9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「いや……デートって言ったってよ……」
なんでいきなりそんな話になったのかが全然わからないが、2人の兄妹は藁にもすがる様な思いで俺たちに頼み込んでくる。
「カップルとしての経験値の差で俺たちは完全に負けた……! 実はかくかくしかじか…………で2人の時の距離感というか、そういう時にどうしたらいいか……」
……かくかくしかじかって何? 全然わかんないんだけど。なんで漫画みたいにこれで理解できると思ってんの?
「んな事言われても……そもそも俺たちだって付き合い初めてまだ一日目だ。経験値の差も何も……」
「でもみゃーこ先輩は初々しい感じじゃないじゃないですか! なんていうの? 大人の雰囲気? なんかもう色々と経験してるような感じ!」
「経験って……!?」
「え? なんでみゃーこ先輩の顔が赤くなるの? え!? もしかして……もうセッ────」
とめっちゃくちゃ危ないセリフを言いかけたその時に、俺たちが頼んだ料理が運ばれてくる。それが幸いブレーキとなって、超危険な言葉は偶然口から出ることなくことを終えた。
(ここでInnocence! が流れる予定)
「お前のツレ危なすぎだろ……公共の場で何を言おうとしてたんだよ……」
「いやもう……本当にごめん。頭の悪さは折り紙付きなんだ」
「お前も大変だなぁ、お兄ちゃん」
いただきますと手を合わせて(俺は片手)みんなはそれぞれ料理を食べる。
「うんまっ! にぃやん!
「こら、口の中の物を飲み込んでから話しなさい」
……俺もナポリタンにすれば良かったかな。え? 何故かって? そりゃあもちろんとっても美味しそうなのと……
「…………箸がムズい」
普段使わない左手での食事がものすごく大変だったから。ナポリタンだったらフォークだし、クルクルするだけだからまだマシだったと思う。
さっきから皿の上に何度も何度も野菜や唐揚げを落とし、食べるのが全然進まない。
「…………。はい、蓮太くん。お口を開けて」
新海兄妹が合流した事で俺と隣同士で座っていた都は、わざわざ自分が食べる作業を中止してまで俺に介護してくれる。
「え……あ、いや……いいよ別に、レナにでも────」
いや……既にもう唐揚げを箸で掴んで持ち上げてくれてるんだから、ここで断る方が悪い……よな。
でも……あの兄妹馬鹿みたいにガン見してくるんですけど!? 本当にこんなことになるだなんてなんにも思ってなかったっつーか、考えても無かったっつーか!
チラッと都の顔を覗き見てみると、彼女は彼女で顔を赤くしており、俺が差し出した唐揚げを食べるのを一生懸命に待っていた。
ここで逃げるわけには……!
「…………ぁむ」
「いや──! たまらねっすわぁ──!! 初々しい先輩2人のイチャイチャシーン! 見てるこっちがキュンキュンするー!!」
「うっせうっせ! こうなりゃ意地でも左手で食ってやる!!」
「あっ、それ私のお箸…………」
ガツガツガツガツ…………ムシャムシャムシャムシャ…………
別に箸だからって持たなくてもいいもんね! こうして少しギブスを緩めて指だけでも使えるようになれば…………皿は持てるし!
「ほら食った!」
「食べたのはすごいけど……みゃーこ先輩から箸ぶんどったせいで先輩食べられてないよ?」
(under the moon)(曲名)流れたらいいなぁ〜。
「いやー食った食った〜」
「品の欠片もないな」
「翔のせいでしょ、教えはどうなってんだ教えは!」
「ふふっ、でも幸せそうな顔してるよ」
とまぁ、なんだかんだありつつも結局みんなで晩飯を済ませ、途中までの帰路が同じということもあって4人ですっかり暗くなっている外を歩いて帰っていた。
とは言っても大都市であることには変わりないため、比較的に夜とは言えども明るい道だ。
「…………」
結局、あの人は来てくれなかった。時刻はもう21時を過ぎている。これだけ待っても来てくれなかった。この事実が胸をじわじわと締め付ける。
あの2人はどうなったんだろう。船の爆発に巻き込まれて死んでしまったりしていないだろうか。
法に裁かれずに死んで逃げるだなんて……許したくない。何よりも、死んだ方がいい人間なんて1人も居ない。罪を償い、心を入れ替えれば誰だって…………
「蓮太、ちょっとコンビニ行こうぜ」
「え?」
「いいから」
「あ、おい……! そんな引っ張んなって……!」
《視点切り替え》
「行っちゃった……」
一瞬だけ暗い表情をした蓮太くんを励ます前に、新海くんが近くのコンビニへと連れて行ってしまった。ほんの少し強引だったけど、きっと助けてくれたんだと思う。
彼は優しいから。
「結局、一度も来なかったねあの人」
「うん……」
「でも……見て、みゃーこ先輩。このニュース近衛グループについて記述してる」
天ちゃんが持っているスマホに映し出されているネットニュース記事を見てみると、確かにあの人の会社についての事が色々と書かれていた。
「そんでここに…………ほら、Yさんが責任者として……みたいなこと書いてあるから、あの人はきっと生きてると思うよ」
「あの人が生きてるのなら……きっと待ち合わせする予定だった人も生きてるんじゃないかな。あんなことがあったし……合わせる顔が無いだけで、きっと生きてる」
「本当だ……知らなかった……」
「これを伝えにあたしとにぃにはナインボールに来たんだよ? きっと伝えないと、意地になってずっと待ち続けるんじゃないか? って心配して」
「……かも……ね。ありがとう天ちゃん。教えてくれて」
確かに、それはあったのかも。絶対に来てくれるって信じて、私たちなら待ち続けていたかも……しれない。
「ううん、お礼なら結城先輩に言ってよ。いち早くこの情報をあたしに教えてくれたのは結城先輩だったんだよ? だからきっと……ずっと色々と調べてくれているんじゃないかな。あの人」
「結城さん……が? どうして?」
「どうしてって…………ああそっか、あの時みゃーこ先輩いなかったのか」
「……?」
「なんにもないでーす! あたしと結城先輩のひみつ〜!」
「えっ!? そんな……ずるいよ天ちゃん」
「ずるくないですー! というわけでーこのニュースも消してっと……」
気になる何かをひた隠しにする天ちゃんは、伝えることを伝え終わったから不要になった検索ウィンドウを消していると…………
「────っ!?」
「はぅっ!?」
突如として画面からでてきたものすごく……物凄い(意味深)な何かの漫画。
「こ、これって…………」
大人の女性と男性が裸の状態で色々と激しいことをしている漫画だった。つまり……それは…………
「ちゃ! ちゃいますちゃいます! 本当……これっ、これは参考書! 人生の参考書のつもりで買っただけで別に他意はないんです!!!」
「参考書…………」
「ほんとですってば! 本当に変な意味は無くて……!」
「わっわたっ……しも……一緒にお勉強してもいい……かな? その……
次回の枝は……?
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新海 天
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香坂 春風
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結城 希亜
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ゴースト