9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「にしても、エロパイって意外と子供っぽいというか……なんて言うんだろ、負けず嫌い? なんすね」
「なんで?」
現時刻は夕方。一日中遊びまくった俺たちは、割とヘトヘトの状態で帰宅している途中だった。そんな時に天ちゃんから変な事を言われる。
「あたしと勝負する時とか、もちろんみゃーこ先輩とかにぃにとの時もだけど、いっぱいはしゃぐし元気なんだなーって」
「んだよその語彙力の無さは……まぁでも、そうかな? 俺にゃあわかんねぇや」
「何なんだろ……あたし、初めて竹内先輩って人を知れた気がする」
「ふーん」
思い返してみれば、確かに少しはっちゃけ過ぎた所はあるかも。ココ最近の数年間はずっと1人だったし、遊ぶ相手もいなかったし。
こうして誰かと一緒に休みの一日を過ごすって事そのものが随分と久しぶりだから……その反動なのかも。
「ってそういや悪かったな、翔。アイツら追っ払うのほぼ任せちまってさ」
「うん? あぁいいよ別に、むしろあのまま蓮太に任せてたら喧嘩になりそうだったし」
「そりゃムカつくだろ……いきなり都に腕回したりし始めたら、ぶっ飛ばしてやろうかと思ったわ」
あの時のナンパ2人組、片方の男は割と普通っぽかったが、必要に絡んできた男の方はまるっきり下心丸出しで都と天ちゃんに迫ってきていた為、その手が触れる前に足で弾き飛ばしてやった。
「エロパイ強かったよね〜、こう……足をあの人の顔面ギリギリにビタッ! って止めてさ! にぃやんとは違うわ〜」
「うっせ」
「何よりみゃーこ先輩がエロパイの後ろでギュッと腕を掴んでたのがもう……たまりませんでした」
「だって……怖くて……天ちゃんは怖くなかったの?」
「ぶっちゃけエロパイが頼りになりすぎて虫けらでしたね」
「おい」
「だってーにぃやん言葉で厄介払いしただけじゃん! ね? エロパイ!」
「ん? 悪ぃ聞いてなかった」
「聞けよ」
《視点切り替え》
「ふぅ……」
突如行方不明となった近衛 悠、私一人がいくら探したところで限界はしれている。ここまで手を尽くしてダメなのなら……個人の力ではどうしようも無いという事ね。
あの時に戦うことになった爆発能力を持つ聖遺物の所持者もあれっきり姿を見せない。生きてはいると思うのだけれど。
あの2人も気になるところだけれど、もっと気になるのは…………
「春風…………」
春風がいないこと。彼との決別の日から、1度たりとも春風を見かけていない。白泉学園にも連休前に何度か顔を出したけれど、どうやらタイミング悪く休んでいたようだった。
私は春風の家を知らない。だからこそ彼女が居そうなところを探して回っているけれど…………
何が悪い胸騒ぎがする。とっても嫌な……苦しい気持ち。
「……」
スマホを取り出してもう何件目か分からないRINGでのメッセージを送る。そう、何度も送っているにも関わらず一向に返事が来ない。
既読のマークすら……
まるで私の周りからみんなが離れていくみたい。春風も……彼も。
そんな時だった。道で立ちつくしている私に声をかけてくれた人が現れたのは。
「ん……? 希亜じゃないか、こんな所で何やってんだ?」
「……少し……ね」
姿を見なくてもわかる。この妙に落ち着く声、この世界で唯一、私のことを“希亜”と呼ぶ人物。
竹内 蓮太。
「貴方こそどうしたの? 彼女に愛想を尽かされたのかしら」
「ははっ、いつからそんな嫌味を言うようになったんだよ」
…………?
「まぁせっかく会ったんだし、ちょっと歩こうぜ。
「嘘ね、九條さんと同棲中でしょうに」
「そういう意味じゃねぇっつーの。アイツがバイトの日は必然的に俺は一人になるだろ」
…………何か違和感が……あるよう……な?
「まぁいいわ。それじゃあ少し歩きましょうか」
「はいよ」
それからは特に中身のない会話を転がしていく。2人きりになるのは久しぶりとか、猫様のこととか。
けれど何か妙、気の所為なのかもしれないけれどほんの少しの不思議な違和感をずっと感じている。
それが何なのかはわからない。
そして気がつけば人通りの少ない道に2人きりで歩いている。まるで誰からもみられないこの場所に誘導でもされているかのように。
…………やっぱり、何かが変。
「この辺でいいか」
夕暮れに照らされ、心地の良い風が透き通る道。街からも駅からも少し離れたこの場所で、彼はその歩みを止めた。
「わざわざこんな所へ連れ出してなんの用なの」
「怒んなよ……いい景色準備してやれなかったのは謝るからさ。これでも結構探したんだぜ?」
「怒ってはいない。これから貴方が何をするかで怒ることになるかもしれないけれど」
「別に何もしねぇよ……って…………希亜、ちょっとじっとしてて、肩に埃が着いてる」
案外普通通りに近い反応で彼は私に近づいてきて、本当に私の肩辺りに手を差し伸べる。そしてすっかりその言葉を信じてしまっていた私は、次の瞬間に頭の中が真っ白になった。
「希亜…………」
「え……?」
さし伸ばされたその腕は私の肩に触れること無く、そっと優しく背後に回されていきゆっくりと彼に抱きしめられる。
意味が分からなかった。けれど考えることも出来なかった。それほどまでにその行為は衝撃的で、押し殺していた心が揺れ動ごく。
「ほんの少しだけ……少しだけでいいからこうさせてくれ…………」
甘く囁く彼の声。ダメなのに、こんなことは絶対にしてはならない事なのに、脳が蕩けるように考えることを放棄し始める。
「貴方……な、なに……を……」
「お願いだから、希亜を抱きしめさせてくれ」
「え……? え………………?」
「希亜……」
わからない。何も、わからない。
ただ。
その声を。
聞いただけで。
私は。
「これで、2人目」
こんにちは主です。次回の投稿にて、現在行っているアンケートを終了させて頂こうと思いますので、事前に告知致します。
尚、枝の選択が終了し次第、都√最後の選択肢を開始致します。この√でのEND分岐は無いため、その点は安心して下さい。
では。
記憶のインストール先
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蓮太
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翔