9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
2人でモックに行ってからしばらく経過した夕方。俺と天ちゃんは本当に一日中暇を潰すかのように遊んでいた。
ウィンドウショッピングをしたり、ゲーセンで遊んだり、適当にふらつくように移動しながら自由気ままに歩き回る。
何度か俺のスマホが着信をキャッチして震えていたが……その全てに出なかった。その全てが成瀬センセからの電話だっからだ。担任であるあの人には申し訳ないとは思うが、天ちゃんの方には1件も連絡が来ていない状況から、その全てに出る訳にはいかなかった。
そして帰宅中の人達が多くで歩く時間帯の公園で、俺たちはとある人物と出会っていたんだ。
何だか不穏な空気すらも感じるほどに妙な気配をかもちだす人物に。
「ダメだよー竹内、学校サボってデートなんてしちゃったら〜」
「…………あぁ」
人通りの多い公園で、偶然居合わせたその人物はあまりにも自然に輪の中に加わる。
「先生めっちゃ怒ってたよ〜こりゃ明日は大変だね」
「それで、どうしたんだ? 探してこいとでも頼まれたか?」
「んなわけないでしょ。知り合いと会うから近道しただけさ。そしたら竹内が女の子と遊んでるんだもん! もう待ち合わせとかどうでもいいよ!」
「モテる男は辛いぜ」
「エロ魔人がなぁに言ってんだか……」
そんなボソッと入る天ちゃんのツッコミをサラリと受け流し、深沢との会話を続ける。
「しかもその子翔の妹さんでしょ!? 竹内だけ紹介してもらったの!? ずるい!」
「……っ!」
「紹介してもらったつっーか偶然知り合うきっかけがあったというか……まぁ変わんねぇか」
不意に何やらスマホを取り出して驚いている天ちゃんを横目に、とりあえず深沢の相手をする……が……
何やら天ちゃんは高速で指を動かしてスマホをタップやフリックしているところから察するに、物凄い数の連絡がきていたのだろう。もしかすると……あれかな? マナーモードになってたりしたのかな?
変な予想もしてたけど……外れたみたいでよかった。深沢も普通に天ちゃんに気がついているし。
「ところでさ、さっきからずっと気になってたんだけど、竹内の背中に引っ付いてる人形って何なの?」
「……は?」
予想にもしていなかった深沢の質問に素っ頓狂な声を出して返事をしてしまいつつも、腕を後ろに回して確認する。すると確かに言われた通りに俺の背中に人形が引っ付いていた。
うさぎのような、カーバンクルのようなよく分からないセンスのない人形。これは……間違いない。
「おいおい……」
ソフィだ。青と白がメインの口の大きな人形が俺の背中を飛ぶようにしてくっついていた。
「さてはラウンドツーに行ってきたでしょ? デートにゲーセンかぁ、楽しそうだね〜」
「そう……だな。本当に楽しそうだ」
「……」
コイツ何黙って付いてきてんだよ。いつから側にいたんだ? つか近づいてきてるんなら一声くらいかけろよ。
なんて思っていると…………
「何? その不満そうな顔、アナタの顔のドアップはキツイのだけれど勘弁してもらえる?」
と、この青い人形さんは普通に喋り始めたのである。
「……えっ!? 今、人形が動かなかった!? 喋らなかった!?」
「喋ってない喋ってない!! 喋るわけがないだろ!? トイ・ス○ーリーの見すぎだって!」
馬鹿かお前は!? なんで普通に声出しちゃってんの!? 状況考えろよ!?
「で、でも腕がぴょこぴょこしてるけど!?」
「あああああれだ! 俺が片腕ぶち込んで動かしてるんだよ! ほらっ!」
そう言って大慌てで人形の口の中に手を突っ込んで何も無いよアピールをしようとするのだが…………その腕の先で何か柔らかいものに当たる。
まるでマシュマロの様なぷにぷにとした何か。触ったことのあるような無いようなよく分からないものに触れていることすらも放置して、ただひたすらにソフィのことがバレないように演技を貫き通す。
「ちょっ……! アナタ何触ってるのよッ!!」
その瞬間に腕先から伝わる痛み。
「痛ってっ!?!?」
そしてその痛みから抜け出したくて人形から思い切り手を引き抜こうとするが……口の奥側から何かが引っかかっていてなかなか腕が抜けない。よく分からないが布のようなものに引っかかってしまっているようだ。
「え? また喋────」
「腹話術だ腹話術! どうだ!? 俺上手いだろ!!」
「今度は何を引っ張ってるのよ!? やめっ……やめなさい!!」
それでも声を出し続けるソフィを何とか誤魔化しながら腕を引き抜こうと力を込めるが…………マジで全然取れない。
「ちょっ!? 破れるからやめ…………なさいっ!!!!」
バチンっと紙束を丸めたかのような物でぶっ叩かれる感覚が人形を通して俺の腕に伝わってくる。その衝撃で強く引っ張っていた腕は見事にすり抜けて、何とか引き抜くことが出来た。
「痛てて…………」
ジーッと俺を見つめてくる天ちゃんからの凍てつく眼光で心に傷を負いながらも、ヒリヒリと痛む腕を抑えて俺は俺で人形を睨んでいた。
ふっざけんなよコイツ……! つーかまずこんな目立つような場所で姿を現すなよ……!
「あーあ、飛んじゃったよ? 変なお人形…………はいっ」
強く引き抜いた拍子に飛んで行ったソフィ人形を深沢は拾い上げ、俺に手渡してくれる。
「わ、悪いな」
「思い出の人形なんでしょ、大事にしなきゃダメだよ〜?」
いつものように変に愛嬌のある笑顔を俺たちに(主に天ちゃんに)見せると、軽く手を振りながら深沢は去っていく。
「じゃね〜。ちゃんと秘密にしておくからサボりも程々にね〜!」
「あいよ……」
無駄に疲れてしまった俺は、気力を振り絞るかのように立ち上がり、人形を冷めた目で見つめながら首元から飛び出そうな文句を押し殺す。
「なんか……あれだね。ここに来て怒涛の展開だったね」
「そう思うのならコイツを預かっててくれ。もうなんか疲れた……」
「いいけど……とりあえずエロパイん家行きます? ここじゃ詳しく話せないし」
「そうだな、まずは場所移動だ……」