9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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最初の事件、それから…

 

「ごめんなさい、お待たせ」

 

 俺たち男子3人が校門前で(主に俺を除く2人が)軽くだべっていると、自転車を引いて九條さんがこちらに向かってきた。

 

 放課後の待ち合わせ、もちろん昼間に話した通りに、これから例の公園へと向かう予定だ。

 

 改めて考えると、変なメンバーだな。

 

 なんて考えていると、深沢が元気よく出発の合図を上げた。

 

「それじゃ、行こっか〜」

 

「へいへい」

 

 新海もどこか気だるそうに、適当な返事で返す。

 

「公園ってあっちの?」

 

「そうそう、十分もかからないくらいのとこ」

 

 ってことは……俺の家の方向か。道は違うけど、少し寄り道すれば簡単に寄れるようなところだ。

 

 普段は行かないから気が付かなかったな。

 

「あ、鞄。よかったらカゴに」

 

「いいの? ありがと〜」

 

「新海くんも」

 

「俺はいいよ、もうギュウギュウだし」

 

「もちろん俺も遠慮しとく」

 

 なんて会話をしながらも、てくてくと公園を目指して歩いていく。

 

 会話をしながらっても、深沢がひたすらに喋り続けて、新海が適当に気の抜けた相づちをうつ。そんなレベルの会話。

 

 基本的に四人が横並びに歩くと他の歩行者が歩けなくなるから、前二人後ろ二人で道を歩いていた。

 

 つまり、前の二人が深沢と新海コンビ、後ろはその余りだ。

 

 そんな組み合わせのせいもあってか、俺と九條さんの間での会話は一切ない。ま、俺がそもそも九條さんと話す気がない時点で会話は発生しないのだが。

 

 チラリと九條さんの方を確認してみたりすると、向こうは向こうで何か考え事をしている様子だった。

 

 ここまであからさまだと、流石の俺でも事情を知っている以上は確信が持てる。

 

 間違いなくあのアクセサリー、アーティファクトの事だろう。

 

 その事に関してなら俺も色々と聞き出したりしてみたいが……こんな所で話すわけにはいかない。

 

 今は潔く諦めて、無言のまま例の公園へと歩いた。

 

 …………

 

 ……

 

 ……

 

「おっ、あれかな〜?」

 

 本当に歩いて十分経たないくらい歩いた後、目的の公園にたどり着くや否や、深沢がある場所に指をさす。

 

「うわ…………思った以上に……」

 

 その指をさした先を見た新海が、気味悪そうな声を漏らした。それもそのはず。その先には……

 

「マジだったんだな」

 

 ありえないほどリアルな石像が、ベンチに座っていた。

 

 女学生の石像。そのあまりにもの完成度の高さに、俺も思わず言葉が漏れてしまったほどだ。

 

 まさかこんなにも噂通りの完成度とは……

 

 若干引きながらも、マジマジとその石像を観察する。確かに制服は見た事のあるデザインのものだし、手に取っているスマホも形は本物なんじゃないか? と疑うほどの出来だ。

 

 しかし気になる事が……

 

「……苦しそうな顔」

 

「だなぁ……」

 

 九條さんも勘づいたのだろう。この石像……どこか……いや、明らかに苦しそうな表情をしている。

 

 新海は俺たち以外の見物人がいないことを気にしていたが……それはさして気にならなかった。

 

 何故ならそれは……不自然な程に自然だからだ。

 

 石像はベンチに腰かけ、スマホを弄っているように片手で握っている。本当に、ただ休憩をしているようにも見えるが……表情だけが苦しそうだった。

 

 違和感が走る。

 

 ……おかしい。

 

「考える人ならぬ……苦しむ人って感じだね」

 

「表情だけ……な」

 

「なんの目的でこんなところに。ラボ……じゃねぇや、アトリエ? そういうところに飾ればいいのに」

 

「……飾れない理由があるのかも」

 

 飾れない理由……ねぇ。

 

 にしても見れば見るほど不自然だ。座った時のスカートの感じとか、明らかにこの場所に置くことを目的として作られているように見える。

 

「師匠が俺を認めてくれないから、世間に認めてもらうぜ! みたいな?」

 

 ……だとしても、わざわざこんなところに置く理由がないだろう。仮に予想通りに何らかの能力で作ったのならば……そんな理由ならその師匠の前で見せればいいだけの話し……ってこんな事をバカ真面目に考えても仕方ないな。

 

「世間を騒がせるのが目的だとしても……途方もない労力だな」

 

「だよねぇ。どうやって運んだんだろ。自分でここまで来たのかな」

 

 ……まさか……………………な。

 

「まぁ、今にも動き出しそうではあるけれど」

 

 ……考えたくはない線だ。

 

「それじゃあ! せっかくだからセクハラの限りを……って、あれ?」

 

「どした?」

 

「ここ、変じゃない?」

 

 そう言った深沢の指さした場所は、石像の右手の薬指にあたる場所。その場所をよく見てみると……

 

 色が違う。

 

「あっ……、爪の部分」

 

「色が違う……というか、そもそも石ですらない……?」

 

 その箇所が気になって、九條さんと二人でその爪の部分を覗き込むように見る。

 

「……生爪?」

 

 俺も同じ意見だった。後ろで新海が、「怖いこと言うなよ」と否定していたが……明らかに石じゃない。まるで、本物の爪でも貼り付けたような……

 

「確かにそれっぽい」

 

 と口にした深沢がその爪をちょんっと触った瞬間、その張り付いていたモノはぽとりとその場に落下し、中から桃色のような何かが見えるようになった。

 

