9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「初…………恋……?」
希亜に好意を寄せられていること自体は知っていた。昨日の夜から今日の朝にかけてのあの戦いでその気持ちを伝えられたから。
でも……この
「気づかなかったでしょう? あの時、あの瞬間から私は貴方を意識していた」
「…………はぁっ!?」
「ふふんっ」
え、いや、ふふんっじゃなくて! 何それ!? なんでそんなに自慢げなんだ!?
「んな事言ったってお前、あの時に初めて出会ったんだぞ!? 相手の魅力っつーか好意を持つ様なところなんて……」
「最初は貴方が守ってくれた。まだ彼女が敵であった頃、不意打ちを仕掛けてきた際に私の肩を寄せて抱きしめるようにそっと」
……そんな事あったような、無かったような……あの時は色々と俺もおかしかった時だったし、必死だったからな……正直あんまり覚えていない。
「それからは今度は私が助けるように共闘、守り守られ横に並んで、背中を預けて。…………名前を呼んで」
「でも、あの時は同士だったからって希亜が言ってたんじゃないか!」
「それは……そうだったけど、咄嗟に思いついた言い訳。本当は命を懸けて戦う貴方を見て怯えていた」
怯えるって……見てたのか? もしかして怪しんでたまたまあの場にあのタイミングでやってきたんじゃなくて、ずっと着いてきてたってことか!?
「聖遺物の異能力を使った戦い。命を懸けた殺し合い。怖かった、逃げ出したかった。けれど貴方はどんな悪にも絶望にも屈さず、正義の眼を宿した強い心で戦っていた。そんな姿に好意を抱いたの」
「貴方の初めて放った技、
ニコッと今までに見た事のない
希亜はいつも何かを隠していて、仮面や鎧に身を包んでいるかのように自分という存在を露わにしない。だからこそ、彼女の本当の笑顔は知らなかった。
「それでも貴方は恋は愚か、私のことを友人とすら思っていなかったでしょう?」
「あっ……それっは…………」
「それ、すっごく傷ついたから」
「…………悪い」
「もう変わってくれたから気にしなくていい、過去を知ってしまった以上は貴方の気持ちはわからなくもないから」
自分でも思うほどに、あの頃の俺は本当に酷かったからな。知らない間に色んな人をもっと傷つけてしまっていたかもしれない。
だからこそ、やっぱりそんな俺にも優しく接してくれたみんなが大切だと思える。嫌な思いをしてしまった分、これからは良い思いをして欲しいけれど……
この答えは難しい。
「でも許してはいないわ」
「……え、たった今気にしなくていいって」
「気にしなくてはいいけれど、許してはない」
「……どうやったら許してくれます?」
「そうね……」
若干意地悪な顔してるんですけど……これってもしかしてたかられます? ナインボールのパフェ100個とか言い出したりしないよね? 猫カフェ100回分奢るとか、無理難題言い出したりしないっすよね?
なんて考えていると、更に悪いことを思いついたのか今度は可愛くない明らかな意地悪顔でニヤッと笑うと、怪しい雰囲気を漂わせたまま希亜は口を開いた。
「天や春風、新海くんの事は好き?」
「え? あ、あぁ……そりゃ好きだけど」
3人とも大切な仲間だし。
「レナやルナたちのことは?」
「いや……好きだけど?」
コイツらも家族同然だし。
……待てよ? おい。お前の次のセリフが何となく分かったぞ。
「私と九條さんのことは?」
「お前ずっる!!」
絶対そんな感じのこと言うと思った! この流れで私は? 的な流れに持っていく気配がバリバリしたもん!
「……答えられないんだ?」
「え? 何? 本気で嫌がらせしてんの?」
「他意はない。私はただ、みんなと同じように私と九條さんのことが好きかどうかを聞いているだけ」
「黙秘権を使わせてもらいます」
「なるほど……私と
「おい待てこらっ! なんで今都のことを強調したんだ!? 別に俺は何も答えてないだろ!!」
「答えられないんでしょ? 私と
「だーかーら! 都を強調すんなっつーの! 嫌いなんかじゃない! 俺はみんなのことを嫌っちゃいない!」
ずっと希亜はいたずらっ子のような笑みを浮かべて、本当に今まで一度も見せたことの無い仮面の裏を見せてくれている。
これが本心かどうかなんてのはわからないけれど。
「信じられない。みんなのことは好きだと答えたのに私と九條さんには言ってくれない以上はその言葉は嘘ね」
「なんでだよ!? 嫌いじゃないって言ったじゃん!」
「……分かったわ、九條さんのこと
「ぐむ…………!」
なんで今
「な……仲間として! 仲間として好きだっ!」
「九條さんのことが? 酷い、貴方彼女で遊んでいるのね」
「違う違う違う違う!! お前の事だよ! 希亜のことが仲間として好きだ! LIKEだ! LIKE!」
「それじゃあ九條さんのことは? Loveの好き?」
「そうそう、そっちはLoveの────」
「私の事は?」
「好き…………お前せっこッ!?」
と、そんな子供みたいなやり取りをしばらく続けることとなる。
特に理由も意味もないじゃれあいのような会話を続けながら、ふと思っていた。
もし俺が希亜の気持ちに気がついていたのなら、今とはまた違った未来があったんじゃないか? なんてことを。
一種のパラレルワールド。そんなもの信じちゃいないが、ソフィの発言やあの時の推測でその可能性は感じていた。
今とは違う、もう一つの未来。それはどんな世界なんだろう。俺は笑っていられているだろうか? 都は無事なんだろうか?
希亜は俺の隣にいてくれるのだろうか?
考えていても仕方が無いこととはいえ、本当に存在するのであれば心から願う。
その世界では、君が心から笑顔でいてくれるように。
次回の枝は……?
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新海 天
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香坂 春風
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結城 希亜
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ゴースト