9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
現時刻は20時13分。
俺はナインボールにて、ひたすらに待ち合わせの約束をしていたアイツを待っていた。
ただひたすらに。ずっと。
ずっと……
「お待たせ。蓮太くん」
「……、もう終わったのか?」
「うん。お爺様がもうお客さんは少なくなる時間だから今日は上がっていいって」
「そっか。夜は?」
「今から食べるの。蓮太くんもそうでしょ?」
「あぁ……まぁな」
気持ちが落ち着かない。アレっきり姿を見せないあの女の人が来てくれないことがどうしても頭から離れなくて……
都もそんな俺の心情を察してくれているのだろう。できるだけ暗くならないように、笑顔を絶やさずに声をかけ続けてくれていた。
……男の俺がこんななよなよしてたらダメだよな。
「どうせだから一緒に食べようか。都はここで食べるのか?」
「うん。お爺様に蓮太君の注文も聞いてきなさいって」
「あっ……そうなのか、それじゃあえぇっと…………」
と、俺と都以外にお客のいない店内で、気を紛らわすかのようにメニューとにらめっこをしていると……ガランと店の扉が開く音がする。
心の奥底では期待していたこともあり、過剰すぎる反応でその音の先を見てみると…………
「だーかーらー! ナインボールのナポリタンすっごく美味しいんだってば!!」
「わーかったから騒ぐな! 店の迷惑になるだろ!」
大きな声でいつも以上にベタベタとじゃれ合う兄妹が入ってきた。
「新海くんに天ちゃん。いらっしゃいませ」
「あぇ? みゃーこ先輩とエロパイじゃないっすか! 早速おふたりでデートっすか!?」
「うん、あの……エロパイはやめて? 百歩譲って言うのは許すけど、マジでここではやめて? 俺たち破局しかねないんだけど?」
夜の時間帯に、人の少ない喫茶店で、人一倍大きな声で、彼女の叔父様に聞こえるその言葉は俺のこれからを壊しかねないんです。天ちゃん。怖い。
「バカっ……!」
そこですかさずお兄ちゃんの注意が入る。
「まぁ……もうしょうがないけどさ、翔達も飯食いに来たんだろ? どうせなら一緒に食べようぜ」
「え? でも先輩達デートなんじゃないんです?」
「デートというか……その…………蓮太くんが待っててくれたの」
「ひゅ〜! にぃやんと違ってイケメーンっ!」
「天、店の中で大声出すのはやめなさい」
「あ、はい」
なんて流れで結局、突如乱入してきた2人の兄妹と共に晩飯を済ませる事となる。あの事は……極力今だけでも忘れるように気持ちを切り替えよう。
「まさかのナポリタン被り」
「仕方ないだろ! お前が勝手に店員さん呼ぶから!」
「お前みゃーこ先輩たちを見習え! 方やハンバーグに方や唐揚げだぞ!? おかずを同じものにしないようにするというテクニックを使ってるでしょーが!」
「別にナポリタン被ってもいいだろ……」
「良くねぇよ! いいか? みゃーこ先輩たちはな? 「蓮太くんの唐揚げ……食べてみたいな」「わかったよ都、ハンバーグと交換な」「うん! いいよ! はい、あ〜ん」「あ〜ん」ってのをするつもりなんだよ! あ! れ! が! 恋人のテンプレでしょーが!」
なんて一人二役で俺と都を演じながら、天ちゃんはお兄ちゃんにツッコミまくる。
……意外とモノマネが上手いな。
「それに比べてにぃやんとあたしはさぁ! 「にぃに! あたしのナポリタンとにぃにのナポリタン交換しよ!」「いいけど自分の食えば?」「うっす」ってなるだろうが!!」
「別にわざわざ食べ物交換しなくてもいいだろ! 飯ぐらいゆっくり食わせてくれよ……ったく」
「よくないのー! あたしもにぃにとイチャイチャしたい────!!」
……大変そうだな、翔。こんなにテンションが高いと合わせるのもキツイだろうに。
でも……さ。教室内で言ってた事や現状を確認するに、多分だけどコイツら付き合ってるよな? 付き合ってるって言うのかはわかんないけど、そういう事だよな?
「あ、あの……天ちゃん? 私たちは別にそんなつもりで……」
「つかさ、翔」
「ん? どうした?」
「お前天ちゃんと付き合ってるだろ」
「──ッ!?」(翔)
「──っ!?」(天)
「……?」(都)
その瞬間に戦慄走る。広い荒野を駆ける隼の様なイメージで翔と天ちゃんがビクッ! と反応を見せた。
ちなみに都はなんのことか分かっちゃいないようだ。
「ナチュラルにイチャついてるけどお前ら付き合ってるだろ」
「二度も言うなー! 別に付き合ってるとかじゃないもん! その……ちょっと仲がいいだけだもん!」
「そ、そうだぞ! 別に俺たちはそんな……!」
「別に隠さなくてもいいって、バカにするつもりもないし」
動揺を見せる2人とは打って変わって、冷静さを極めてる俺は水をチビチビと飲みながらことの真相を知るために質問を繰り返す。
「付き合ってんだろ」
「蓮太くん? 新海くんと天ちゃんは兄妹なんだよ……? いくら仲が良いとはいえそれは────」
「まぁ……うん。その……付き合ってるかどうかは微妙だけど……蓮太が九條に抱いてる気持ちと同じだと……思う」
「え? それって…………えぇっ!?」
「な? 付き合ってただろ?」
「ど! どうして分かったんですか……?」
「いやわかるだろ。前から仲良いな〜っつーか、天ちゃんは翔の事好きなんだろうなぁとは思ってたけど、一線を超えてるっつーか、距離感が変わったっつーか」
なんで気がついたんだろ? 教室のあの翔のセリフもそうだけど、なんか天ちゃんの絡みが積極的になってたんだよな。
「あ、あの……その…………」
途端に様々な気持ちが湧き上がってきたのか、しょんぼりとする天ちゃん。まぁ、この2人の関係を深く考えれば考えるほど、
「……別にいいんじゃね?」
「蓮太……」
「兄妹だろうが親戚だろうが、他人だろうが親だろうが、その人が好きっていう気持ちが本物なんならアリなんじゃねぇの?」
「先輩……」
「そら世間的には認められない一線かもしれないけど、翔はそれでも人生の相方に天ちゃんを選んだんだろ? どんなことがあっても守り抜く気持ちがあるんなら、別にいいんじゃね? 俺はそう思うけどね」
ガリガリとコップの氷を噛み砕きながら、そんなことを思う。
「うーん……。きっと大変なことがいっぱいあると思うけど…………2人が決めたことなら私も応援するよ」
都ならそう言ってくれると思ったぜ。
「つーこったぁ、だから別に俺たちの前じゃ隠さなくてもいいぞ? 誰にも言いふらす気もないしさ。な? 都」
「うん! 私も秘密にするよ!」
「……お前ら……!」
「先輩達……!」
この辺はやっぱり兄妹なんだなぁ……って思う。発している言葉は違えど表情やその言葉の意味は全く同じだ。
そして翔と天ちゃんはお互いの顔を見合わせると、翔は俺の手を、天ちゃんは都の手を握り、決死の思いでとあることをお願いしてきた。
「頼むっ! デートの作法を教えてくれ……! 蓮太!」
「お願いします! あたしにデートを教えて下さい! みゃーこ先輩!」
「……は?」
「……え?」
次回の枝は……?
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新海 天
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香坂 春風
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結城 希亜
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ゴースト