9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「ねぇ、蓮太くん」
あのダブルデートの日から大体1週間ほど経過した5月の15日。何故か右腕の怪我がほぼ治っているにも関わらずに未だに同棲生活を続ける俺と都は、昼食に都が作ってくれたハンバーグを食べながら休日を過ごしていた。
「ん? どうした?」
「最近ね、おかしな噂を聞くの。蓮太くんを街でよく見かけるって噂なんだけど……」
「ん? 別に都と大体一緒にいるし、2人で街に出かけることは珍しくもなんともないだろ?」
「そうなんだけど……みんなからお話を聞いたらおかしな点が沢山あるの」
「おかしな点って?」
今日も柔らかくて美味いハンバーグだ。……もぐもぐ。
「この間の水曜日、私たちでショッピングモールにお買い物に行ったでしょ? でも、同じ日に公園で蓮太くんのことを見かけたって言ってた人がいてね」
「あの日は……別に公園なんて寄らなかったよな?」
「うん。偶然蓮太くんに似てる人がいて、人違いなのかな? なんて思ったりもしていたんだけど……他にも私と蓮太くんが一緒にいる日に、別の場所で蓮太くんを見たって子が沢山いて……もしかしたら、アーティファクトの能力じゃないかって思って」
「アーティファクトねぇ……」
仮に能力を使って俺の同じ見た目になったとして、何か得があるのか? それに特に悪さをしている訳じゃなくてその姿で過ごしてるってだけだよな。
なにかそれって意味あるのか?
「それに気になるのが……最近香坂先輩と結城さんを見かけなくない?」
「確か……に」
そう言えば希亜と最後に話したのは5月の1日の夕方か。あれ以来は見かけてもいないし電話もRINGでのやり取りもしていない。香坂さんに至ってはその前の戦闘終了直後だ。学園でも見てないな。
「あれからみんなで集まることなんてあまりなかったからな。そろそろまたみんなで集まりたいよなぁ〜」
「怪我もあってなかなか時間が作れなかったものね」
「だな、とりあえずグループにメッセージだけでも…………って」
昼食をパクパクと食べていると、俺のスマホがバイブレーションをしながら今日を鳴らす。一度手を止めてその電話に出て耳を当てると…………一際大きな声が大音量で響いてきた。
『エロパイっ最低ッ!!!!』
「うるっせ……」
思わずそんな声が漏れてしまうほどに大きな声で叫ぶ天ちゃんからの電話だった。なんでこんなに怒ってるんだ?
「なになに……どうしたんだよいきなり……」
『あたし見ましたよ! エロパイがたった今街の外れのラブホテルに入っていくところを!! しかもっ!! 知らない女の人とッ!!』
「はぁ?」
あまりにも素っ頓狂でアホみたいなことを言い出す天ちゃんはマジのリアクションでブチギレている。
『とぼけるなー! みゃーこ先輩というものがありながら……! 本当に軽蔑した! もう全部みゃーこ先輩に言いつけてやるッ!!』
「あのなぁ……俺は今都と一緒に飯食ってんだぞ? なんで知らない人とそんな所に行かなきゃならんのだ」
『うーわ! しらばっくれるんだ! いいもんね! あたし写真撮ってるから証拠はあるんだぞ!!』
「だから、俺は……」
この瞬間にピンと来た。さっきまでの都との会話のこと。俺の偽物がいる可能性。
見間違いではなく、なりすましがいるかもしれない危険性。
「…………天ちゃん。今すぐそこから離れろッ!!」
『やだよー! 浮気なんてあたしは絶対に…………あっちょっとにぃやん…………』
『もしもし!? 蓮太か!? お前今どこにいるんだ!?』
「その声翔か、俺は今、都と俺の家に────」
『だろうな、お前が九條を裏切るなんて思わなかった。だったら厄介なことになってるぞ!』
「厄介って……まさかお前まで俺を見つけたなんて言わないよな」
『……お前を
……どうやら翔も俺が誰かと一緒にいる所を目撃したらしい。こりゃあ本格的にどうにかしなきゃいけないみたいだな。
『とにかく俺はもう1人のあいつを止めて──』
「待て、翔。とりあえず今はそいつは放置でいい。とにかく直ぐに俺の家に来てくれるか?」
『なんで!? アイツを止めないとお前の知らないところで変な悪さをされるぞ!? 人でも殺してみろ! お前は濡れ衣着せられたりなんか────』
「今そいつを抑えてどうするつもりだよ。相手が複数のアーティファクトを所有していたら? 攻撃的な力を持っていたら? 天ちゃんと2人なら尚更だ。こっちとしてもまだ伝えておきたいことがある。とにかく都と俺は
『……わかった。待ってろよ』
ブツンと電話を終了し、あらかたの会話を聞いていた都が心から不安そうな表情で俺を見る。
「やっぱり……蓮太くんの偽物が……?」
「みたいだ。アーティファクトなのかどうかは知らないが、俺の知らないところで色んな女の子を誑かしてるらしい」
「そんな……でもそれじゃあどうしたら……?」
「翔と天ちゃんがここにやって来てるから、まずはそこから話し合おう。それと……偽物じゃないって証拠も必要だ。今もこれからも」
そうして俺は黒いペンと怪我していた時に使っていた包帯の余りを取り出して、懐かしいあの漫画の方法を真似ることにした。
「都、腕を出してくれ。これから本物の俺たちを見極めるための保険を作る」
「腕……?」
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蓮太
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翔