという女子たちの声。

 

「ふざけんなボケー!」

「俺たちの夢を返せー!」

「せ、拙者の希望が……!」

「某……最大の不覚……ッ!」

 

 という男子たちの声。

 

「いや待て!? 男子(おまえら)民度低すぎだろッ!? っつーか気持ち悪い奴いたぞッ!?」

 

 その瞬間にワー! ワー! と教室内が一気にうるさくなる。その中にはひょっこりと翔と深沢も混じっていた。

 

「どうせ風呂場でエッチなことしたんだろー! はい、復唱!」(深沢)

「どうせふろばでえっちなことしたんだろー。はいふくしょー」(翔)

 

「やる気ないなぁせっかく友達を茶化す面白い機会なのに」

 

「いや俺は茶化すつもりは別にないって」

 

「ちょっと待て! なんでお前らまで裏切ってんだよ!! お前らは1番の味方じゃないとダメだろ!」

 

「僕たちだって嫉妬しちゃうよ! あんなタイミングで告白からのキスだなんて……あぁ〜! 羨ましい! 九條さんのパンツの色って何色だったんだろう……!!」

 

「んなもん想像するな────!!!!!」

 

 お前はいつでも深沢節が炸裂するな本当に……! 

 

 …………あれ? なんでお前────

 

「竹内ー! テメェ九條様と一緒に風呂に入ったのか! あぁ!?」

 

 様!? なんか崇拝してる人までいるんだけど!? なになになになに!? 怖い怖い怖い!! 

 

「どうせ無理やりエロいことさせたんだろ!」

 

「させてねぇよ! どっちかっていやぁ都の方から────」

 

「んだとコラァァァァァッ!!!!」

 

「逆ギレッ!?」

 

 ちょっ! 待っ! ほんとに殺される! あれ!? 俺ってこの人数を敵に回すの!? 

 

「にしても竹内が九條さんとねぇ……残念、取られちゃったねー翔」

 

「取られるも何も俺は大切なやつはいるから……」

 

「え? 何それ、初耳なんだけど!? 恋人出来てたの!?」

 

「恋人…………? なのか……?」

 

「ちょっ……! 頼むから2人で雑談なんてしないで助けてくれ! つーかお前らアレだな!? この事お前らがバラしたな!?!?」

 

「すまん蓮太。俺が与一を止められなくて……」

 

「そんなことはどうでもいいよ! え!? 何!? 翔の恋人って誰さ!?」

 

 

 

 

 とそんなこんなでいつの間にかクラス中に俺たちの事がバラされており、みなを説得するのにかなりの時間を要した。

 

 ちなみに噂は学園内全域にわたっており、最早悪い意味で俺は有名人となってしまったようだった。

 

 それに一部の生徒達によると、他校の友人にもこのことを伝えたらしく、元々この市内で知らない人はいないレベルの有名人である『九條 都の彼氏』と言う名で俺の事は瞬く間に広がっていったそうな。

 

 めでたしめでたし…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやめでたくねぇよ!!」

次回の枝は……?

  • 新海 天
  • 香坂 春風
  • 結城 希亜
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