9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「運命……ねぇ」
俺はあれから、約束の場所である神社の方へと来ていた。そしてあの時に言われた言葉が不意にぽつりと思い浮かぶ。
わかんなかった。こうなることは決まっていたのだろうか。最初から定められたモノだったのだろうか。
救うことの出来ない結末? 抗うことの出来ない未来?
今すらも決まってたのか?
なんてことを何度も考えた。考えても考えても答えの出てこない迷路、だけれどその答えを知りたくて彷徨い続ける。
その結果……溢れ出る気持ちは“申し訳なさ”だった。胸の内にはいつもごめんなさいがある。
不甲斐ない。
本殿入口横にある長椅子に座りながら、後悔の繰り返し。
何度も。
何度も。
そしてしばらくしたある時、俺は糸が切れたかのように気を失ってしまう。
その刹那……こちらに誰かが歩いてきている気がした。
《視点切りかえ》
やっと見つけた。
あたしがそう思った時、先輩はダラりと身体の力を抜くように倒れかかった。走ってもとても間に合いそうにない距離だったけど、運良く先輩は壁に寄りかかるようにして止まった。
そして……あたしは先輩に駆け寄る。疲れ切っている先輩の隣に腰を下ろして、ゆっくりと先輩の身体を倒して。
その頭があたしの膝に座るとそこで初めて安らかな寝息が聞こえてきた。
身体が緊急で休ませるほどの疲労。とてもじゃないけれど想像もできない。
「休んで下さい……先輩」
先輩が出てったあと、お兄ちゃんからあたしのアルバムを見せてもらった。何冊かあったその思い出は、どれもめいいっぱい笑ってて、どこまでも楽しそうで素敵なものだった。
思えば予兆はあの時からあったのかもしれない。あのアルバムを見ていると、ぐにゃぐにゃとした感情が胸の内で渦巻いていた。
そして最後のアルバム。
お兄ちゃんへの想いが詰まった心の本。
アレを見た時……耳鳴りが始まった。それは次第に強くなっていって……頭痛に変わる。脳が爆発しそうな程に暴れると穴抜けだらけになっていたパズルのピースが徐々に合わさっていった。
まだ完璧じゃない。まだ完全じゃないけれど……少なくとも大切なことは思い出せた。
あたしは幸せだったこと。
暖かい家族がいて、沢山の友達がいて、毎日が楽しくて。そして……大好きなお兄ちゃんがいる。
気が遠くなるほど昔から心惹かれた好きな人。
それを思い出させてくれた大切な人。
今はどっちも想う。
あの建物にいた時、夢か現実かは分からないことがあった。大きな背中で一生懸命にあたしを助けてくれたあの英雄がいたのかどうか。
でも今ならわかる。
きっと先輩だったんだ。きっと先輩が命を懸けて助けてくれたんだ。
だから、ありがとうございます。
「…………」
思えば似ていない様で似ている二人。
ぶっきらぼうで不器用で、がむしゃらな人。でも……優しくて頼りになる。
「あたし……先輩の事、好きみたいです」
聞こえない言の葉を語りかけながら、先輩の頭を撫でるように手をかざす。ほんの少し先輩は項垂れていたけど……すぐにまたすやすやと眠った。
「だから、本当はどこにも行って欲しくない。もう二度とあの場所には戻って欲しくない。でも……きっと先輩は止めても行っちゃうんでしょ」
実は、ここに来る前にゴーストさんと会った。だからこそここにいるって事を知れたんだけど……
その時に聞いたの。何か隠してたようにも見えたけど……先輩が何を考えてるかも聞いちゃった。
復讐なんて別にいい。戦わなくてもいい。そう思ってたけど、あたしのAFはとっても危険なんでしょ? 消失をさせる力……悪用なんてされちゃったら世界が混乱しちゃう。
だから戦う。
あたしのせいでごめんなさい。力になれなくてごめんなさい。
「だから止めない。その代わりに、全てが終わったら今度はちゃんと起きてる時に言わせてね」
「大好きって」
せめて、せめて今くらいは……そばに居るから。
《視点切りかえ》
本殿の隅、ちょうど物陰に隠れれるような場所。
彼女たちからは見えない陰で私は聞いてしまっていた。
あの時、私と九條さんが目を覚ますとその時には既にある程度記憶が戻っていた天がいた。新海君が頑張ったおかげなのか、順調に事は進んでいたようだった。
そして天が蓮太を探し始めた。心配なのは私たちも同じ、だから各々が探した。そして偶然見かけたゴーストと天。二人が会話をしているところ。彼女の言葉を聞いた天は大慌てで走り出した。
それがこの場所。
「…………」
心配だったから追いかけてしまったけれど、声をかけるタイミングを失ってこんな所で隠れている。
そして。
「…………っ」
彼女の気持ちを知ってしまった。
彼女も蓮太の事が好きなのだと知ってしまった。多分きっと蓮太も…………
様々な感情が膨れ上がってくる。これまでやこれからの事、今この瞬間の事。あの子の気持ち、あの人の気持ち。そして自分の気持ち。
あの場所、あの時から始まった……この気持ちが。
「…………祝福するわ」
なんとか自分の中にある一部の心を押し殺し、誰にも聞こえないように一言だけ声を絞り出した。
この時の言葉は……誰よりも自分自身を傷つけていたのを覚えてる。
私は自分の心に嘘をついて、“あの場所”へと向かった。