「ぇ?」

「ぁ」

「っ」

 

 そう、『落下』した。その石像に付いていた爪が。

 

「やべぇ」

 

 数秒の沈黙ののち、深沢がぼそっと呟く。

 

「どうしよどうしよどうしよっ! やばいかな? やばいよねっ? 怒られる? 捕まる? ボク捕まっちゃう!?」

 

「知らねぇよ。あ〜あ、やっちまった」

 

 石像を壊してしまったことに慌てふためく深沢と、それに呆れる新海の会話が聞こえてくるが……そんな事よりも、俺は石像から『流れてくるモノ』が気になってしょうがなかった。

 

 流石に……これは動揺してしまう。

 

 だってこれは…………

 

「……待って」

 

 俺と同じように石像をガン見していた九條も、この『異常事態』に気がついたようだった。

 

「石像が出血してるぞ……!」

 

 じわじわと滲むように出てきたその赤い液体は、留まることを知らずにボタボタと真下にどんどん落下していく。

 

 それを見た二人はその異常な現象に、少しの間沈黙した後……

 

「気のせいじゃない! ほんとに血が出てる……!! えっ、どうしてっ!? なんでっ!?」

 

 その沈黙を最初に破ったのは深沢だった。

 

「石像が出血するなんて……」

 

「おいおい、待てよ、落ち着けよ。インクだろ?」

 

 そんな新海の焦った言葉を聞いたあと、俺は真偽を確かめるためにその赤い液体に指を付ける。

 

 そして自分の鼻に近づけて匂いを嗅いでみると……強烈な鉄の匂いが。

 

 試しにペロッと舐めてみると……

 

「間違いねぇ……! 血だ……!」

 

「な、舐めるなんて度胸あるね……竹内」

 

「お、落ち着けよ! そんな訳ねぇ……だろ!」

 

 と、俺たちをなだめながら新海は石像の足元に落ちた爪を拾い上げる。その瞬間に絶句するように新海は無言になった。

 

 それが、もう答えになっているだろう。

 

 間違いない。この石像は『生きていた』。この人は殺されたんだ。

 

 これは────

 

「「……アーティファクト」」

 

 俺と九條さんの声が重なる。それもそのはずだろう。今、恐らく俺たちだけが知ってしまっている可能性。

 

 これは人を模して作ったものでもない。もちろん芸術家の作品でもない。

 

 これは……『人で作ったもの』だ。間違いなく『石化能力』だろう。

 

「…………フフッ」

 

 思わず笑みがこぼれてしまう。

 

 何もかもが予想通りすぎて……、もちろん石像が人だとは思いもしなかったが、まさか本当にアーティファクトで実験をする奴がいるなんてな。しかも、人を殺してまで。

 

 ……最高に面白ぇ。

 

「……なに?」

 

「う、ううん、ごめんなさい」

 

 新海が九條さんにあの言葉の意味を聞き返していたが、九條さんは首を振り謝るだけで、答えようとはしなかった。

 

「なんだよ……これ……! イタズラにしちゃあ悪質すぎる。警察に俺が連絡するから、二人は九條をナインボールまで送ってってくれ」

 

「え? ナインボールって、九條さんのバイト先の?」

 

「確か、今日は九條はバイトって昼に言ってただろ? だから送ってやれって」

 

「りょうかいっす!」

 

 そんな男の会話を聞きながら、申し訳なさそうな顔をする九條を説得して、そそくさと深沢はナインボールの方へと歩いていく。

 

 ……あいつ迷いがなかったな。

 

 明らかな足取りの軽さを見せる深沢の背を見ながら、そんなことを思う。

 

「ほら、竹内も」

 

「あぁ。悪い、あと頼むわ」

 

 新海に面倒なことを押し付けて、俺もその場を後にした……

 

 …………

 

 ……

 

 ……

 

「ゴメン、ボクちょっとトイレ。ずっと我慢してたんだっ」

 

 ナインボールにたどり着いた直後に、深沢は駆け足で急ぐようにして、店内へと走っていった。

 

 ……余程我慢してたんだろうか。

 

「……それじゃあ俺は帰るから」

 

「えっ」

 

 その流れで俺も適当に断りを入れて家に戻ろうとすると……九條さんに「待って」と声をかけられて止められた。

 

「なに?」

 

「あ、あの……ちょ、ちょっと待ってて」

 

 何やら慌てた様子で九條さんは紙とペンを取り出し、何かを走らせるように文字を書いていた。

 

 そして少し時間が経過したあと……

 

「これ……、私のRINGのID。後で連絡してほしい、話したいことがあるから」

 

 そう言って手渡されたのは、九條さんのIDが書かれた一枚の紙切れ。

 

 十中八九、あの件だろう。ここは……受け取っておいて損は無いな。必要最低限だけ連絡をとって、有益になりそうな情報を引き出そう。

 

「……わかった。適当な時間に連絡する」

 

「うん、ありがとう。それじゃあ……またね」

 

 片手を軽く振って、九條さんは喫茶店の中に入っていく。俺はその後ろ姿を見届けた後に、改めて渡された紙に視線を落とした。

 

 

「……面白いことになりやがったな。ほんっと……このアーティファクトが現れてから、退屈しないな」

 

9人目のユーザー(主人公)の友人は?

  • みゃーこ先輩 (九條 都)
  • 皆の妹、天ちゃん (新海 天)
  • デスカレー先輩 (香坂 春風)
  • パフェクイーン (結城 希亜)
  • にぃやん (新海 翔)
  • 司令官 (高峰 蓮夜)
  • 勿論、僕だよね? (深沢 与一)
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