9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
《視点切りかえ》
「くっ……!」
まただ……また一段とこの頭痛が激しくなった……!
もう何度目か分からない程に高頻度で起こる痛み。慣れてくる頃にはさらに強くなってぶり返してくる。
「何やってんだよ……アイツ……」
こうなる原因なんてもんは一つしか考えられない。オレの創造主である
その証拠に……
「探知が出来ねぇ……」
いつもは感覚で蓮太の居場所が何となくわかるんだが、今に限っては大まかな方向しか分からない。つまりは何かしらの作用によってオレと蓮太の魂の繋がりを妨害している奴がいるってことだ。しかもそんなことはAF能力者でもないと不可能だろう。
つまり……
「死ぬんじゃねぇぞ……蓮太……」
いち早く駆けつけてやるためにも、オレはひたすら魂の繋がる方向へと走り出す。
闇に眠る街の中を。
「間違いない……ここだな」
目的の場所を見つけるのに時間はかからなかった。その理由は簡単だ。距離が縮まれば縮まるほど、繋がりが強くなればなるほど、蓮太の魂を感じることができるようになってきたからだ。
そして途中で無造作に倒れていた蓮太のバイク。これが落ちてたことで確信することも出来た。
このバカデカい建物の中に蓮太がいるんだって。
「じゃ、行くか」
心を引き締めるように覚悟を決めると、オレはその建物の周辺を探りつつ侵入口を探索する。
少なくとも相手はAF能力を扱うやつがいることは事実だ。幻体の身体とはいえ最大限の注意をしていかないと何が起こるかわからない。
“雷”のユーザーの件もあるしな。
「……ここからなら入れそうだな」
そうして見つけたのは小窓。
人1人がギリギリ通れそうな程に小さい小窓だ。蓮太に比べりゃオレは小柄だからそれなりにすんなりと侵入できる。ここからなら悟られることも無く忍び込めるだろう。
そうしてひょいひょいっと身体を捻り、無駄な音を立てることなく床に足をつける。
侵入した階層は2階。ここから無造作にアイツを探すことになる訳だが……
「って、考えても埒が明かねぇよな」
考えるよりもまずは動く。オレにはそれが似合ってる。
そう思いきると、とにかく目に入る扉を開いて次々に場所を探索していく、その途中だった。オレが見つけたのは大量の紙束が山のように積まれた不思議な部屋。
いくつものモニターが設置されており、その画面からはよく分からない映像がひとつも被ることなく映し出されている。
いや……認識できないものなんてない。よく画面を見ると改めて理解出来た。
「……コイツら、何だ?」
とぼとぼとおぼつかない足取りでこの建物の中であるだろう場所を歩く人間。オレは実際に目にしたことは無いが……それらはまるで映画の中に出てくるゾンビのようなものだった。
まぁ、でもそんなもんはどうでもいい。問題は蓮太が無事かどうか、どこにいるかだ。
「細けぇコトは嫌いなんだけどな」
致し方ないと踏ん切りをつけると、オレは目の前にある機械に手を伸ばして適当に打ち込んでみる。
キーボードがカタカタと音を鳴らし、蓮太の知識や経験を活かしてそれっぽい事を繰り返していくが……案の定どうにもならない。
無理なのはわかってたが……マグレすらも起きなかった。
「あーもうっ! めんどくせぇな!」
溜まったストレスをぶつけるように機械に蹴りを入れ、その場を去ろうとする。けれどとある映像が目に映った瞬間、オレの足はピタリと止まった。
砂嵐のように雑音を奏でながら1つのモニターに映ったその映像は…………
「天……」
あまりにも弱々しい光が当たる部屋の中、力尽きるように倒れているアイツの姿だった。
「何やってんだよアイツ……!」
荒い映像からでも伝わってくる。
苦しそうに体を曲げ、両手両足を縛られた格好の天は…………
「くっ……!」
考えることなんて後回しだった。とにかく身体が動いたんだ。こんなチンケな正義感なんて元々持ち合わせちゃいないつもりだったんだがな。
「ルート……ルート……! どこの部屋だよ! ったく!」
慣れない手つきでもう一度機械を弄る。大まかな操作は出来なくとも、もしかすると部屋の特定程度なら何とかなるかもって思ったからだ。
そして……
「あった……! 四階のオフィスルーム……!」
ここからだと階段を使えばかなり近い! 急いで行きゃあものの十分程度でたどり着くだろう。
そうと決まりゃあ早速だ!
「くぅっ!」
気合を入れるようにして、不気味な部屋から飛び出すように出ると、その瞬間に違和感を覚えた。
まるでこの瞬間を捉えたかのように。
まるでオレが飛び出すのを待ち構えていたかのように。
あまりにも良すぎるタイミングで左側から何かの衝撃が走り、オレの身体を右方向へと吹き飛ばす。
「ぐぁっ……!」
壁に激しくぶつかる身体。
あまりにもの“痛み”のせいで思考が一瞬止まってしまう。
「痛っ……!」
……痛い? オレが痛い?
その事に一瞬疑問を抱いたが、すぐさまオレの脳がそんなことを考えている暇がないと教えるように刺激する。
衝撃が走ってきた方向に顔を向けると…………
「なんだよ……お前……」
顔の無い大男が拳を握っていた。